週間情報通信ニュースインデックスno.1532 2026/7/4


1.AnthropicがGoogle陣営のノーベル賞科学者獲得、日本はバイオAIでも出遅れ(7.3 日経XTEC)
ノーベル賞は言わずと知れた世界最高峰の学術賞だ。性格が異なる文学賞と平和賞を除き、自然科学分野において偉大な研究業績を上げた科学者に贈られてきた。一方、AI(人工知能)はコンピューターサイエンスの分野の1つであり、ノーベル賞との関連性は薄いと思われていた。ところが2024年のノーベル物理学賞と化学賞は、いずれもAI関連のテーマで業績を上げた科学者が受賞した。

 2024年のノーベル物理学賞を受賞したのは、ジョン・ホップフィールド氏とジェフリー・ヒントン氏。受賞理由は「人工ニューラルネットワークによる機械学習を可能にした基礎的な発見と発明」である。現在のAIの多くは、ニューラルネットワークによる機械学習、すなわち深層学習(ディープラーニング)を採用している。つまり、現在のAIが生まれるきっかけになった基礎研究にノーベル賞が贈られたのだ。「AIそのものが受賞理由になったのか」と驚いた人は多いだろう。

 この「王者」ともいえるグーグル陣営に、米Anthropic(アンソロピック)が正面から挑戦状を叩きつけた。グーグル・ディープマインドのもう1人のノーベル賞科学者であるジャンパー氏が2026年6月19日、約9年間在籍した同社を離れ、アンソロピックに参画するとSNSで公表したのだ。アンソロピックがいよいよバイオAIに本腰を入れ始めた。

 大手AI企業が直近で注力している分野はフィジカルAIだろう。自動運転車や産業用ロボットの制御といった実用分野がはっきりしているからだ。それに加え、企業へのAI導入支援も直近の大きなテーマになっている。その次の注力分野として、各社はプロテインAIなどのバイオAIに対する布石を着々と打っている。アンソロピックがバイオAI重視の姿勢を明らかにしたことで競争の構図が見えてきた。

2.BIPROGYがメインフレームの販売・保守を終了へ、国内継続は日本IBMとNECの2社に(7.3 日経XTEC)
BIPROGYが国内で提供してきた米Unisys(ユニシス)製のメインフレームについて、販売・保守を終了する方針であることが日経クロステックの取材で2026年7月3日までに分かった。BIPROGY プロダクトマネジメント部マーケットコミュニケーション室長の松代憲治氏は「顧客のAI(人工知能)活用やDX(デジタル変革)の推進に向けて、オープン系システムへの移行を促すため」と理由を説明する。

 BIPROGYはメインフレームを利用中の顧客に終了方針を伝え、既存システムからの移行やモダナイズなどについて顧客と検討を始めているという。現時点で、販売・保守の終了期限は定めていない。メインフレームの提供元である米Unisysはメインフレームの販売・保守を継続する。

3.「ホッピング」回避しながら優良顧客を獲得、KDDIとNTTドコモの新戦略(7.3 日経XTEC)
 携帯電話業界の大きな課題である「ホッピング」の影響で、優良な新規顧客の獲得が難しくなっている。それでも各携帯電話会社は、自社の強みを生かしてターゲットを絞り込むことで、この課題に対処しつつ優良顧客の獲得を図っている。NTTドコモとKDDIの具体的な事例を見ていこう。

 携帯各社はこれまで、他社から乗り換えた人にスマートフォンを大幅値引きしたり、高額なポイント還元やキャッシュバックを実施したりすることで、顧客を奪う競争を繰り広げてきた。だがその結果、それら特典を目的として携帯電話会社を短期間で乗り換え続け、利益だけを得る「ホッピング」という行為が横行するようになった。

 中でも注目を集めているのがKDDIで、顧客獲得の武器に打ち出したのは通信品質だ。調査会社である英Opensignal(オープンシグナル)のリポートにおいて、通信品質に関する指標で4連覇を達成するなど高い評価を維持している。

 そこでKDDIは、通信品質で評判を落としたライバルを狙い撃ちする形で顧客を奪おうとしている。同社が具体的な企業名を挙げているわけではないが、発表資料などを見ればターゲットが浮かび上がる。その1社は2023年前後に通信品質面の課題が指摘され、評価の回復が途上にあるNTTドコモだと考えられる。そしてもう1社は、KDDIとのローミング契約期限が2026年9月末に迫り、その後の品質低下が懸念される楽天モバイルの可能性が高い。

4.人知を超えた「超知能」、その開発は停止すべきなのか(6.29 日経XTEC)
2026年のゴールデンウイークに『超知能AIをつくれば人類は絶滅する』(エリーザー・ユドコウスキー、ネイト・ソアレス著、櫻井祐子訳、早川書房)を読んだ。なかなかに挑戦的なタイトルである。筆者らは米国の非営利団体Machine Intelligence Research Institute(MIRI)の共同代表で、長らくAGI(Artificial General Intelligence:汎用人工知能)の研究に携わってきた。

 話を戻そう。『超知能AIをつくれば人類は絶滅する』の主題は、超知能となったコンピューターは、人間が制御できない何らかの複雑な思考経路の果てに、人間の存在と相いれない方向性を打ち出すようになる、である。

 昨今のAIは能力が向上し、2023年に登場した当時のChatGPT(チャットジーピーティー)と比べて、かなり広範かつ正しく動作するようになった。私はChatGPTの延長上にAGIはないだろうと予測していたが、このまま順当に進めば、本当に知性を持ち得る可能性を感じさせる。

 ただそうなったとき、現在のようにタイパやコスパばかりを優先する風潮が続いていたら、何もかもAI任せにしてしまうだろう。これは人知の堕落といえる。そうなれば超知能AIが獲得した何らかの選好によって脅かされるまでもなく、人間は勝手に絶滅してしまうのではないだろうか。

5.「AIエージェントで業務を自動化できるか」は間違った問いである(6.29 日経XTEC)
 AIエージェントの設計において、最も上流にあり、最も影響範囲の大きい意思決定がある。それは「何をエージェントに任せるか」の選定である。この選定を誤れば、後続するすべての設計判断が空転する。ガバナンスの強度、テストの設計方針、人間の関与水準、そして最終的なROI 。すべてが、ここで決まる。

 AIエージェントの導入を検討する際、最初に出てくる問いは多くの場合「この業務は自動化できるか?」である。だが、この問いは2つの理由で不適切である。まず、エージェントは「自動化」の道具ではない。ルールベースの処理やRPA(Robotic Process Automation)が担う自動化は、事前に定義された手順を決定的に(つまり、毎回同じ結果を)実行することに価値がある。一方、エージェントの価値は、確率的に判断し、動的にツールを選択し、状況に応じて行動を変えることにある。「自動化」という言葉は、この本質的な違いを覆い隠す。

 もう1つの理由は、「できるか」という問いが技術的な可能性にのみ焦点を当てている点にある。エージェントの技術的能力は日々向上しており、「できるか」と問えば、大半の業務に対して「できる」と答えられる時代が来ている。しかし、「できる」ことと「やるべき」ことは異なる。

正しい問い:「確率的判断と自律的ツール実行で価値が生まれるか」  エージェントに委ねるべき業務を選定するための正しい問いは、「確率的な判断と自律的なツール実行の組み合わせによって、従来の手段では得られない価値が生まれるか」である。

 正しいアプローチは、エージェントの導入を「業務の再定義」の契機として捉えることだ。エージェントが介在することを前提に、業務そのものを再設計する。入力の形式を変える、承認の粒度を変える、例外処理の定義を変える。エージェントの能力に合わせて業務を最適化することで、単なる工数削減を超えた構造的な改善が可能になる。

 ある金融機関では、顧客からの問い合わせ対応業務にエージェントを導入する際、従来の「オペレーターが電話を受け、マニュアルを参照し、回答する」というフローをそのまま置き換えるのではなく、業務自体を再定義した。問い合わせの分類体系を再編し、エージェントが自律処理できる問い合わせとエスカレーションが必要な問い合わせを明確に区分した上で、エスカレーション先のオペレーターにはエージェントが収集済みの情報と分析結果が自動的に引き継がれる設計とした。結果として、単に「オペレーターの代わり」としてエージェントを配置するよりも、業務全体のリードタイムが大幅に短縮された。

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