検 察 官 答 弁 要 旨

    (注)以下は、高裁に差し出した検察官の答弁書です。但し、縦書きを横書
      きに直しています。しかし、誤字等はそのままにし、一頁の行数、一行
      の文字数も原本と同じにしています。なお、−−−−−は、頁の区切り
      を示しています。頁右下の数字は頁数です。

       高裁の判決は、事実上の審理拒否の上(第一回公判の約15分で結審)、
      地裁判決とこの答弁書に沿って下されました。しかし、弁護人・被告人
      は、事前にも事後にもこの答弁書の送達を受けておりません。つまり、
      この答弁書に対する反論の機会を全く与えられていません。
       この答弁書の存在は、上告の申立て後、何かおかしいなと感じた被告
      人が、竹内義則弁護人に頼んで、最高裁から訴訟記録の謄写を取り寄せ
      て発見したものです。

       この検察官答弁書の極端に酷い部分については、着色強調しておりま
      す。詳しくは、弁護人の上告趣意書の該当個所と、被告人の上告趣意書
      (14〜16頁)等をご覧下さい。


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平成八年(う)第八一九号
  詐     欺
                          三 宅  喜 一 郎
 (検察官答弁要旨)

 所論は、要するに本件つなぎ融資契約書の文言には、顧客のローン債務の返済場所
としての「貴社指定ロ座」には、日本信販の銀行口座ではなく平和ホームズの銀行ロ
座が指定・記載されていたのであるから、顧客が二番目の東芝総合ファイナンスから
つなぎ融資を受けて右融資を平和ホームズの銀行口座に振込めば、一番目の日本信販
のつなぎ融資の返済場所に振込んだことになり、その段階で顧客の同債務は消滅し、
その後は平和ホームズと日本信販の債権債務の関係にすぎないと縷々主張して本件は
詐欺罪に該当しないとし、また、本件当時平和ホームズは資金繰り及び財政が逼迫し
ていなかった旨、資金繰会議は存在せず、経営委員会により被告人は会社経営から排
除されていたので、本件実行行為者の鎌田次郎、高澤正比古と共謀した事実はない旨
主張するものである。
 しかしながら、被告人らは、被害者らが東芝総合ファイナンスから受けた融資金を
平和ホームズの銀行口座に振込み入金した場合、これを平和ホームズの運転資金など
に使用する予定であって被害者に充当する意思は全くないのにもかかわらず、被害者
らに対してはその情を秘し、つなぎ資金を日本信販から東芝総合ファイナンスに借り
換えて欲しいとして、東芝総合ファイナンスからの融資金を平和ホームズの銀行口座

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に振込めば、その金員を直ちに被害者らの日本信販からのつなぎ融資の債務の弁済に
充てる旨嘘を言ったものであり、被害者らはこれを信じて、被告人らの求めるまま東
芝総合ファイナンスからつなぎ融資を受け、その金員を平和ホームズの銀行口座に振
込み入金したもので、その点に誤信があり、かつ、右金員は、被害者らの日本信販に
対する債務の弁済として使用されず、被害者らが財産上の損害を被ったのであるから、
被告人らの右所為が詐欺罪を構成することは明白である。
 その余の主張は、原判決が詳細に認定するようにいずれも原審において取調べられ
た証拠により受け入れ難いものであり、とりわけ、控訴の趣意は、平和ホームズでは、
本件前にファーストファイナンスとオリエントリースの組合せで行っていた二重ロー
ンが右二社に発覚し、被告人の自宅を担保に入れるなどして顧客に知られないように
して処理した経緯があること、平成六年四月二七日ころ、高澤作成の「ダブルを利用
しているユーザーにハガキが行くとトラブルが発生するおそれがある。」旨の被告人
のファックスの存在など、被告人が本件二重ローンによる詐欺について十分認識して
いた事項について殊更に触れないなど牽強付会な論旨にすぎない。
 よつて、所論はいずれも理由がなく、本件控訴はすみやかに棄却されるのが相当と
思料する。



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