タイトル | 人魚の森 |
内容(参照) | 「るーみっくわーるどスペシャル 人魚の森」より |
初出掲載誌 | 週刊少年サンデー 1987年22号、23号 |
発行元 | 小学館 |
単行本 | るーみっくわーるどスペシャル 人魚の森 |
<解説>
1986年は、恐らく「うる星やつら」と「めぞん一刻」がいよいよ佳境に入り、完結に向けて力を注いでいたからなのだろう。(ビッグコミックスピリッツの週刊化も影響しているかもしれないが)1作も読み切り作品がなかった。
そのため、1年おいての登場となった「人魚シリーズ」の第3弾だが、シリーズの中で最もグレードの高い出来と言っても過言ではなかろう。2つの長期連載を終えたこの時期、1つの頂点を極めたという感があり、作風もどっしりと安定した作品が続いている。連載がない分、より力を注げたという背景もあるかもしれない。
前半部では、冷徹で非常識的な部分を持つ登和に対して、温和で常識的な佐和という図式であったのが、最後へきての「佐和が登和の体で人魚の生き血を試した」という事実の発覚による立場の逆転や、登和が人魚の肉を欲しがっていたのが、佐和に食べさせるためだったというドンデン返しは見事だった。
さて、作品そのものの表面上のストーリーとは別に、双子の姉妹が死んだという事実は、当時の高橋留美子先生をとりまく状況から考えると意味深だ。1人は自然に年をとって行き、もう1人は若い姿のまま…。なんとなく、「めぞん一刻」と「うる星やつら」を象徴しているようにも見える。
その2人が死んで、神無木家の過去を象徴する人魚に関するすべてのものとともに燃やされる図式は、過去の二大連載をきれいに清算して、気持ちを切り替えようという高橋先生の気持ちの現われであるという見方もできて興味深い。