週間情報通信ニュースインデックスno.1530 2026/6/20


1.米国でも「AI失業」は起きない、警戒すべきは労働力不足(6.19 日経XTEC)
AI(人工知能)が人間の雇用を奪うとの懸念は根強いが、米国においてもまだその兆候は見られていないことが、米Yale University(エール大学)の「Budget Lab」による最近の調査で明らかになった。

 本リポートはBudget Labが2025年10月に発表したリポート「Evaluating the Impact of AI on the Labor Market: Current State of Affairs」の更新版だ。Budget Labは当時のリポートで「ChatGPTがリリースされた2022年11月以降、米国市場では雇用に関する目立った変化は見られなかった」と結論づけていた。今回の追跡分析でも、その結論に大きな変更はなかったというわけだ。

 しかし本コラムでも以前取り上げたように、AI暴露が最も高い「ソフトウエア開発者」の職種でも、米国においては求人数が回復傾向にあるのが実態だ。

 「AIが雇用を奪う」のではなく、AIによって労働力不足が発生する――。最近ではそんな主張まで飛び出している。発言の主は、米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)の創業者であるJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏だ。

 ベゾス氏は米経済メディアのCNBCが2026年6月12日(同)に公開したインタビューで、AIがもたらす新しい発明が、生産性向上とそれに伴う生活水準の向上をもたらすと主張。それによって「人々はより少ないお金で必要な生活物資を購入できるようになる。現在は共働きの世帯であっても、片方の稼ぎ手が労働市場に出ないことを選択するようになるかもしれない。あるいは残業をしている一部の人々が、残業をしたくないという理由で残業をやめるかもしれない」と述べた。

2.「もう不要」なのにむしろ希少価値高まるプログラミング能力、生成AIの皮肉(6.19 日経XTEC)
最近、世間のプログラミング学習に対する関心が急速に薄れてきたように感じている。初心者向けのプログラミングスクールの話題もめっきり聞かなくなった。おそらく原因は、プログラムコードの出力が可能な生成AI(人工知能)の普及だろう。

 プログラミングを学べば自分が欲しいソフトウエアを自由につくれるようになる。だからプログラミングの学習には意味がある──。私はこのコラム連載で何度もそう主張してきたし、世間でもそう信じられてきた。

 ところが、今や人間がプログラミングを理解していなくても、話し言葉で気軽に生成AIに依頼するだけでソフトウエアをつくれるようになった。例えば、対話型AIサービスに「簡単なシューティングゲームをつくって」と依頼するだけで、Pythonなどで書かれたゲームのコードを出力してくれる。

 ではプログラミング能力は本当に不要になったのか。そんなことはない。むしろ企業のシステム開発の現場では、プログラミング能力の必要性が増している。目的は人間がコードを書くためではない。生成AIが出力したコードを読んで意味や構造を理解するためだ。

3.ソフトバンクG、OpenAIの技術を使ったサイバー防衛診断を提供へ(6.17 日経XTEC)
ソフトバンクグループ(SBG)は2026年6月16日、自社の法人向けイベントで米OpenAI(オープンAI)の技術を活用した企業向けサイバーセキュリティー対策サービス「Patching as a Service(PaaS)」の提供を開始すると発表した。AI(人工知能)を悪用したサイバー攻撃の自動化・大規模化が進む中、重要インフラを守る手段として、国内企業への普及を図る狙いだ。サービスの提供は、SBGのグループ企業とOpenAIが共同出資するSB OAI Japanが実施する。

 PaaSでは、脆弱性診断から修復方針の策定、実装の提案まで支援する。具体的にはオープンAIのセキュリティー対策向けAIモデルなどを用い、対象システムの脆弱性を発見する。脆弱性の重大度に応じて優先順位を付け、どの箇所から修正すべきかを提案する。

4.「SaaSの死は時期尚早」といえども、AI台頭で変化を求められるマネタイズ(6.16 日経XTEC)
日々、生成AI(人工知能)やAIエージェントの話題に事欠かない。調査会社の米IDCによると、2029年までに企業が配備するAIエージェントの数は10億に達するとも言われ、大手IT各社が数多くのAIエージェントをまとめる管理ツールの提供を本格化させている。

 AIエージェントによって業務効率化への期待が高まる一方で、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)企業の存在意義を改めて問う「SaaSの死(SaaS is Dead)」を代表とするキーワードも2026年上半期に流行した。現時点では「SaaSの死」の内容に賛否が分かれているものの、AIエージェントがSaaS企業に与える影響が皆無というわけではない。

 彼は米Oracle(オラクル)や独SAPなどでクラウド事業の財務責任者(CFO)を歴任した人物だ。マクエルハットンCOFOは「SaaSの死は時期尚早」とも述べつつ「AIの大きな影響によって今後1年ほどで勝者と敗者に分かれていくだろう」と推測する。

5.IT/デジタル革命なのにDXできない日本企業、家電に続き自動車も壊滅するぞ(6.15 日経XTEC)
本当に驚いてしまうな。生成AI(人工知能)やAIエージェントがビジネスの在り方を抜本的に変えてしまうものとして世界中で認識され、どの領域でどう使うかが具体的に議論されているにもかかわらず、ボーっとしている日本企業があまりに多いのだ。「DX(デジタルトランスフォーメーション)の一環でAIを活用する」と威勢よく宣言しても、実際の行動にはなかなかつながらない。中には「セキュリティー上の懸念あり」として、社内で一切使わせない企業もあると聞くから、絶望的な気分になる。

 しかも「現在の遅れが将来取り返しのつかない競争力格差を生み出す」は完璧に的中した。これは本当に残念な結果だ。既に四半世紀も過ぎているのだから、2026年の今は、当時から見ても十分に「将来」だ。そして今まさに、米国だけでなく、中国と比べても大きな競争力格差がある現状を目の当たりにしている。この認識に異論はあるまい。生成AIやAIエージェントの開発についても、米中に大きく水をあけられているわけで、もはや取り返しがつかない競争力格差をつけられたと断言してよい。

 過去を鑑みて未来の糧とするために、日本の家電産業の壊滅について「復習」しておこう。家電産業といえば、20世紀中は自動車産業と共に「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の旗頭だった。そりゃもう「日本企業にあらずんば家電メーカーにあらず」といった勢いだった。ところが、米Apple(アップル)が2001年に発売したiPodに象徴されるように家電、特にAV機器のデジタル化によって、韓国や中国のメーカーが躍進し、日本の基幹産業であった家電産業は総崩れになってしまった。

 そもそも、日本の自動車メーカーはEV(電気自動車)の開発・普及で中国の自動車メーカーに大きく水をあけられてしまった。日本の自動車メーカーも巻き返しを図ろうとしたが、米国のトランプ大統領が気候政策を見直し、EV支援策を縮小したこともあり、巻き返しのきっかけを失ってしまった。その間、中国ではスマートフォンメーカーの小米(シャオミ)がEVを発売するなど、異業種参入が相次いだ。その結果、EVのコモディティー化も一気に進んだわけだ。

 さらに言えば、自動運転車への生成AIの活用も進んでいる。自動運転車用のAIはこれまで従来のルールベースや専用ニューラルネットワークが主流だったけど、最近では生成AIを活用しようという機運が出ている。例えば「工事中で警備員が誘導している」といった例外的状況では、LLM(大規模言語モデル)の理解能力が有効と見られているとのことだ。それにテスラの自動運転機能は、生成AIにも使われる深層学習アーキテクチャーの「トランスフォーマー」を基盤にしているよね。

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