タイトル 1ポンドの福音 −十字をきった小羊−
内容(参照)
「1ポンドの福音<ヤングサンデーコミックス> 2」より
初出掲載誌 ヤングサンデー 1990年8号〜12号
発行元 小学館
単行本 1ポンドの福音<ヤングサンデーコミックス> 2


<解説>

 この作品で第1に特筆すべきは、何といってもシスターアンジェラの素顔(髪型)が見られたことだろう。仏教の尼僧とキリスト教の修道尼は違うのだが、どうもイメージ的なものがあって、ツルツルの坊主頭なんじゃないかなどという同人ネタなどもよく見られた。が、しかし、さすがにそれはなかった。(笑)

 第1作でいきなりキスまで行ってる(といっても、耕作が強引にキスしただけ)のだが、その後、2人の関係に表立った進展は見られなかった。しかし、ここへきて初めて耕作からプロポーズに相当する行動が示され、それによって見習いとはいえ、神に仕える身であるシスターアンジェラの立場と気持ちの葛藤がクローズアップされてくるかたちとなった。

 「めぞん一刻」で五代と響子が最後にクリアしなければならなかったのが、響子の亡き夫・惣一郎であったのと同様に、修道尼である以上、避けて通れない部分にいよいよ直面したのだが、「試合に勝ったら結婚(または同棲)」ということを示唆されていながら、それでも耕作を応援せずにはいられなかったシスターアンジェラの気持ちというのが、この作品の最大の焦点と言えるだろう。

 結局、耕作は試合に負け、その問題はうやむやになってしまったのだが…。(この辺の落し方は、初期の「めぞん一刻」に近いものが感じられる。)

 さて、この作品でちょっと注目なのが、明光商会のお嬢さん(参照コマ右)だ。表向きは一応、「はげまし」が好きだからとことわっているが、来栖のことが好きなのは明白だし、感情表現が大らかで、見ていて気持ちのいいキャラと言える。

 このお嬢さんの位置づけが、ちょうどシスターアンジェラと対極に立つ存在として描かれている点が、さらに注目に値する。自分の気持ちをストレートに表現するお嬢さんと、立場上、それができないシスターアンジェラ…。いや、そういう立場を意識するあまり、自分の本当の気持ちが見出せないでいたというべきだろう。

 この辺のキャラの配し方など、構成の妙は見事というほかない。


・年表に戻る
・次の作品に進む