週間情報通信ニュースインデックスno.1536 2026/8/1


1.さらば日経ソフトウエア、伝説の名著を再読して考えたAI時代の「入門書」(7.31 日経XTEC)
 日経BPが隔月で発行しているプログラミング雑誌「日経ソフトウエア」が、2026年9月末に発売する11月号を最後に休刊する。私は同誌の編集部に2005年3月から2007年6月、2013年6月から2015年12月の2度在籍しており、合計で5年弱いたことになる。プログラミングを本格的に学ぶきっかけになった編集部でもあり、寂しさを感じている。

 ただ、同誌の休刊が意外だとは思わなかった。ここ数年でプログラミングを取り巻く環境が激変したからだ。その最大の要因は、言うまでもなく生成AI(人工知能)である。最近の日経ソフトウエアの第1特集は、約1年前からすべてAI関連になっている。実質的にはAIの雑誌になっていたといっていい。

 日経ソフトウエアは、読者にプログラミングの楽しさを伝える雑誌だったと思う。その楽しさの多くは「自分が書いたプログラムが動く」という点にあった。ところが、生成AIは人間の代わりにプログラムを書いてくれる。しかも多くの場合、初心者がゼロから書くよりも高品質なコードを生成できる。プログラムが動く体験を生成AIが与えてくれるなら、苦労してプログラミングを学ぶ必要はない。

 生成AIによって「自分でコードを書くこと」の価値が相対的に低下し、プログラミング学習の動機そのものが変化した。その結果、従来型の入門誌の役割も縮小した。日経ソフトウエアの休刊は時間の問題だったのかもしれない。

2.打倒LLMで盛り上がる「世界モデル」、画像AI研究者の逆襲に注目(7.31 日経XTEC)
物理世界を理解したり生成したりできるAI(人工知能)である「世界モデル」の開発が加速している。筆者が中でも注目しているのは、画像を扱うAIの研究を長年けん引してきた著名研究者が起業した米国のWorld Labs(ワールドラボ)とフランスのAdvanced Machine Intelligence(AMI Labs、AMIラボ)の2社だ。

 ワールドラボが開発するのは、現実世界を物理法則なども含めリアルに再現した3D空間を生成できるAIだ。一方のAMIラボが開発するのは、現実世界の物体の形状などを正しく認知し、次に何が起きるかを予測して行動計画を立案できるAIである。

 両者は目指す方向性やアーキテクチャーに違いはあるものの、現在のAIの主流であるLLM(大規模言語モデル)とは異なる次世代のAIを目指している点は共通する。筆者はこれを「画像AI研究者の逆襲」だと受け止めている。

 現在のLLMの基盤である「Transformer」は、米Google(グーグル)が提供する「Google翻訳」の開発チームらが作り出した。そこに2015年の設立当初から強化学習に力を注いでいた米OpenAI(オープンAI)が参入し、自己教師あり学習ベースのLLMと強化学習をうまく融合することで、ユーザーの求める回答を効率的に出力できるChatGPTが実現した。

3.40年以上も変革できなかった日本企業、なのにDXを無理強いして悪かったよ(7.27 日経XTEC)
実は最近、日本企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)について検討し直さなければならないと真剣に考え始めている。日本企業に欧米企業流の変革を求めるのは無理だからだ。「木村よ、変節したのか」と非難する読者が多いと思うが、そんな読者もよく分かっているはずだ。日本企業に欧米流儀の変革を求めるのは、まさに「木に登って魚を求める」ようなもの。つまり、完全にやり方を間違ったのだ。そろそろ、別の方策を本気で探すしかあるまい。

 今、私が特に問題にしているのは、IT/デジタルを活用して業務プロセスなどを変革する「守りのDX」のほうだ。新たなビジネスなどを創出する「攻めのDX」についても日本企業はかなり「馬力」が足りないが、こちらのほうはいずれ日本企業のデジタルイノベーションの問題として「極言暴論」の俎上(そじょう)に載せたいと思う。ということでまずは守りのDXのほうだ。シニアの読者ならよくご存じだと思うが、実はこれまで幾度も名称を変えて繰り返しその必要性が説かれてきた。

 一方、日本企業はこうではないよね。まず、従業員は一度勤めたら絶対にクビにはならないと安心しきっている。例えば日経BPが実施した2025年7月の調査では、「AIによって自分自身の仕事がなくなる」と思うかについては「強くそう思う」はわずか3.2%で、「そう思う」も12.1%に過ぎなかった。米国ならこんなことはあり得ないよね。そして企業側も「従業員の解雇は無理」と考え、非生産的な終身雇用、年功序列の枠組みをずっと維持し続けてきたわけだ。

 それに顧客接点をAIエージェントやフィジカルAIに変えていくことで、新たなサービスやビジネスモデルの創出につながるかもしれない。なので、これが40年以上変革できなかった日本企業が変革に乗り出すための現実解となるだろう。よし分かった。私の負けを認め、このあたりで手を打とう。ただし、老朽化した基幹システムなどを放置し、「AI社長」をつくっただけで満足していたりするようでは論外だからな。そこだけは勘違いしないように。

4.「電話と紙」で育った技術記者が顧みる、情報収集方法の変遷 (7.27 日経XTEC)
 日経NETWORKの2026年6月号で暗号の特集記事を執筆した際、RSA(Rivest-Shamir-Adleman)とDH(Diffie-Hellman)鍵共有については、原著の論文を生成AI(Artificial Intelligence)に入力・解析させ、何パターンか計算させた。英語の論文を逐一読まなくてもよく、自分で計算しなくてもよい(掲載前には当然ながら検算した)ので、複数のパターンを容易に試せた。

 この作業中に、情報収集の手間が一段階変わった印象を受けた。この感覚は以前にもあった。言うまでもなく、インターネットが普及した時である。

 プロフィルにある通り、筆者は1987年にコンピューター技術を扱う「日経バイト」で記者として働き始めた。1990年代前半にインターネットが普及する前の話だ。当時はコンピューター関連の情報であっても、現地に出向いたり電話をしたりして話を直接聞く必要があった。

 当時使われていた資料は紙しかなかった。海外出張から戻るときは、スーツケースに大量の資料を詰め込んで帰ることになる。Windows用の開発ツールなどはマニュアルが分厚かったので難儀した記憶がある。帰国の前日にはどの資料を持ち帰るべきかを峻別する作業にも追われる。

 インターネットの時代になると、情報収集の効率は大きく高まった。取材先のWebサイトに掲載されている資料はすぐにダウンロードできるし、先方とのやり取りは電子メールとなり、いちいちファクスに向かう必要もなくなった。

 情報の入手という点では、現状だと生成AIを使ってもあまり変わらない。今後AIエージェントが普及するとその点が変わる可能性はある。実際に特集に掲載した暗号の危殆(きたい)化に関するグラフは、AIエージェントにつくらせ、その後データを検証した。

5.5G上り、AIによる需要増で懸念(7.7 日経XTEC)
通信速度調査大手の米Ookla(オークラ)は、AI(人工知能)がネットワークに求める要件として、上り通信容量、負荷時の遅延、クラウドへのアクセスを挙げ、現在の5G(第5世代移動通信システム)がそれらを満たしているかについての調査結果を公表した。

世界22市場、86の通信事業者を対象に調査した。テキストベースのAIアプリでは上り通信と下り通信の比率が約29対71、会話型では50対50に近づく一方で、多くの事業者は上り通信に通信容量の約1割しか割り当てていないとした。例として韓国を挙げた。韓国は上り速度が45.27Mビット/秒で調査対象22市場内で第2位だが、上り通信への割り当ては7.5%と最低水準だった。

遅延時間では、テキストベースのAIで50ミリ秒未満、会話型で40ミリ秒未満、AR(拡張現実)やマルチモーダル型では30ミリ秒未満が条件となる。これを唯一満たすシンガポールは通常時のベースライン遅延が24.6ミリ秒と最も低い一方、負荷時には遅延悪化率が9.2倍となる。

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