タイトル | Pの悲劇 |
内容(参照) | 「高橋留美子傑作集 Pの悲劇」より |
初出掲載誌 | ビッグコミックオリジナル 1991年4号 |
発行元 | 小学館 |
単行本 | 高橋留美子傑作集 Pの悲劇 |
<解説>
この作品は、ビッグコミックオリジナルの高橋留美子劇場シリーズの中でも最高に質の高い作品と言える。単行本の標題作品となったのも、当然と言えよう。高橋先生のペンが、いよいよ社会問題的領域に踏み込んできたのだ。
この作品で扱われているのはペット問題だが、こうした図式は何もペットにかぎったことではなく、喫煙者と嫌煙者の問題であるとか、様々なものに当てはまる。それぞれの言い分が、気持ちとして、あるいは公共の利益としてわかるものだけに、難しい問題をはらんでおり、一概にどちらとも言えない人間社会の矛盾点とも言える部分を突いてきている。
この作品でポイントとなる部分はいくつかあるのだが、中でもちょっと「おやっ?」と目を引くのが、ペンギンのピットくんが気持ちよさそうに粗相をするところだ。
人間の作ったルールの中で狭苦しい思いをせずに、出したいものを出したいときに素直に出す行為…。この時期、有害図書問題が起こりはじめ、差別表現に対する規制の問題も顕在化してきたという社会的背景があるだけに、図式的に見て何やら臭ってくるものがあるのだ。
この作品は中味が4つのACTに分かれており、それぞれに「P」を頭文字とする英単語のサブタイトルがつけられている。作品全体の構成が「P」にこだわってなされているのだ。これを見ると、「Pの悲劇」の「P」とは、単に作品内容に直接関わる「ピットくん」、「ペンギン」、「ペット」という単語にとどまらず、様々な「P」を内包しているようにも思えてくる。そして、その中には(執筆活動を象徴する意味での)「Pen」や「Publishing(出版)」も含まれているのではないかと…。
ここまでくると、かなり邪推の領域になるのだが、「P」という文字を意識的に配しているこの作品の構成には、何かを暗示しているのではないかという気を起こさせるものがあるのだ。