冒 頭 陳 述 書 の 補 充 書
(注1)以下は、弁護人の冒頭陳述書の補充書('94.12.20付)です。
しかし、一頁の行数、一行の文字数は原本と同じにしています。
なお、−−−−−は頁の変更箇所を示しています。
(注2)この段階では、弁護人は、まだ、「二重ローン」犯罪の存在を
否定していませんでした。その点ご留意下さい。
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平成四年(刑わ)第一三九四号、同一五二五号、同第一七六三号事件
冒 頭 陳 述 書 の 補 充 書
被 告 人 三 宅 喜 一 郎
一九九四年一二月二〇日
右 弁 護 人 橋 本 佳 子
同 金 井 克 仁
東 京 地 方 裁 判 所
刑 事 第 一 一 部 御 中
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一「つなぎローン」の会社での位置づけ
1 そもそも「つなぎローン」が会社に導入された時期から、「つなぎローン」に
ついては、契約上は顧客がローン会社からつなぎローンを借入れた上で融資金が
会社に支払われるものであったが、ローン担当者等の間では会社がローン会社か
ら借入れたという意識を持っていた。会社の借入金と意識していたのである。
そのために、「つなぎローン」(二重つなぎローンも含む)は会社の財務・経
理の資料上も会社の「借入」と表示され、その支払利息も顧客ではなく会社が支
払うなどしていた。
2 このようにローン担当者及び高澤正比古等はつなぎローン自体を会社の借入金
と理解していたから、「二重つなぎローン」も顧客を騙してローン金を騙取しよ
うとしたものでなく、会社の借入のため、つまりに「会社の資金繰り」のために
処理したものであった。
3 以上の事実から、弁護人らが当初「弁論更新に際しての冒頭陳述書」において、
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「資金繰会議」があったと証言した福岡正芳の証言の信憑性を批判するにあたっ
ての主張を一部撤回する。すなわち弁護人らは右福岡に対して「ローン担当課長
として、同人が「二重ローン」による資金繰を発見し、その後起訴はされないが
当初の詐欺行為をはたらいた張本人なのである」と主張した(七頁)が、右主張
のうち「起訴はされないが当初の詐欺行為をはたらいた張本人なのである」との
主張を撤回する。
二「つなぎローン」について被告人が理解していた意味
1「つなぎローン」について被告人は資金繰目的である意識はなかった
前回の冒頭陳述書で述べたとおり、会社においては資金繰りを目的とした会議
(検察官の言う資金繰会議)は開かれていなかったのであるから、そもそも同会
議で会社資金繰りに利用するために「つなぎローン」を行っているという報告は
あるはずもない。
2 また前回の冒頭陳述書で述べたとおり、つなぎ融資の手続きはすべて財務及び
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ローン担当が行っていた。何らかの会議とは別の機会であっても、被告人に対し
てローン担当者等からは「つなぎローン」について詳細な報告があったこともな
い。被告人は「つなぎローン」が資金繰りのために行われていたという認識は全
く持っていなかった。
4 こうした事実から、被告人は当初、つなぎローン(二重つなぎローンも含む)
が会社の財務・経理の資料上も会社の「借入」と表示され、その支払利息も顧客
ではなく会社が支払っていることは知らなかった。
なお被告人が、こうしたつなぎローンが会社の財務・経理上「借入」とされ、
その支払利息も顧客ではなく会社が支払っていることを知ったのは、平成元年に
なってからのことである。そして被告人の指示もあり、その後つなぎローンは会
社の財務・経理上「前受金」と表示されるようになった。
5 被告人が「二重つなぎローン」を「つなぎローンの切替え」と理解していた点
は、前回の冒頭陳述書で詳述したとおりである。
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