告訴人石田克史の検察調書(H4.09.01)

(注1)以下は、平成4年9月1日に、検察官が作成した告訴人石田克史の供
   述調書です。但し、縦書きを横書きに直しています。
   −−−は、用紙の変わり目、右端の数字は丁数です。各丁(頁)の行数、
   一行の文字数、字下げ等の体裁は原本と同じですが、誤記等はそのま
   まにしています。
(注2)着色強調文字の部分は、下記のような問題がある箇所です。
   赤字部分は、告訴人側が以前の供述を変更した箇所。
   黄字部分は、客観的事実と異なる箇所。及び、告訴人側が自らの不始
    末や不正の責任を被告人側に転嫁しようとしている関係箇所。
   緑字部分は、話の元は事実であり、二審では、検察官、裁判官がその
    部分に関する主張、認定を取り下げている箇所。
              平成10年2月23日  被告人 三宅喜一郎


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        供  述  調  書
  住 居 東京都世田谷区上北沢*丁目**番*ー***号
  職 業 会社役員      電 話   局   番
      氏  名        石  田  克  史
            昭和二三年一一月二七日生(四三歳)(注:間違い)
右の者は平成四年九月一日、東京地方検察庁において本職に対し、
任意次のとおり供述した。
一    私は、私の所有する千葉県山武郡九十九里町作田字
    山中****番*の土地に別荘を建築し、将来はそこに
    妻と居住する計画を立て、平成二年五月一六日、株式会社
    平和ホームズ(代表取締役三宅喜一郎)との間で、請負
    代金三、〇〇〇万円で建物建築工事請負契約を締結しまし
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    た。
    この契約には
          建物引渡日までに交付されていない融資金に
          ついては、平和ホームズが提携する「つなぎ
          融資」を利用して建物引渡し日までに請負代
          金全額を平和ホームズに支払う
    旨の特約が付いていました。
    「つなぎ融資」というのは、住宅金融公庫等の公的金融
    機関から低利の融資を受けるとすると工事完成後でなけれ
    ば融資が受けられないので、公的融資金が実行されるまで
    の間、一時的に他の金融機関から融資を受けて、その金で
    請負代金を支払い、後日住宅金融公庫等から融資が受けら
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    れたときに、その金で返済するというものです。
     私の場合、住宅金融公庫から一、六二〇万円、関東年金
    福祉協会から一、三〇〇万円の各融資を受ける手続をとっ
    た上、その公的融資金の合計二、九二〇万円についてつな
    ぎ融資を受けることにして、平成二年八月一七日、日本信
    販との間でつなぎローン契約を締結しました。
     日本信販からは、八月二二日付けで、利息と手数料を差
    し引いた残額の二、七八二万三、四二〇円が平和ホームズ
    の口座に振り込まれました。
二    私は、
          これでとりあえず講負代金の支払いは終わっ
          た
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          後はローンを返すだけだ
    と安心していたのですが、その後、平成二年の九月の始め
    ころ、平和ホームズの常務取締役と名乗る鎌田次朗から電
    話が架かってきて
          日本信販からのつなぎ融費を東芝総合ファイ
          ナンスに借り替えてくれませんか
          実は私共の会社の日本信販からの融資枠には
          限度があるため日本信販からのつなぎローン
          が受けられなくて困っている人がいるのです
          石田さんは土地の権利証があるから東芝総合
          ファイナンスから借りられるので日本信販の
          石田さんの分の枠を移し替えてその枠分を他
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          の人に借りさせて下さい
    等と言われたのです。
     私は、もう請負代金は支払済で、後はローンを返すだけ
    だと思っていたので、
          今更何を言うのだ
          もう請負代金の支払いは終わっているのだか
          らそんなことをする必要は全くない
    と思って、鎌田の申し出を断りました。
     しかし、鎌田はその後も一、二回同じ内容の電話を架け
    てきて、
          もう一度考え直してくれませんか
          石田さんの建物は工事が遅れているので便宜
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          を図り良い大工を使って早急に工事を進めま
          すし、借り替えをしてくれましたら利息と諸
          費用を安くしますので何とかお願いします
          とにかく一度このことで会ってくれませんか
    等と言ってきたのです。
     私は、自分の工事をお願いしている会社の常務からこん
    なに頼まれているのにすげなく断って、もし工事の手抜き
    をされでもしたら大変だと思い、一度会って話を聞くこと
    は承諾したのです。
     そうすると平成二年九月一一日、鎌田が一人で菓子折を
    持って私の家に来て、電話での話と同様に、
          先日来お願いしていますように、日本信販か
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          らのつなぎ融資を東芝総合ファイナンスに借
          り替えてくれませんか
          私共の会社の日本信販からの融資枠には限度
          があるため日本信販からのつなぎローンが受
          けられなくて困っている人がいるのです
          石田さんは土地の権利証があるから東芝総合
          ファイナンスから借りられるので日本信販の
          石田さんの分の枠を移し替えてその枠分を他
          の人に借りさせて下さい
    等と言い、更に、
          石田さんが平和ホームズに便宜を図ってくだ
          されば、平和ホームズも石田さんに便宜を図
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          ります
          もしお聞き頂けましたら、良い大工を優先的
          に回しますし、利息や諸費用も安くします
          日本信販からのつなぎ融資の年利は七・五
          パーセントになつていますが、これを七パー
          セントにします
          つなぎ利用上の特例として手数料も当社で負
          担します
    等と言って見返りの話を持ち出して来ました。
     もともと請負代金の支払いは終わっているのですから、
    借り替えの手数料を私が払ういわれなど全くないので手数
    料を負担してくれるといっても、私には何のメリットもな
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    いと思いましたが、金利を七・五パーセントから七パーセ
    ントにしてくれれば得をすると思いました。
     それに、その当時、建物工事は大工が来たり来なかった
    りで遅れており、良い大工を優先的に回して早く工事をし
    てくれるというのも魅力でした。
     逆に、下手に平和ホームズの機嫌を損ねて、工事の手抜
    きでもされたら大変だという気持ちも起こり、こうした諸
    事情からつなぎローン借り替えの話を承諾しても良いと思
    うようになつてきました。
     しかし、鎌田の言う借り替えに応じると、二重にローン
    を負担することになりはしないかということが心配だった
    ので、鎌田に対し、その旨話したところ、鎌田は、
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          東芝総合ファイナンスから実行された融資金
          は、直ちに日本信販に返済します
          東芝総合ファイナンスからの借入金は、あな
          たの口座に振り込まれますが、日本信販への
          返済は当社経由で行うことになっているので
          東芝総合ファイナンスからの借入金は当社の
          口座に振り込んでください
          その金を平和ホームズの方で日本信販から借
          りた金額と同額にして、あなたが日本信販か
          ら借りた分は直ちに返済します
    等と言いました。
     しかし、鎌田の言質だけでは心配だったので、鎌田に、
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    東芝総合ファイナンスからの融資実行金で、日本信販から
    の借入金を返済する旨の念書を書いてくれたら承諾する旨
    言つたところ、鎌田は、これを承諾し、その後、九月一六
    日ころ、私のところに九月一四日付けの
          公的資金つなぎ借入付け替えに関する覚
          書
    という書面を郵送してきたのです。
このとき本職は、押収に係る「公的資金つなぎ借入付け替えに関す
る覚書」と題する書面等を、供述人に示した上、その写しを本調書の
末尾に添付することとした。
    これがそのとき郵送されてきた覚書です。
    これには、
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          直ちに、日本信販へ返済する
    という記載はありませんでしたが、平和ホームズはちゃん
    とした会社だと思っていましたし、その会社の常務取締役
    まで勤める人が
          東芝総合ファイナンスからの融資金で直ちに
          日本信販からの借入金を返済します
    等と言ってくれていたので、私は、鎌田が言ったとおりに
    してくれるものと信じて借り替えに応じることにしたので
    す。
問 平和ホームズの鎌田らは、東芝総合ファイナンスからの融資金
  を会社の当面の運転資金に充てて、その後、他から資金繰をし
  て、日本信販の融資金返済に充てるつもりであつた旨供述して
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  いますが、それでも東芝総合ファイナンスへの借り替えの依頼
  に応じなかったということですか。
答 そうです。東芝総合ファイナンスから借りた分は、そのまま直
  ちに日本信販へ返済してくれないと、私が日本信販と東芝総合
  ファイナンスから二重に借金をすることになります。私がつな
  ぎローン借り替えの話に応じるときにこのような二重ローンに
  なることを懸念していたので、そのような事態にならないよう
  に鎌田に念書まで要求して東芝総合ファイナンスから実行され
  た融資金を直ちに日本信販に返済することを確認したのです。
  東芝総合ファイナンスからの融資金を日本信販に直ちに返済す
  ると嘘を言って、二重ローンを掛けさせ、一時的にもせよ会社
  の回転資金にするということは、会社の経営状態が著しく悪い
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  ということだと思います。そのような経営状態であれば資金繰
  が見込み通りに行かず、結局私の二重ローン状態が解消されな
  い危険が大きいことになります。いかに利息の点でやや有利に
  なろうと、良い大工を優先的に回してくれようと、そんな危険
  を冒してまでつなぎローン借り替えの話に応じる気など全くあ
  りませんでした。
問 鎌田から「東芝総合ファイナンスから借りるときに日本信販の
  ことは黙っていて欲しい」等とは言われませんでしたか。
答 鎌田が先ほど話したように九月一一日初めて私の家に来たと
  き、「東芝総合ファイナンスや日本信販との信頼関係を壊した
  くないので、借り替えることは秘密にして欲しい」等と話して
  いました。
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問 それを聞いておかしいとは思いませんでしたか。
答 私は、そんなこともあるのかと思っただけで、別に不審にも思
  いませんでした。
三    九月一八日に、鎌田と東芝総合ファイナンスの亀海とい
    う人が私の家に来たので、借り替えの手続をしました。
     私が、東芝総合ファイナンスからの融資実行金が、その
    まま、直ちに日本信販への返済に充てられるのかを鎌田に
    確かめた上、借り替えに応じていたことは先程来申し上げ
    ているとおりです。
     鎌田も、私が二重ローンにならないようにすることに気
    を使つていたことを知っており、もし、東芝総合ファイナ
    ンスからの融資実行金を、そのまま直ちに日本信販に返さ
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    ないのであれば、私が借り替えに応じなかっただろうこと
    は、十分、分かっていたはずです。
     九月二二日になって、平和ホームズの我妻という人から
    電話があり、東芝総合ファイナンスから融資金が振り込ま
    れているはずだから、すぐ平和ホームズの口座に振り込ん
    で欲しいとの電話がありました。
     東芝総合ファイナンスからは二、九二〇万円から利息と
    消費税を差し引いた二、七四二万九、二七九円が私の口座
    に振り込まれていたので、それを平和ホームズの口座に振
    り込むょうに家内に言い、家内が振込手数料を引いた二、
    七四二万八五五八円を九月二五日に平和ホームズの口座に
    振り込んだのです。
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四    平成三年一月上旬になって、日本信販と東芝総合ファィ
    ナンスの双方から工事の進捗状況や支払日の確認の電話が
    きたので、私はおかしいと思って、鎌田に電話したのです
    が、留守などと言われていくら電話しても鎌田と話せませ
    んでした。
     そこで、家内と一緒に一月一一日に平和ホームズ本社へ
    行き、鎌田と会って日本信販へ返済してくれたのか聞いて
    みたのですが、鎌田は、
          すみません
          実は日本信販へは返済していません
    等と言ったので、私は、はっきりと、騙されて二重ローン
    の状態になっていることが分かったのです。
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    私が約束が違うから金を返してくれと言っても、
          今は資金繰が大変なのでそれは無理です
          必ず返済するから心配しないで下さい
    等と言うばかりでした。
     そこで、私が念書を書くように求めたところ、鎌田は、
    承諾して「つなぎ融資に関する念書」を作成することに
    なったのですが、鎌田が書いた文案では表現が明確でない
    ところがあったので、私の家内が念書を書いて鎌田に渡し
    たのです。
     鎌田は、その念書を持って一度席をはずし、しばらくし
    て、またその念書を持って帰ってきて渡してくれました。
     そこには、「株式会社平和ホームズ代表取締役三宅喜一
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    郎」というゴム印が押してありました。
このとき本職は、供述人が示した「つなぎ融資に関する念書」と題
する書面の写しを本調書の末尾に添付することとした。
     ここには、日本信販へ返済すペき二、九二〇万円を平成
    三年一月二七日までに支払うと記載されているのですが、
    実行されず、その後も二重ローンの状態が続き、建物の工
    事は工程の三〇パーーセントしか進まない状態で放置され
    たのです。
     その後三宅社長の自宅に行ってその責任を追及しょうと
    したのですが、不在と言われ、深夜まで待っても会えませ
    んでした。
     私は、そのため、同年三月九日に、三宅社長と鎌田の両
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    名を詐欺罪で告訴したのです。
     なお、平成三年の夏ころに、日本信販との間では和解が
    成立し、私は日本信販に対する債務は、ほぼ免れたのです
    が、東芝総合ファイナンスとは未だに係争中です。
     建物は、他の業者に依頼して工事は一応完成しました
    が、その請負代金はもちろん私が新たに負担しました。
     私は、平和ホームズを、住宅建築を請負って貰うほど信
    頼していたのに、私の信頼につけ込んで、大金を騙し取っ
    た三宅社長ら関係者は許すことができません。
     私は、今回の被害で精神的にも多大のダメージを受けた
    ので、三宅社長や鎌田を厳罰に処して下さい。
                 石 田  克 史  (印)
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右の通り録取して読み聞かせたところ誤りのないことを申し立て署名押印した
    前同日
    東京地方検察庁
        検  事     森    隆  志 (印)


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(添付書類)(画像)(ご覧になるときは、下記をクリックして下さい。)

 平成2年9月14日付「公的資金つなぎ借入付け替えに関する覚書」
 平成3年1月11日付「つなぎ融資に関する念書」の写1枚

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