タイトル | 浪漫の商人 |
内容(参照) | 「高橋留美子傑作集 Pの悲劇」より |
初出掲載誌 | ビッグコミックオリジナル 1987年14号 |
発行元 | 小学館 |
単行本 | 高橋留美子傑作集 Pの悲劇 |
<解説>
ビッグコミックオリジナルの高橋留美子劇場シリーズ第1作となった作品で、全体的には終盤期の「めぞん一刻」の雰囲気をそのまま受け継いでいるという印象を受ける。
一旦はたたもうとしたおんぼろ結婚式場「浪漫会館」を、無愛想だけど心の温かい仲間たちとともに再び続けて行く決心をするまでを描いた心温まる作品というのが表向きの解説だが、この作品も当時の高橋留美子先生の立場を象徴する内容が込められているようで、非常におもしろい。
ヒロインの縁は夫と離婚して間もないおんぼろ結婚式場の主…。この夫と別れて間もないという立場が、過去のよきパートナーであった二大連載に別れを告げた高橋先生の立場と重なるのだ。そもそも「浪漫の商人」というタイトルからして意味深である。これは漫画家という浪漫を売る商売にある高橋先生自身のことを示しているものと解釈できる。(「商人」を「あきんど」と読ませているあたりが、余計にそれらしさを感じさせる。)
その縁は途中で、もしかしたら別れた夫とよりを戻せるかもしれないという気持になったりするが、結局はマイナスからの再出発を決心する。このあたり、「うる星やつら」の連載再開とまでは言わないまでも、似たような作品に落ち着けば安直に元の地位に戻れるんじゃないかという迷いがあったのかもしれない。しかし、結局は「らんま1/2」という別のタイプの作品での再出発を決心するという図式となる。
ここでちょっとおもしろい対応を示しているのが、縁の別れた夫への未練などを追及しながら、結局はマイナスからの再出発に導くフロア長の名前だ。彼の名は「別当」…。勘繰って読めば、「あたると別れる」と読めるのだ。(笑)