昔の遊び その1   やんまつり

 

挑戦(2007.9.9

 

昨年末、孫の小学校から戦争体験を6年生に話してほしいとの依頼がありました。昭和20年の終戦の年、私は小学3年生であり、記憶も定かではありませんが、何とか役目を果たさせていただきました。話しの後、生徒からその当時どのような遊びがあったのか聞かせてほしいとの希望がありましたが、残り時間がなく、あまりお話しすることが出来ませんでしたので、ここで幾つかの当時の遊びを紹介して行きます。

私の少年時代、もっとも熱中したあそびの一つにぎんやんま釣りがあります。これを先ず紹介しましょう。

 

ぎんやんま

ぼくはぎんやんまが好きだ。

ぎんやんまはいつも7月下旬から8月下旬に現れる。それも天気のよい風のすくない午前10時から午後3時ころまでである。

京成電車の競馬場前、今の東中山駅から北に広がる畑はぎんやんまが縄張りを確保する最適の場所がいたるところに存在している。

畑と畑の境界は必ずと云っていいほどとうもろこしが植えてあり伸びている。1.5mほどの網を持ち、背丈の倍以上に伸びたとうもろこしをかき分けて中を覗くと、そこはねぎ畑が広がっている。ねぎ畑の上空1メートルほどのところを注視すると、必ずそこに1匹の雄のぎんやんまが悠然と飛んでいる。ぎんやんまは空中停止(ホバリング)が得意だ。一箇所にかなりの長い時間停止し、また移動する。その飛行経路は毎回ほぼ同じである。上空に敵が飛来すると突如急上昇し敵を追い払う。敵の多くは別のオスのぎんやんまだ。縄張りを侵す侵入者には容赦しない。

最初の一匹の捕獲

ねぎ畑は畝と畝の間が深い溝になっており、これがまっすぐ通っている。最も通過する頻度が高い場所を見定め、溝の中を背をかがめて近づいていく。一振りで確実に網に取り込まなくてはならない。一度失敗するとその日は二度とギンヤンマは戻ってこないことが多い。網を振り上げ、やんまを納め、そして地面に伏せる。これが捕獲の全動作である。どの方向に振り上げ、どこに伏せるかが重要だ。両側はねぎの畝がある。畝と畝の間の溝、それも自分がいる溝の後ろか前に正確に伏せなければならない。小学校6年生の夏休みには捕獲率が80%以上にもなった。

やんま釣り

縄張りを飛行中のぎんやんまは、ここに飛来する雌のぎんやんまを待っている。雌のぎんやんまは腹の色が緑色しており、低空を不規則に飛び、ねぎの穂や周りのとうもろこしの葉によくとまる。その出現が予期できず雌のぎんやんまを日中捕まえることは非常に難しい。

やんま釣りにはこの雌のぎんやんまが必要だ。しかしなかなか捕らえることはできない。そこで雄のやんまを雌に変身させる必要が出てくる。雄のぎんやんまの腹は鮮やかな空色をしている。これを緑色にしてやれば雄を欺くことが出来る。その材料がいろいろある。最も手近かな材料はサツマイモの葉だ。適当な大きさに手で切り、手のひらでかるく揉むとやわらかくなり粘性が出てくる。これを雄のぎんやんまの空色の腹の部分に貼り付けるのである。少しくらい空色が見えていてもよいようだ。朝顔の葉はもっとよい。また緑色の絵の具を塗るのもよい。

おとりの擬似雌やんまを細い木綿糸で繋ぐ。糸は4枚の羽根の中心を通して、羽根の上側で結ぶ。糸の長さは約1mくらいがよい。これをやはり1mくらいの細いしの竹に結ぶ。これで準備完了である。

左手にしの竹を持ち、右手に網を持っていよいよぎんやんま釣りの開始となる。

雄のやんまの最も活動的な時間は正午から1時半くらいの時間帯だ。とうもろこしの幹をかき分け中を覗く。今度はきゅうり畑が広がっている。ぎんやんまがなわばりとする畑は決まっている。ねぎ畑、きゅうり畑、すいか畑が好きなようだ。小松菜畑はきらいだ。

左手でしの竹を一杯に伸ばし、繋いだぎんやんまを空中に円を描くように2〜3回飛ばす。これだけで飛行中のぎんやんまが必ず飛びついてくる。かさかさと音を立てて地面に一緒に落ちる。そこをすかさず右手で網をかぶせる。

このような捕獲を多い時で一日十数回行い、捕獲数が十数匹に及ぶときの満足感は言葉に言い表せない。捕獲した獲物は最後にまとめてリリースする。元気のよい1匹を残して。

 

自然の回復と保護

 戦後都市近郊の自然が急速に消え、昔のようなやんま釣りは出来なくなった。もう私の子供のころ体験した自然を相手にしたスリルに満ちた遊びは経験できないと思う。しかし、こどもの頃のこのような自然とのふれあいと感動がないと、これからの自然の後退に歯止めがかからなくなると思っている。もう一度昔の自然を取り戻す努力をしてみたい。

松戸の21世紀の森は、ぎんやんまが生息する条件が揃っている。今回8月末の3日にわたって調査した結果、数は少ないが10匹以上のぎんやんまの生息が確認が出来た。

飛翔するぎんやんま

雄と雌

生息地

いずれも2005.8.31 松戸21世紀の森で撮影

 

松戸の21世紀の森は、ぎんやんまが生息する条件が揃っている。今回2005年8月末の3日にわたって調査した結果、数は少ないが10匹以上のぎんやんまの生息が確認が出来た。ぎんやんま以外におにやんま、うちわやんま、しおからとんぼ、おおしおからとんぼ、(べっこうとんぼ)、ちょうとんぼなどが観察された。

21世紀の森はとんぼの生息地として保護すれば、あたらしい教育の場、自然と触れ合う場となると思う。

 

 

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