タイトル | お礼にかえて |
内容(参照) | 「ビッグコミック・オリジナル 1998年4号」より |
初出掲載誌 | ビッグコミックオリジナル 1998年4号 |
発行元 | 小学館 |
単行本 | 高橋留美子傑作集 専務の犬 |
<解説>
マンションに住む主婦たちの人間関係に焦点を当てた作品だ。このマンションに引っ越してきたばかりの小鳩さん、女王としてほとんどの主婦達を従える白鳥さん、それに反発する魔女こと鵜飼さん、引っ越してきたとき、白鳥さんに挨拶にいかなかったばっかりにいじめられ、美化委員としてこき使われている召し使いこと鴨下さん…。
主な登場人物の姓が「鳥」づくしになっており、ここに本物の「鳥」である九官鳥の九ちゃんが絡んでくる。マンションの名も烏合マンションだ。作品としては、あまり難しいことを考えずに、さらりと読めるものに仕上がっているが、この「鳥」づくしは、ちょっと意味あり気にも感じる。
また、この作品のヒロインである小鳩さんは、外見的にも性格的にも天道あかねを思わせるものがあり、意識的とも思えるほど似ているコマもある。
設定としては、主婦たちの話になっているが、ストーリーとしては、取り巻きを従えた女王のいじめやいやがらせに対抗して、最後にはこの女王をへこませるという、学園ものなどにもよく見られるパターンと言える。しかし、それだけで終わっていないところはさすがである。
確かにお約束といえるほど悪い性格を見せた女王だが、この女王の秘密(失敗)というのが実に人間臭く、最後には対決した小鳩さんをして「気の毒だ」という感想を抱かせるに至っている。
逆に、一緒に女王に対抗して、どちらかというといい人のように描かれ、自分がけがをして入院した際、小鳩さんを女王から守るために九官鳥の九ちゃんを預けたのかと思われた魔女こと鵜飼さんが、実はただ世話を押しつけただけだったという逆転のオチは、妙に皮肉で面白い。