タイトル | 1ポンドの福音 −小羊の復活− |
内容(参照) | 「1ポンドの福音<ヤングサンデーコミックス> 2」より |
初出掲載誌 | ヤングサンデー 1989年15号〜19号 |
発行元 | 小学館 |
単行本 | 1ポンドの福音<ヤングサンデーコミックス> 2 |
<解説>
前回は10kgも重いウェルター級での試合だったのが、一転していつもより1階級下のJフェザー級での試合と、落差の激しい展開となったが、この作品でも途中で会長が耕作を突き放し、最後に再びセコンドにつくという流れになっており、このあたりは「うちが女神じゃ!!」と似たようなかたちと言える。
プロテストでの最初の1発、デビュー初戦でのKO勝利…。華々しいスタート以降、どうもパッとしない耕作の戦績…。「1ポンドの福音」の初期設定段階では、そこまで考えていたのかどうか疑問だが、何やら妙に象徴的だ。
一方、この作品で注目すべきなのが松阪太郎の存在だ。耕作の最初の1発が呪縛となって、耕作と再び戦うために無理をしてウェイトを増やしながらボクシングを続けてきた松阪…。戦績は全勝なのに、本当はボクシングが嫌いなはずがないのに、恐らくちっとも楽しめずにいたに違いない。営業スマイルとすさんだ素顔の対比が非常に印象的でもあった。
その松阪が、耕作との再戦を経て、ベストウェイトでやればもっと楽しいんじゃないかと悟ったところが、1つのポイントとなっている。無理して1つのことに執着するのではなく、自分にとってベストの環境で楽しくやる…。この悟り方が非常に意味深く感じられるのだ。
そして、耕作の勝利へのカギは、荒っぽい強引で強気な攻めと、プロテストのときと同じ特上ステーキの約束だが、これは暗に初心への回帰を示しているようにも思える。この年の2作は、こうした再出発に際しての気持ちが、意識してかどうかは不明だが、共通して表れてきているように見えて面白い。