タイトル | 夜叉の瞳 |
内容(参照) | 「週刊少年サンデー 1993年6号」より |
初出掲載誌 | 週刊少年サンデー 1993年5号、6号 |
発行元 | 小学館 |
単行本 | 未収録 |
<解説>
強烈さという点では真人に譲るが、悪人という意味ではこの作品の新吾だと言えよう。幼い頃から動物を刃物で殺したりするのが好きだったという残虐な性格は、その後も改まることなく、確かに湧太が言うように救いようのないものがある。
姉の晶子は、新吾の右目を失明させてしまった負い目から、常に新吾をかばってきたが、一方で、誰よりも新吾の残虐な行為をやめさせ、更生させたがっていたに違いない。
晶子の死体から奪った新吾の右目に、夜叉のような顔をした新吾自身のあさましい姿が人殺しをするたびに映るというのは、恐らく新吾にこれ以上残虐な行為をさせたくないという晶子の強い思いによるもので、思念とか、霊とか、そういう言葉でしか説明のしようがないもののように思える。
朽ち果てることもなく、人形として飾られた晶子の死体だが、新吾は晶子が生きているのではないかと疑う。しかし、それは結局のところ不明だ。晶子の首を落としてもなお消えない自らのあさましい姿…。一生、いや、不老不死になってしまった以上、永遠にそれを見続ける運命が課せられたのだと悟った新吾は、自らの首を落とすことで解放される道を選んだ。
人魚の肉で新吾との無理心中を図った晶子が、新吾が不老不死になってしまうことまで予想して、このような運命を課したのかどうか…? それもまた不明だ。それはあくまで、新吾にとって皮肉な結果でしかなかったのかもしれない。
謎が謎のまま終わった作品だが、そこにまた奥深さも感じる。結局、この作品で提示されたのは、残虐(残酷)な行為をする者に対して、己のあさましい姿を見せつけることによって、それをやめさせたいという図式だ。それが何を意味するのか…? 考えさせられる作品だ。