無責任裁判の全記録公開

　　　　　　　　上告棄却決定に対する異議申立書

　　　（注１）以下は、被告人の、上告棄却決定に対する異議申立書です。但し、縦書き
　　　　　　を横書きに直しています。しかし、一頁の行数、一行の文字数は原本と同じ
　　　　　　にしています。なお、－－－は、頁の区切りを示しています。頁右下の数字
　　　　　　は頁数です。誤字はそのままにしています。
　　　（注２）本申立書は、時間の都合上、弁護人との打ち合わせなく作成し、最高裁に
　　　　　　提出したものです。


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平成八年（あ）第一三六二号

　　　　　　　　　上告棄却決定に対する異議申立書

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　被　告　人　　三　宅　　喜　一　郎

　右の者の上告に対する棄却決定について、左記の通り異議を申し立てます。
　　平成一〇年二月二七日

　　　　　　　　　　　　　右本人　住所　　横浜市青葉区荏田北三－七－一五
　　　　　　　　　　　　　　　　　氏名　　　　三　　宅　　喜　一　郎

最 高 裁 判 所 第 二 小 法 廷　　御　中
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　　　　　　　　　　　　記

第一　はじめに

　「理由」を読みますと、上告棄却の決定は、
①、私の上告趣意を正しくご理解いただいたうえで下されたものではない。
②、なお書き前半部分の、犯罪の成立に関する事実認定については、明らかに、検察官提
　出の客観的な物的証拠とすら齟齬をきたしている。
③、なお書き後半部分の、共謀の成立に関する事実認定については、判断の根拠が示され
　ていないので、推測するしかありませんが、一・二審判決の理由不備及び判断遺脱に対
　する被告・弁護側の批判を無視している。
④、私が二審の訴訟指揮を批判して、訴訟記録をインターネットのホームページに掲載し
　たことに対しては、弁護人を呼びつけてクレームをつけたのに、弁護人と私が上告趣意
－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－２－
　書の補充書を提出するからそれに配慮して欲しい、と上告趣意書で申し上げていたのに、
　それを無視して突然決定を下すとは、司法権力を批判する者に対する報復ではないでし
　ょうか。
と考えます。
　以下で、取り急ぎ、異議申立の要点について説明を加えますので、「決定」の再考を謹
んでお願い申し上げます。


第二　異議申立の説明

一、「決定」は、私の上告趣意を正しくご理解いただいたうえで下されたものではない
　　「決定」の理由は、私の上告趣意に対しては、「違憲をいう点を含め、実質は単なる
　法令違反、事実誤認の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない」という
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　ものです。つまり、原判決には、憲法違反はないし、仮に法令違反や事実誤認があった
　としても、判決に影響を及ぼすほどではない、という意味だろうと思います。
　　そうだとすると、「決定」は、私の上告趣意を正しく理解したうえで下されたものと
　は言えません。
　　私の上告趣意の主旨は、弁護人が一審の最終弁論の頃にやっとたどり着いた、本件は
　無実であるという結論と主張の下での証拠調べが、一・二審とも、事実上、全く行われ
　ていない。したがって、一・二審の裁判には、憲法三一条及び三七条二項の違反がある
　ので、差し戻して審理をやり直して欲しい、というものです。
　　弁護人が、弁護方針の変遷を経て、最終的には、本件はそもそも刑事事件ではなかっ
　た、という結論に達し、その主張をしたのは、三年間に及ぶ一審での「弁論要旨」の文
　章の中に於いてでした。
　　なお、その内容ですら、本心を言えば、私は不満を持っています。その辺の事情は、
　私の上告趣意書で窺い知ることが出来るのではないか、と思います。このように申し上
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　げるものの、私は、弁護人が自らの否を認めたうえで、証拠調べが尽くされていないと
　いう上告趣意書を提出された勇気と誠実さを尊敬しています。
　　しかしながら、その「弁論要旨」は、法廷での朗読すら、時間がないからという一審
　裁判長の訴訟指揮によって、途中で打ち切られております。そして、有罪判決が下され
　たのです。
　　このような事情のもとで下された有罪判決の証拠資料は、当然のことながら、弁護人
　が犯罪そのものは存在するという予断を持っていた時点でのものばかりです。このよう
　な時期に弁護人が同意した検察官提出の物的証拠（いわゆる「被害者」らの供述調書や
　捜査報告書等）や、このような時期の証人尋問の結果だけを法廷での供述証拠として採
　用した一・二審の裁判官の態度は、著しく公正を欠いています。
　　ごく普通に考えれば、もし、弁護人が、当初から、刑事事件は無かったという観点に
　立っていたら、検察官提出の物的証拠はほとんど全て否認したでしょうし、証人に対す
　る尋問内容とその結果も違ったはずです。すなわち、裁判官が事実認定をする際の証拠
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　資料が異なったはずであり、判決内容も異なった可能性があるはずです。
　　従って、弁護人が、一審の「弁論要旨」の文中とはいえ、改めて全面無実を主張し始
　めた事実を認知した段階で、裁判官は、直ちに審理を再開するか、あるいは、弁護人を
　呼んで、審理を再開するかどうか検討すべき義務があった、と思います。残念ながら、
　私は、弁護人から、一審の裁判官がそのような措置を執られた、という話は聞いており
　ません。ということは、一審の裁判官は、憲法三一条に規定する裁判の適正手続きに違
　反しておりますし、三七条二項に規定する「刑事被告人は、すべての証人に対して審問
　する機会を充分に与えられ、又、公費で自己のために強制的手段により証人を求める権
　利を有する」という基本的人権を奪っています。
　　二審では、弁護人は、全面無実の観点で新たな物的証拠と証人の取り調べを請求しま
　した。第一回公判では、物的証拠は採用したものの、証人の取り調べは却下されました。
　そして、被告人である私の陳述の機会も与えないで、弁護人の抗議の声を無視してあっ
　さりと結審しました。その間、約１５分から２０分程度でした。そして、第二回公判で
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　の控訴棄却判決には、新たに採用した物的証拠は全く反映されていませんでした。法律
　の素人には、何のために新たに物的証拠を採用したのか、全く理解が出来ません。私は、
　二審は、憲法第三二条に規定する、国民の裁判を受ける権利をも蹂躙したのではないか
　と（そう言いうるのかどうか勉強不足で自信はありませんが）考えております。
　　以上の通りですから、原審裁判官の訴訟指揮が憲法に違反しているのは明らかであり、
　その結果、当然ながら、判決に影響を及ぼすべき法令の違反を犯しており、また、判決
　に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があります。

二、犯罪の成立に関する事実認定は検察官提出の物的証拠とすら齟齬をきたしている
　　「決定」は、犯罪が成立する理由として、「株式会社平和ホームズには信販会社に代
　わって顧客からつなぎ融資金の弁済を受領する権限がないと認められるから」としてい
　ます。（以下では、「受領」とは、ごく普通に、「金や物を受け取ること」（『日本国
　語大辞典』小学館　昭和四九年）と理解して話を進めます。）
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　　しかしながら、この理由は、検察官が提出した物的証拠とすら、明らかに、齟齬をき
　たしています。検察官が提出した日本信販社員の員面調書は、いずれも、次のようにな
　っているのであって、平和ホームズが、顧客からのつなぎ融資返済金を受け取る権限を
　日本信販社員は認めている、ということに疑う余地はないと思います。
　　①、平成三年六月七日付日本信販社員相川昭彦の司法警察員に対する供述調書
　　　　「（つなぎ融資金の返済については）各顧客は平和ホームズの口座に振込むか、
　　　　　平和ホームズに支払う約束になっており、平和ホームズが当社へ融資金を経由
　　　　　して返済することになっておりました。」
　　　　「平和ホームズの担当者福岡や高沢等が第一勧業銀行高田馬場支店の小切手を持
　　　　　参し一括支払いをしておりました。」（九丁）
　　②、平成四年二月一六日付日本信販社員鈴木清博の司法警察員に対する供述調書
　　　　「顧客から、当社に返済する具体的な方法は、申込書及び契約書の中で、右下段
　　　　　に貴社指定口座という項目があります。本来ならば当社への返済ですから、当
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　　　　　時、当社で使用していた協和埼玉銀行新宿西口支店　名義人、日本信販株式会
　　　　　社　普通預金口座（口座番号＊＊＊＊＊＊）と記載されるべきものと思います
　　　　　が、平和ホームズに関しては、返済口座を第一勧業銀行高田馬場支店　名義人
　　　　　㈱平和ホームズ　当座預金口座（口座番号〇一一三五三七）になっているよう
　　　　　ですが、詳しいいきさつはわかりません。」（七丁）
　　③、平成四年六月九日付日本信販社員山崎　茂の司法警察員に対する供述調書
　　　　「平和ホームズから日本信販に対する返済方法は、銀行振出の預金小切手で行わ
　　　　　れており　神津さんという年輩の女性事務員の方が返済期日に持参していたの
　　　　　を覚えています。約定返済日近くになりますと、私の場合、期日を知らせるた
　　　　　めにファックスを平和ホームズの担当者に送る　又は　メモ書きを平和ホーム
　　　　　ズに持参するという方法で、平和ホームズの担当者に連絡をしておりました。」
　　　　　（八丁）
　　④、平成四年六月二五日付日本信販社員大島千寛の司法警察員に対する供述調書
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　　　　「当社からの返済に関する督促等についても、電話　又は　直接、平和ホームズ
　　　　　に行き、高沢部長に行なっておりました。」（十一丁）
　　　　「（平成二年十一月十九日に日本信販が新規つなぎ融資を停止した後の措置につ
　　　　　いて）さし迫っている　一二月二七日返済期限の九件分について　今月二七日
　　　　　の返済は九件ありますが　二七日にこだわらずに公庫から入金があり次第、返
　　　　　却して下さい。二七日の期限は、厳守する様にお願いします。等と申し向けた
　　　　　のです。」（十六丁）
　　　　「（平成二年十二月二七日の返済分が返済できなかった直後の話）当然、工事が
　　　　　完成しなければ、公庫等からもお金が下りない訳で、それによって当社も、平
　　　　　和ホームズから返済を受けられなくなってしまった訳なのです。」（十八丁）
　　そして、顧客と日本信販との契約書上も、顧客がつなぎ融資金の返済をする場合は、
　日本信販の取扱店である平和ホームズの銀行口座に返済するように日本信販自体が指定
　している（その後、平和ホームズが約定返済日に日本信販に返済する）のですから、平
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　和ホームズは、日本信販に代わって、顧客からのつなぎ融資返済金を受け取る権限を与
　えられている、と解するのが、素人にも理解できる、ごく普通の解釈だと思います。
　　さらに言えば、個人住宅建築にかかわった者なら誰でも知っている、動かし難い事実
　があります（しかし、本件事案では、その事実が殊更に歪められたり、不問に付された
　りしています）。それは、住宅金融公庫の融資金は、建物の上棟検査後に中間金の交付
　を受けられる（金利が安いから多くの人は交付を受ける）という事実と、年金融資を受
　ける場合は、融資の実行が住宅金融公庫融資の残金部分の実行よりも若干遅くなる、と
　いう事実です。従って、日本信販と平和ホームズの間では、公庫の中間金、残金、年金
　融資金の実行の度毎に返済手続きをとるのではなく、融資金の実行の有無に拘わらず、
　毎月の約定返済日に期日到来分を返済する、という手続きを定型的に反復継続させてい
　たのです。このような事情は、日本信販がつなぎ融資を実行する際にも生じております。
　顧客は、建築請負代金の支払いを、契約時、着工時、上棟時、完成引渡時にそれぞれ支
　払えばよいにも拘わらず、日本信販のつなぎ融資は、一括して直接に平和ホームズに振
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　り込み送金する契約になっていたのです。これらの点で、マンションや建売住宅の売買
　の際に買主が利用するつなぎ融資とは性格を自ずと異にしているのです。平和ホームズ
　が、一括して直接融資金を受領し、約定返済期日には、その月返済分を一括して返済し
　ていた事実、そして、それを定型的に反復継続していた事実については、司法警察員の
　捜査報告書を図表化して、私の一審「陳述書」に添付していますので、ご覧いただけば
　（平和ホームズの業務がルーズであった恥ずかしい事実とともに）、明らかになるはず
　です。
　　以上申し上げた客観的事実からしても、日本信販が、平和ホームズに顧客からのつな
　ぎ融資金の返済を受け取る権限を与えていた、と理解する他はないと考えます。
　　重ねて申し上げれば、実際の手続きも、顧客からのつなぎ融資返済金を平和ホームズ
　が受領し、約定返済日に、平和ホームズが日本信販にその月返済分を一括返済していた
　のだし、契約書上も、そのように規定されていたのです。平和ホームズに受領権限があ
　ったことは疑う余地がない、と思います。
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三、共謀の成立に関する事実認定については、一・二審判決の理由不備及び判断遺脱に対
　する被告・弁護側の批判を無視している
　　なお書き後半部分の、共謀の成立に関する事実認定については、判断の根拠が示され
　ていないので、推測するしかありませんが、一・二審判決の理由不備及び判断遺脱に対
　する被告・弁護側の批判を無視した判断である、と思います。

　　まず、昭和六十三年一月の「包括的な共謀」の有無についてですが、一・二審判決は、
　次のような被告・弁護側の検察官主張への批判に対して、判断を遺脱しています。
　①、いわゆる「二重ローン」の提案者とされている高澤正比古さんの同月の「入金予定
　　表」を見れば、その資料を使って共謀したとする検察官の主張は成立しないことは明
　　白です。
　②、検察側主張に沿って供述する者の供述は、共謀の場への出席者として、倒産時には
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　　退職していたが昭和六十三年一月当時は、会社でナンバーツーの地位にあった大森専
　　務の名を欠いており、不自然です。
　③、昭和六十三年は、会社は上り調子であって（この点は、日本信販社員相川昭彦の供
　　述調書でも明らか）、昭和六十三年七月に完成した住宅展示場のモデルハウス二棟の
　　建築資金八千万円強を自己資金で賄っており、検察官が主張するような、財務状況で
　　はありません。
　④、昭和六十三年五月から十一月までの間の財務担当者は、三宅千尋であり、その間に、
　　八月と十一月の二度、大きな資金繰りミスを犯していますが、その際、その資金繰り
　　ミスの対策のために、いわゆる「二重ローン」は行っていません。（当時、つなぎ融
　　資は会社の借入だとの認識があったので、積極的につなぎ融資の借り替えを行うとい
　　う考えは当時の財務担当者にはなかった。なお、検察官と一・二審裁判官は、つなぎ
　　融資の借り替えといわゆる「二重ローン」の区別を明確にせず、全ての借り替えをい
　　わゆる「二重ローン」であるとしているが、これは、客観的事実を無視した暴論。後
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　　に再説明します。）
　⑤、私は、昭和六十三年夏頃から、企業提携の構想を公表し、平成元年五月には、住友
　　銀行に大企業との資本・業務提携を正式に依頼し、同年九月には、住友林業との提携
　　交渉が具体化し始めています（同年十月に、社内に反対運動が起こり、翌年には反社
　　長派が多数派となり、経営の実権を握り、提携は挫折した）。このような事実といわ
　　ゆる「二重ローン」詐欺とは整合しません（なお、これらに関する資料は、捜査官は
　　所持していましたが、検察官から物的証拠として開示されていませんので、私が入手
　　次第提出します）。

　　次に、本件起訴に至る「個別の共謀」の有無についてですが、これについても、一・
　二審判決は、次のような被告・弁護側の検察官主張への批判に対して、判断を遺脱して
　います。
　①、私は、会社で使用されていた「ダブル」という言葉が、すなわち、いわゆる「二重
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　　ローン」を意味しない、という問題点を一審での「陳述書」で指摘しています。
　　しかしながら、この指摘を無視して、原審判決においても依然として、あたかも当然
　　のように「ダブル（二重ローン）」と記述して（一二頁）、二つの言葉を同一のもの
　　と前提して議論を展開するという論理のまやかしがあります。
　　　同じ問題点は、弁護人がつなぎ融資の付け換えの必要を指摘しておりますが、これ
　　についても、判断が遺脱されております。
　　　これらの問題点が、正当に検討されたならば、そもそもいわゆる「二重ローン」共
　　謀の有無という争点そのものが自ずと霧消するものです。
　②、「資金繰り会議」の存在とその内容等、及び、反社長集団である経営委員会の存在
　　（その期間）と行使した権限等についての、各検察側証人の証言及び供述調書の内容
　　（いずれも、私らが逮捕された後のものばかり）の信用性については、すでに弁護人
　　が批判しているところですが、ここでは、とくに、第二審で証拠採用されたものの、
　　判決では一顧だにされなかった経営委員会派の代表脇山功三の入金予定表があって、
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　　その存在と脇山功三の証言は全く符合しない、という事実を指摘しておきたいと思い
　　ます。
　③、本件起訴に係る「個別の共謀」の検討資料と認定されている、鎌田次朗作成の「資
　　金繰り表」に私の書き込みがあったという事実が「共謀」の存在の根拠とされていま
　　すが（書き込みの事実については、私は否定していません）、そもそも、その「資金
　　繰り表」でもって会社の「資金繰り会議」を毎月三回から五回行っていたという認定
　　そのものが、常軌を逸しています。もう一度、常識の目でご覧いただきたい、と思い
　　ます。
　④、平成二年三月頃に反社長の経営委員会派グループが公然化してから平成二年一二月
　　末に脇山功三ら経営委員会派の社員が集団退職するまでの間に、私が、経営委員会派
　　の会社組織とは別に営業社員等を採用して営業活動をしており、それらの契約書等は、
　　経営委員会派のものとは別のものであった、という事実は、一審の法廷で、争い無く
　　確認されております。
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　⑤、平成二年三月頃に反社長の経営委員会派グループが公然化してから後、経営委員会
　　派グループの（会社外部から見れば、平和ホームズそのものの）財務とは別途に私が
　　資金口座を持っていたという事実は、検察側重要証人であり、当時の平和ホームズ財
　　務担当者であった鎌田次朗も、一審の法廷で認めており、争いがありません。それで
　　もなお、経営委員会派の鎌田次朗と私が、平和ホームズの資金繰りを共同して行って
　　いたと認定するためには、少なくとも、私が管理していた別口座の出入りが鎌田次朗
　　の作成した「資金繰り表」に会社資金の出入りとして記載されているかどうかの確認
　　が必要ですし、もしその事実がないとすると、私の管理していた別口座が何故に会社
　　の資金繰りに反映されていないのかの合理的な説明が必要なことは、あえて論ずるま
　　でもない、と思います。
　　　なお、この別口座の通帳の発見に努めておりますが、まだ、発見できません。なに
　　しろ、本件事案の捜査が、予断・偏見の下で行われているために、肝心の書類がゴミ
　　となって放置されていました。私が、それらをほとんど全て引き取った（二トントラ
－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－18－
　　ックで四台分）ものの、書類証拠物の発見に手間取っているのです。
　　　この別口座存在の痕跡は、司法警察員の捜査書類（第一勧業銀行の預金取引関係の
　　もの）の中に、明らかに、紛れるようにして存在しています。

四、「決定」は、裁判所を批判する者に対する報復ではないか
　私が二審の訴訟指揮を批判して、訴訟記録をインターネットのホームページに掲載した
たことに対しては、弁護人を呼びつけてクレームをつけたのに、弁護人と私が上告趣意書
の補充書を提出するからそれに配慮して欲しい、と上告趣意書で申し上げていたのに、そ
れを無視して突然決定を下すとは、司法権力を批判する者に対する報復ではないでしょう
か。
　裁判批判の内容が不正・不当ではなく、その手続きも検察官や裁判官に対して不意打ち
を食らわすものでもなく合理的であれば、国民がインターネットを通じて意見を表明する
ことは、健全な社会の発展にとって有益であり、非難される性質のものではない、と考え
－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－19－
ます。どうか、新しい時代における、国民の意思表示の手段だと考えて、受容していただ
きたい、と心からお願い申し上げます。


第三、おわりに

　これまで、検察官の起訴の内容について、検察官自身が提出した物的証拠のうえからも、
検察官が主張されるような公訴事実は証明できていません。すでに、ご承知のことと思い
ますが、上記で指摘した事実の他にも、公訴事実のうち、
　①、「平和ホームズの日本信販の枠がいっばいになり、新規の客の枠が取れないので、
　　日本信販から受けている融資を東芝総合ファイナンスに借り換えて欲しい。日本信販
　　への返済は当社経由で行うことになっているので、東芝議合ファィナンスからの借入
　　金は当社のロ座に振り込んで下さい。」などと嘘を言い、同人をその旨誤信させ云々
－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－20－
、　　という部分の主張、認定については、検察官（控訴趣意書に対する答弁書）、二審
判　　決は事実上取り下げています。何故なら、それは事実だからです。
　②、「（東芝総合ファイナンスから借り替えた）その金であなたが日本信販から借りた
　　分は直ちに返済します。」という部分の「直ちに」という言葉は、供述調書を時間の
　　流れに沿って読むと、平成三年には、「必ず」「責任を持って」となっており、平成
　　四年になってはじめて、しかも、ウンザリするほど強調されて出てくる言葉です。捜
　　査官が犯罪を作り上げる目的に合わせて、それらの言葉に置き換えた疑いが極めて濃
　　厚だと思います。
　　　この点に関する弁護人の指摘に対しては、二審の裁判官は、全くの不問。判断を遺
　　脱しております
　以上①②の点からすると、公訴事実のうち、顧客を騙したという部分については、相当
程度合理的な疑いがある、と言わざるを得ません。
　また、起訴状は「資金繰りに窮したことから」という風に「犯罪の動機」を説明し、そ
－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－21－
の証拠として、司法警察員の捜査報告書を提出しております。これに対して、弁護側は、
いわゆる「二重ローン」で稼がなければならない程度の資金なら、所有不動産を売却すれ
ば充分だったとの客観的事実を指摘していますが、一審判決は、その捜査報告書の内容を
根拠に退けています。しかし、それが無責任極まりない認定である事実を、弁護人が控訴
趣意書で指摘しています。しかしながら、その指摘に対する、根拠を示した誠意ある応答
が検察官、二審裁判官からは得られておりません。
　二審判決は、「関係証拠によれば、同社は、昭和五八年ころから役員等幹部に対する給
料の遅配がみられ云々」として、資金繰り等財政的に逼迫していたと認定しますが、私に
は、まず、そのような関係証拠が何処にあるのか、いまだに発見できておりません。多分、
誰かが供述しているのだと思いますが、仮に、誰かがそのような供述をしたとしても、検
察側証人として出廷した福岡正芳が、昭和六一年には、宇都宮の等価交換マンションで三
億円の利益を挙げたことを証言しており、その利益額は、当時の会社規模からすれば売上
高の一割を超え、仮にそれまで財政的に逼迫していたとしてもそれを解消出来る金額でし
－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－22－
た。従って、この事実を考慮しない判決は理由に問題があると言わざるを得ません。

　最後に、私は、この異議申し立ての制度を知りませんでした。そのために、準備が決定
的に遅れました。したがって、この申立書は、かなり大雑把なものになっていると思いま
す。法の不知は救済されないのかもしれませんが、専門家でさえも知らない人がいる制度
だ、という事情を汲んで、どうか、この申立書の趣意のみを読みとっていただきたい、と
心からお願い申し上げる次第です。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　以上



－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－23－

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