告訴人麻生英夫の検察調書(H4.10.08)

(注1)以下は、平成4年10月8日に、検察官が作成した告訴人麻生英夫の供
   述調書です。但し、縦書きを横書きに直しています。
   −−−は、用紙の変わり目、右端の数字は丁数です。各丁(頁)の行数、
   一行の文字数、字下げ等の体裁は原本と同じです。
(注2)着色強調文字の部分は、下記のような問題がある箇所です。
   赤字部分は、告訴人側が以前の供述を変更した箇所。
   黄字部分は、客観的事実と異なる箇所。及び、告訴人側が自らの不始
    末や不正の責任を被告人側に転嫁しようとしている関係箇所。
   緑字部分は、話の元は事実であり、二審では、検察官、裁判官がその
    部分に関する主張、認定を取り下げている箇所。
   青色部分は、検察官、裁判官がその部分と不整合な又は矛盾した主張、
    認定をしている箇所。
              平成10年2月25日  被告人 三宅喜一郎


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         供  述  調  書
  住 居 千葉県八街市みどり台*丁目**番地*
  職 業 会社員      電話   局   番
      氏  名        麻  生   英  夫
              昭和三二年*月**日生(三五歳)
右の者は平成四年一〇月 八日、東京地方検察庁において本職に対
し、任意次のとおり供述した。
一    私は、私の所有する千葉県八街市みどり台*丁目**番
    地* ( 現在の住居表示 ) の土地に家を新築する計画を立
    て、平成ニ年ニ月一八日、株式会社平和ホームズ (代表取
    締役三宅喜一郎) との間で、請負代金一、七三五万円で建
    物建築エ事請負仮契約を締結しました。
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     この仮契約には
          建物引渡日までに交付されていない融資金に
          ついては、平和ホームズが提携する「つなぎ
          融資」を利用して建物引渡し日までに請負代
          金全額を平和ホームズに支払う
    旨の特約が付いていました。
     「つなぎ融資」というのは、住宅金融公庫等の公的金融
    機関から低利の融資を受けるとするとエ事完成後でなけれ
    ば融資が受けられないので、公的融資金が実行されるまで
    の間、一時的に他の金融機関から融資を受けて、その金で
    請負代金を支払い、後日住宅金融公庫等から融資が受けら
    れたときに、その金で返済するというもので、私はこの旨
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    の説明を平和ホームズの清水宏悦から受けました。
     私は、清水を信用していたので、清水から勧められるま
    ま、住宅金融公庫から一、〇九〇万円の融資を受ける手続
    をとった上、平和ホームズとの間で本契約を締結する前で
    したが、平成二年六月二六日、その公的融資金一、〇九〇
    万円について日本信販に対し、つなぎローン契約を申し込
    みました。
     なお、利率は年八・六パーセントでした。
     日本信販からは、六月二九日付けで、利息と手数料を差
    し引いた残額の一〇、四〇万四、二五三円が平和ホームズ
    の口座に振り込まれました。
     私は、その後の平成二年七月二六日に、平和ホームズと
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    の間で請負代金一、八四九万一、〇〇〇円で建物工事請負
    本契約を締結しました。
二    その後、平成二年の九月二二日に、清水が電話を架けて
    きて、
          日本信販からの融資枠が一杯になったので麻
          生さんは東芝総合ファイナンスから借り替え
          る手続をして下さい
          東芝総合ファイナンスは電気の東芝系の融資
          会社なので信用できます
          麻生さんのエ期はまだ期間があるのでエ期の
          早い人に日本信販の枠を優先したいのです
          借り替えの手続は全部当社でやります
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    等と言ったのです。
     私は、
          変な話をするな
    と思いましたので、清水に、
          どうして借り替えるのですか
          私の方はそんなことをする必要はありません
    等と言ったところ、清水は、
          他の人の融資枠を確保するための借り替えの
          手続です
          東芝に借り替えたつなぎ融資一、〇九〇万円
          は、住宅金融公庫の融資が出たときに確実に
          返済してくれれば、借り替えに必要な費用は
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          すペて平和ホームズで負担します
          東芝から借り替えた融資金はすぐそのまま日
          本信販に返済しますし、その手続はすベて当
          社でやりますからお願いします
    等と説明しました。
     私は、借り替えに必要な手数料等の費用を平和ホームズ
    が負担してくれ、更に、東芝総合ファイナンスから借りた
    金をそのまますぐに日本信販に返済してくれくれるのであ
    れば。別に私が損をすることもないので、借り替えに応じ
    ても良いと思い、借り替えの話を了承しました。
     そして、清水が市役所まで車で妻を送り迎えするという
    ので、印鑑証明書、住民票及び課税証明書を連休明けの九
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    月二五日に用意する約束をしました。
     なお、この時の電話で、清水から
          東芝総合ファイナンスとの契約では土地の権
          利証を預けることになります
    などと言われたことが気に掛かっていたので、九月ニ五日
    に妻に、その理由を聞かせたところ、妻は
          清水さんは「権利書が必要なのが普通で、日
          本信販が異例なんです。」と言っていたわ
          それから「明日にも常務の鎌田がご主人の会
          社に行きますので、今日市役所から取った書
          類のほかに権利証、実印、免許証を持って会
          社に行くように伝えてください。」とも言っ
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          ていたわ
    とその晩、私が家に帰ってから伝えてくれました。
     私は、妻からこの伝言を聞き、九月二六日は、権利証、
    実印、自動車運転免許証等も持って出勤しました。
     会社で仕事をしていると、平和ホームズの鎌田と名乗る
    男が電話を架けてきて、会う時間の約束等をしたのですが
    そのときに鎌田から
          借り替えの説明は担当者の清水から聞いてい
          ると思いますが、東芝総合ファイナンスから
          借り替える一、〇九〇万円は日本信販にその
          まますぐに返済します
          東芝総合ファイナンスからの借入金は、あな
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          たの口座に振り込まれます
          日本信販へは、日本信販と提携している当社
          の口座から返済することになっていますので
          東芝総合ファイナンスからの融資金は当社の
          口座に振り込んでもらいます
          これから東芝総合ファイナンスの人を連れて
          行きますが、東芝総合ファイナンスは日本信
          販と競争会社ですので、東芝総合ファイナン
          スの人の前では日本信販のことを口にしない
          で下さい
          そうしないと手続がスムーズに行かなくなる
          場合がありますのでよろしくお願いします
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    と言われました。
     私は、鎌田も、借り替えた融資金はすぐにそのまま日本
    信販に返済すると約束していたので、言うとおりにするこ
    とを承諾し、鎌田と東芝総合ファイナンスの人が来るのを
    待ち、鎌田と共に来社した東芝総合ファイナンスの亀海と
    いう男との間で一、〇九〇万円の借り替えの手続を取りま
    した。
     しかし、清水や鎌田が「東芝総合ファイナンスから借り
    替えた金で日本信販からの融資金を返す」と言っていたこ
    とが嘘だと分かっていたら、この借替手続きには絶対に応
    じませんでした。
問 平和ホームズの鎌田らは、東芝総合ファイナンスからの融資金
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  を会社の当面の運転資金に充てて、その後、他から資金繰をし
  て、日本信販の融資金返済に充てるつもりであった旨供述して
  いますが、それでも東芝総合ファイナンスへの借り替えの依頼
  に応じなかったということですか。
答 そうです。東芝総合ファイナンスから借りた分は、そのまま直
  ちに日本信販へ返済してくれないと、私が日本信販と東芝総合
  ファイナンスから二重に借金をすることになります。そんな危
  険を冒すのはそれだけでも嫌です。それに、東芝総合ファイナ
  ンスからの融資金を日本信販に直ちに返済すると客に嘘を言っ
  てまでして、二重ローンを掛けさせ、一時的にもせよ会社の資
  金繰りに充当するということは、会社の経営状態が著しく悪い
  ということだと思います。そのような経営状態であれば資金繰
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  が見込み通りに行かない危険が大きく、結局私の二重ローン状
  態が解消されないまま、私が借金を二重に返済しなければなら
  なくなったり、それが出来ずに東芝総合ファイナンスに預けた
  権利証を取られてしまうことにもなりかねません。私にはそん
  な危険を冒してまで平和ホームズの資金繰に協力する義理はあ
  りません。ですから、平和ホームズが融資金を資金繰に利用す
  ることが分かっていれば、たとえ鎌田らが後で他から資金繰を
  して日本信販に返済するつもりであったとしても、絶対に借り
  替えには応じませんでした。
問 鎌田から電話で東芝総合ファイナンスの人に、日本信販のこと
  は言わないように口止めされたことについては不審を抱きませ
  んでしたか。
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答 東芝総合ファイナンスが、日本信販と競争関係にあると言われ
  ていたので、競争会社の名前を出すことは取引上得策でないの
  だろうという程度に考えただけで、別に不審に思いませんでし
  た。
     借り替えの手続を終えると、鎌田は、
          融資金は二八日中にも麻生さんの口座に振り
          込まれますからその日のうちに平和ホームズ
          の口座に送金して下さい
    と言って帰りました。
     その後、亀海から受け取った手続費用計算書を見てみた
    ところ、金利が九・五パーセントと八・六パーセントの日
    本信販より高くなっており、七二万円余の費用が出ている
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    ことに気付いたので、妻に鎌田と連絡をとらせ、その金利
    差につき鎌田に問い合わさせたところ、鎌田は、営業がお
    客さんに説明した以上の額は負担させない旨返事をしたと
    いうことでした。
     私は営業の清水から借り替えに必要な費用はすベて平和ホー
    ムズで負担すると聞いていたので、常務の鎌田から金利等
    により、私が不利益を受けることはないと保証されたのだ
    と考え、二八日のうちに、妻に、振込手数料を差し引いた
    一〇、一七万九、二〇九円を平和ホームズの口座に振り込
    まさせました。
三    しかし、その後、平成三年一月八日ころ、会社で仕事を
    していると、日本信販の大島と名乗る男から電話で、
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          平和ホームズからの返済がまだされていない
          ので、麻生さんからも至急返済するように催
          促して下さい
    と言われ、東芝総合ファイナンスからの融資金が日本信販
    に返済されていないことを知ったのです。
     私は驚いて、その夜自宅に帰ってから鎌田に電話を架
    け、どうなっているのか問い質したのです。
     鎌田は、
          返済の手続が遅れてしまった
          至急手続を取ります
    と答えました。
     私は、このときは一応納得して電話を切りましたが、そ
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    の後日本信販の大島から連絡を受けて日本信販の村田と大
    島と会い、私のほかにも、私と同様の二重ローン詐欺の被
    害が出ていることを聞かされ、はっきりと騙されたことに
    気付いたのです。
     しかし、日本信販の村田と大島からは、日本信販の方で
    平和ホームズと話を付けるということを聞かされたので、
    私は自分自身で平和ホームズに話を付けに行くことはしま
    せんでした。
四    その後、平和ホームズは倒産してしまい、新築工事は基
    礎工事ができただけの状態で、完全に止まってしまいまし
    た。
     私は平和ホームズが倒産したことを聞き、日本信販に平
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    和ホームズとの交渉を任せきりにしておく訳にはいかない
    と思って、平和ホームズの本社に行き、専務の三宅千尋と
    面会して話をしましたが、三宅千尋ではローンの話は分か
    らないということだったので、専ら建築工事の話をしまし
    た。
     しかし、一向にらちがあかず、建築工事を進めるという
    約束もしてくれませんでした。
    私は建築工事が止まったままにもしておけないので、会
    社や私と妻の親から合わせて一、七〇〇万円を借り、長谷
    川工務店に頼んでエ事を続け、平成四年二月七日にやっと
    家屋が完成したので二月八日に入居して、現在に至ってい
    ます。
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     東芝総合ファイナンスとは調停を試みましたが不調に終
    わり現在民事訴訟が続いています。
    日本信販とは融資額の一パーセントを返済するという内容
    で和解が成立しました。
     今回の事件で、私は、多額の金銭を騙し取られ、精神的
    にも大きな打撃を受けました。
     今回の事件は平和ホームズの資金繰りのために引き起こ
    こしたということですから、その責任者の社長や鎌田らは
    許すことができません。
     厳重に処罰して下さい。
               麻 生 英 夫 (印)
右の通り録取して読み聞かせかつ、閲読させたところ誤りのないことを申し立て署名指印した
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     前 同 日
    東 京 地 方 検 察 庁
             検  事    森  隆 志 (印)
              検察事務官  菊 地  博 (印)


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