タイトル | 1ポンドの福音 −よろめく小羊− |
内容(参照) | 「1ポンドの福音<ヤングサンデーコミックス> 3」より |
初出掲載誌 | 週刊ヤングサンデー 1996年17号〜21・22合併号 |
発行元 | 小学館 |
単行本 | 1ポンドの福音<ヤングサンデーコミックス> 3 |
<解説>
ヤングサンデーの週刊化に伴う記念企画の第2弾として、「聖夜に泣く小羊」以来、実に3年3ヵ月ぶりの連載となった作品だ。
この間、あまりにもブランクが長かったために、もう「1ポンド」は描く気がないんじゃないかという風評もあったし、連載が発表されてからも、ヤングサンデーの記念企画だからしかたなく描くんじゃないか、あるいは、この連載で単行本未収録分の帳尻を合わせて、シリーズを完結させてしまうのではないかとの憶測も飛び交った。
確かに連載終了後、すぐに単行本第3巻が発売されたが、内容としてはこれで完結というものではなく、まだまだ続けて行くという姿勢の見えるものとなっていた。
この作品で目を引くのは、やはり可菜だろう。「十字をきった小羊」の明光商会のお嬢さん以来の注目すべきサブキャラと言える。この可菜を見ると、いわゆる「いまどきの若い娘」を積極的に描こうとする姿勢が感じられる。これは、「犬夜叉」のかごめにも共通するもので、傾向として注目に値すると言えよう。
るーみっく作品の女性キャラは、1980年代には時代とマッチした女性像を映していたと言えた。しかし、1990年代に入ると、どうしても一時代前の女性という感覚がぬぐい去れなくなってきていた感がある。その辺のズレを積極的に矯正して行こうという姿勢と見ることができるのだが、いままでの女性像に馴れてきたファンにとっては、ちょっと違和感を感じるものだったかもしれない。
この作品では、可菜を耕作の恋人とシスターアンジェラが誤解(耕作の姿勢からすれば、誤解と言い切れない部分もあるのだが。笑)し、動揺する様子が中心に描かれている。「十字をきった小羊」でもそうだったが、確実に耕作への想いがシスターアンジェラの中に根づいていることが伺える。
ラストでは、耕作が自分だけを見つめてくれることに喜びを感じ、その思いに応えてあげたいとまで思うようになる。これはシスターという立場を考えるならば、ものすごい進展と言えよう。また、このラストのシスターの気持ちは、「茶の間のラブソング」と同様に作者と読者の関係に重ねることができる。そう考えるとまた、このシーンの盛り上がりが増してくる。最後は、思いっきりハズされてしまったが、この辺はお約束の愛敬だ。
しかし、毎度のことながら「誤解」の図式を描かせたら天下一品だ。参照コマのシーンなど、よくもまあこれだけ見事な誤解(半分は誤解でないのだが)の構図を考えつくものだ。ズボンの脱げ方など、見事としか言いようがない。(笑)