平成八年(け)第二八号 決 定 被告人 三 宅 喜 一 郎 右の者に対する詐欺被告事件について、平成八年一〇月二三 日東京高等裁判所第一一刑事部がした各裁判官忌避の申立簡易 却下決定に対し、同月二六日、弁護人らから異議の申立があっ たので、当裁判所は、次のとおり決定する。 主 丈 本件各異議の申立をいずれも棄却する。 理 由 本件各異議の申立の趣意は、主任弁護人橋本佳子、弁護人金 −1− 井克仁及び同竹内義則共同作成名義の「忌避申立却下に対する 異議申立書」と題する書面に記載されたとおりであるから、こ れを引用するが、所論は、要するに、次のようなものである。 すなわち、弁護人らは、被告人に対する詐欺被告事件について、 平成八年一〇月一八日、東京高等裁判所第一一刑事部裁判官中 山善房、同鈴木勝利及び同岡部信也を不公平な裁判をする虞が あるとして忌避する旨の申立をしたところ、原裁判所は、本件 各忌避の申立はいずれも訴訟を遅延させる目的のみでなされた ものであることが明らかであるとして簡易却下する旨の決定を した。しかし、原裁判所を構成する右裁判官らは、右被告事件 の控訴審第一回公判期日において、弁護人申請の全ての証人を −2− 採用しなかつた上、弁護人らの今後の立証を全面的に封じ込め て結審し、弁護人が出席できない判決期日を一方的に指定する など、被告人の防御権を著しく侵害する不公正な審理を行つた ものであり、不公平な裁判をする虞が明らかに存在するといわ ざるを得ないから、本件各忌避の申立を却下した原決定は誤っ ているというのである。 そこで検討すると、本件各忌避の申立は、原裁判所の証拠調 に関する決定に対する不服や、訴訟の進行に関する裁判長の訴 訟指揮権の行使などに対する不服を理由とするものであって、 忌避の制度の趣旨に照らすと、このような訴訟手続内における 審理の方法、態度などに対する不服を理由とする忌避の申立は −3− 許されないものである。してみると、右のような理由による本 件各忌避の申立は、訴訟を遅延させる目的のみでされたことが 明らかであるといわなければならず、したがって、各刑訴法二 四条一項により、本件各忌避の申立をいずれも却下した原決定 の判断は正当である。論旨はいずれも、理由がない。 よって、各同法四二八条三項、四二六条一項後段により、本 件各異議の申立をいずれも棄却することとし、主文のとおり決 定する。 平成八年一〇月三〇日 東京高等裁判所第一二刑事部 −4− 裁判長裁判官 松 本 時 夫 裁判官 岡 田 雄 一 裁判官 服 部 悟 右は謄本である 平成八年一〇月三〇日 東京高等裁判所第一二刑事部 裁判所書記官 佐 藤 裕 久 (印) −5− 最初のページに戻る。