1.AIが「NVIDIAの最後の敵」になる、オンデマンドコード生成が変える未来(8.28 日経XTEC)
今やプログラムコードはAI(人工知能)が書いてくれるようになった。メリットは人間の負荷が減ることだけではない。AIは人間よりも短時間で大量のコードを生成できるという面もある。このことが、コードの位置づけを質的に変える可能性がある。
これまでの企業のITシステムでは、開発して完成したコードを保守しながら長期間使い続けるのが常識だった。環境の変化や不具合に対応するため、コードの部分的な改修を積み重ねていく。システムは動き続けることに意味があるので、動作に支障が出る可能性がある抜本的な改修はなるべく避けるのが一般的だった。
しかし利用者にとって重要なのは、コードそのものよりもコードが生み出す機能だ。仕様やテスト、性能条件などの情報が十分な精度で維持されていれば、それらを基にAIがコードを生成し、既存機能の大部分を再現できる可能性がある。環境や要件が変化したとき、既存コードの制約に縛られず、その都度最適な実装を選択しやすくなる。
コードを長期間保守して使い続けるのではなく、必要に応じて生成するものとしてコードを捉えるのだ。いわば「オンデマンドコード生成」である。ストックからフローへの発想の転換といってもいい。
もっとも現状では、企業のシステムをオンデマンドコード生成により刷新し続けている実例は見当たらない。まずはAIが生成するコードの品質が向上し、コード生成のための時間的・金銭的コストもより下がる必要があるだろう。生成の基となる情報の精緻化も必要だ。加えて現実のシステムには暗黙知や運用上の慣習が存在するため、それらが仕様として十分に記録されていなければ完全な再現は難しい。
AI分野で現在、ビジネス的に最も成功している企業といえば、大手GPUメーカーである米NVIDIA(エヌビディア)だろう。2026年5〜7月期の売上高は前年同期比2.1倍の962億ドル。3カ月間だけで約15兆円にもなる計算だ。
その原動力となっているのがデータセンター向けのGPUだ。その多くがAIの学習や推論に使われる。他社のAI投資がそのままエヌビディアの売上高を押し上げる構造になっている。今後も同社の売上高の増加は続くと考えられる。
なぜエヌビディアのGPUはこれほどまでに強いのか。その大きな要因の1つが「CUDA(Compute Unified Device Architecture)」だ。同社のGPUをAI処理に使うためのソフトウエア基盤である。この巨大なソフトウエア資産のおかげで、エヌビディアのGPUでは既存のソフトウエアや最適化のノウハウをAI開発に活用できる。
現在の学習と推論の市場規模はほぼ等しく、今後はAIエージェントの普及などで推論市場が大きく伸びると考えられている。この市場変化を見越して、推論に特化したAI半導体が続々登場している。
エヌビディアはAIの恩恵を大きく受けて成長した。だが今後のAIがソフトウエア資産のストック価値を低下させる方向に進化するなら、エヌビディアにはマイナスに働く。AIがいわば「最後の敵」として立ちはだかる格好だ。歴史の皮肉といえるだろう。
2.倒産航空会社は「宝の山」、Googleが業務データをAI訓練用に落札(8.28 日経XTEC)
米Google(グーグル)が、2026年5月に経営破綻した米格安航空(LCC)のSpirit Airlines(スピリット航空)が保有していた業務データを1000万ドルで落札したことが話題だ。Microsoft Teamsのメッセージ5億件や社内ソースコードなどの業務データが、AI(人工知能)モデルのトレーニングに活用される可能性が高い。
スピリット航空の業務データは匿名化処理を施すことを条件に、裁判所の監督の下に競売にかけられていた。その入札結果が2026年8月14日(米国時間)に公開された結果、グーグルが落札したという事実が米メディアによって報じられた。
倒産した企業の業務データがAIモデルの学習用に高値で売れることに気付いた破産管財人の見識には、恐れ入るばかりだ。
スピリット航空のケースでは、AI用に整備されてきた訳ではない生の業務データが、AIモデルの学習データ用として値段がついた。今日のLLM(大規模言語モデル)の性能向上は、学習データの量と質に依存している。学習データを拡充したいAIラボにとって、破産企業は「宝の山」になりそうだ。
3.アンテナ設置が困難な清水寺、ソフトバンクが挑んだ通信品質対策(8.28 日経XTEC)
昨今関心が高まっている、モバイル通信の通信品質対策。都市部を中心に通信量が増加し、通信品質の維持が大きな課題となっているためだ。携帯電話会社にとって、対策の要となる要素と課題はどこにあるのか。ソフトバンクが京都市の清水寺で進めた通信品質対策の取り組みから考えてみた。
関心が高まる背景には、2023年ごろからNTTドコモで表面化した品質低下の問題がある。もう一つが楽天モバイルの動きだ。KDDIの通信網を借りる「ローミング」でエリアを補ってきたが、その契約期限が2026年9月末に迫る。ローミングが終われば都市部を中心に品質が落ちるのではないか、との懸念が出ている。
ソフトバンクがそうした取り組みの一端として実施したのが、有名な観光地として知られる清水寺の通信品質対策である。京都は国内でも有数の観光地だけに、日本人観光客だけでなく、インバウンド(訪日外国人)需要の高まりによって外国人観光客も大幅に増えている。
それに加えて最近は、スマートフォンの性能向上もあって、観光地で撮影した写真だけでなく動画を直接送る人も増えている。主要観光地での通信品質対策は、これまで以上に重要になっている。
清水寺のような歴史的な建造物にアンテナなどを取り付けるのは景観上難しく、対策には一層の難しさを伴う。
ソフトバンクによる対策の大きなポイントは、景観に配慮しながら通信品質を確保できる場所を押さえたことにある。地権者である清水寺側と交渉を重ねた末、「清水の舞台」など観光客が集中するエリアをカバーしやすい、好条件の一角を確保することに成功したという。
もちろん通信容量を増やすには、場所だけでなく新技術の導入が有効であることも間違いない。例えば日本では5G導入初期に、多数のアンテナ素子を用いて通信容量を増やす「Massive MIMO(マッシブマイモ)」という技術に対応したアンテナの設置が少ないことが、5Gの通信性能が上がらない要因として指摘されていた。
4.AIデータセンターは100GW規模へ、「ジェンスンの数学」が示す桁違いの未来(8.28 日経XTEC)
AI(人工知能)業界で注目されている「ジェンスンの数学」をご存じだろうか。ジェンスンの数学とは、米エヌビディアのトップ、ジェンスン・ファンCEO(最高経営責任者)が決算説明会や講演などで語るGPU(画像処理半導体)にまつわる様々な予測や数値のことだ。「AIデータセンターの規模は、2030年までに(原子炉100基分相当の)100GW(ギガワット)」など、ファンCEOらの発言によるジェンスンの数学からは、信じがたい規模のAI投資が、世界経済を揺るがす可能性が見えてくる。
今回、ファンCEOが25年以降に行った決算説明会での発言や、エヌビディアが年3〜4回開催する自社イベント「GTC」での発言のほか、世界経済フォーラムなど社外会合での発言、出演したポッドキャストでの発言などを精査し、ジェンスンの数学を徹底解剖した。
まずは全体像をつかもう。ファンCEOは1年前の25年8月27日(米国時間)に開催した25年5〜7月期決算のカンファレンスコールで、AIインフラストラクチャー(AIデータセンター)への投資額が30年までの累計で「3兆〜4兆ドル(約480兆〜約640兆円)に達する」と発言している。
ジェンスンの数学は、30年までに整備されるAIデータセンターの物理的な規模も示す。ファンCEOは26年6月に台湾で開催した開発者イベント「GTC Taipei 2026」の基調講演で「20年代の終わり(=30年まで)に100GW(ギガワット)のAIファクトリー(AIデータセンター)が稼働する」と述べている。
ファンCEOは、米国のベンチャーキャピタルであるセコイア・キャピタルが26年6月10日に公開した対談動画(収録は26年5月)において、「1ラックにGPU72個が入っている。1ラックの重さは2トンで、価格は400万ドル(約6億円)。150万個の部品でラックは構成されている。世界で最も高額な機器の1つだ」と述べた。
5.「IT主権」捨てた日本企業と官公庁、丸投げでソブリンAIとは片腹痛い(8.24 日経XTEC)
「ソブリン(主権)AI(人工知能)がどうのこうのと言う前に、日本企業や官公庁はまずIT主権を取り戻すべきではないのか」。そんなことをある外資系ITベンダーの人が話していた。日本企業などがシステム開発や保守運用を、SIerだけでなく外資系企業も含めたITベンダーに丸投げしているようでは、話にならないではないかというわけだ。私も全くその通りだと思うぞ。もちろん、ソブリンAIとIT主権とでは話のレイヤーが少し異なるが、両者は密接につながっているしな。
ソブリンAIのソブリン(sovereign)とは「主権を持つ」とか「主権者の」といった意味で、ソブリンAIは国内のインフラやデータ、規制の下でAIモデルの開発・利用を進めるといった意味合いになる。大きくは国家レベルの話で、もっといえば経済安全保障の臭いがプンプンとするのが、このソブリンAIだ。IT主権も国家レベルで語られることもあるが、この人が言うIT主権とは、個々の企業や官公庁におけるシステム内製化やガバナンスに関わる話だ。ソブリンAIがマクロな課題であるのに対して、IT主権はミクロな課題というすみ分けだ。
IT主権とは、外部企業に過度に依存せず自分たちの意思で管理・利用できる状態だと定義できるから、日本の企業や官公庁はIT主権をSIerらに奪われてしまっているといってよいだろう。
それはともかく、これからの時代、企業も官公庁もIT主権を取り戻したり確立したりする努力を始めないとまずいぞ。内製化の取り組みには人材の育成・獲得を含め時間がかかるが、なんちゃってCIOには退任してもらって、何事にも自ら責任を取る覚悟のあるCIOを外部から招き入れることぐらいはできるだろう。間もなくAIエージェントがシステムを開発し、保守運用までこなすようになる。その時になってもIT主権を放棄しているようでは、世界の潮流から完全に取り残されてしまうだろう。
いかがだろうか。記事の冒頭で書いた通り、使わないどころか意識もしていなかったIT主権という概念で、改めて日本の企業や官公庁のIT部門、そしてシステムのあり方などを見てくると、様々な問題とその解決策がクリアになったと思う。要するに、責任逃れのためのIT主権の放棄こそが問題の出どころであり、IT主権を取り戻すこと、つまり責任を引き受ける覚悟と体制をIT部門が持つことが問題解決への道だということだ。IT主権の概念を教えてくれた人には感謝しておこう。
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