タイトル おやじローティーン
内容(参照)
「ビッグコミックオリジナル 1997年10号」より
初出掲載誌 ビッグコミックオリジナル 1997年10号
発行元 小学館
単行本 高橋留美子傑作集 専務の犬


<解説>

 例年、年頭に発表されていたビッグコミックオリジナルの「高橋留美子劇場」シリーズだが、「犬夜叉」の連載との兼ね合いもあって、ゴールデンウィーク期の登場となった。内容は、やはり「家族」をテーマにしたものになっており、掲載誌に合わせてターゲットの中心を社会人層に置いていることがうかがえる。

 週刊少年サンデーの連載作品「らんま1/2」や「犬夜叉」はファン層の中心である小中学生にターゲットの中心を置いているようで、この辺は意識してきっちりと描き分けられている。

 さて、この作品でも「ストレス」が大きなキーポイントとして描かれている。「迷走家族F」でも、ストレスが悲劇の引き金となり、ストレスの解消によって家族が救われる図式が描かれていたが、この作品では、それがさらに強く明確に描かれていると言える。

 「単身赴任」をきっかけとしたストレスの蓄積というストーリーは、比較的TVドラマなどでもよく見られるパターンではあるが、それによって退行現象を起こすという部分が、この作品では重要なポイントだ。しかも、13歳という年齢が、何とも意味深い。なぜなら、それが「らんま1/2」や「犬夜叉」ファンの中心年齢層と合致するからだ。

 「らんま1/2」は、もともと「子供漫画に戻って」というコンセプトがあったようだが、それでも前半はそれほどそうしたものを意識しているようには見えなかった。ところが、途中から絵柄やギャグ、オチの質がどんどんと低年齢向けになって行き、もうついて行けないと言う旧来のファンが多く出てくるに至る。そうした傾向は「犬夜叉」にも引き継がれているように思われる。

 こうしたことがどうして起こったのか? その辺の解答の一端がこの作品には投影されているような気がしてならないのだ。

 自分の立場ばかり考えて、軽い気持ちでひどいことを言ってた家族…。そんな家族の待つ家に帰りたくないとこぼしていたお父さんは、入院をきっかけとして13歳に退行してしまう。そんなお父さんに食ってかかる家族…。「この人たち…ぼくのこと嫌いなんだ。」と感じたお父さんは、本当の家族のもとに帰ろうと思うけれど、行き場が見つからない…。

 それでも自分たちのしたことに気づいていない妻…。いや、ひどいことをしていた。自分たちは見捨てられたんだと感じた息子…。この一連の図式が、年齢の高いオタクなファン層と高橋先生との関係を映しているように思えてならないのだ。

 「うる星やつら」「めぞん一刻」時代のファンの中心層は、圧倒的にオタクのにーちゃんたちであり、「らんま1/2」は圧倒的に小中学生の女の子たちだったという。「らんま1/2」に対して理屈をこねていたオタクのにーちゃんたちと素直にハマってくれていた小中学生の女の子たち…。「らんま1/2」という作品が、ある意味で前者を見捨てて後者に向かって行った可能性は想像に難くない。

 しかし、この作品を読むと救いがないわけではない。お父さんは「毛ガニととうもろこし」のことは覚えていた。妻と息子の記憶を完全に失ったわけではなかったのだ。つまり、まだ完全にオタクのにーちゃんたちが見捨てられたというわけではない。要は、ストレスさえなくなれば…。ストレスさえ与えなければ…。

 「迷走家族F」で、一旦はストレス解消宣言がなされたかのように見えたのだが、再びこうした図式が見えるようになったのはなぜか? 「らんま1/2」から「犬夜叉」へと週刊連載が変わり、また以前と同じような状況が起こりはじめているのだろうか?

 この作品は、そうしたものを考えさせられる作品であった。


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