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Chapter 15

Reproductive System 生殖器系

Chapter Concepts この章のコンセプト

15.1 Male Reproductive System 男性の生殖器系
15.2 Female Reproductive System 女性の生殖器系
15.3 Female Hormone Levels 女性のホルモン濃度
15.4 Development of Male and Female Sex Organs 男性と女性の生殖器の発達
15.5 Control of Reproduction 生殖のコントロール
15.6 Homeostasis 恒常性



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 単純明快なことであった。Leigh Anne (リー(姓?)=アンヌ(名?)) と Joe (木村 穣?(ウソ)、ジョー(名)) はカレッジを卒業し、仕事に就き、結婚した。数年後、二人は家を買った。そして、子供をつくることにした。(訳注: Leigh は男性名, Anne は女性名, Joe は男性名, 一般に first name の次に surname と考えると Leigh Anne って何なの??? Middlename か何か?)
 そこで、問題がおこったのである。
 何がしかの理由で、Leigh Anne はまるで妊娠しなかった。二年間頑張っても子供ができなかったので、夫妻は有名な不妊専門医のもとを訪れた。数種の検査をした後、医師は夫妻に様々な不妊治療法と治療薬について説明した。
 夫妻は選択枝を吟味し、試験管受精を試すことに決めた。数回通院して、その間に医師は Leigh Ann から卵を取り出し、Joeから取り出した精子と混合した。実験室で育てられた後、受精卵が出来上がり、受精卵は Leigh Anne の子宮に戻された。
 幸いに、手技は成功した。Leigh Ann の受精は正常で健常であった。今日、夫婦の間にできた3歳の子供は、家の周りを駆け巡り、家犬を馬飛びし、目に入ったものを全て口に運んでいる。時期を見計らって、Leigh Anne と Joe はもう一度試験管受精を試みるつもりだ。でも、ちょうど現在(いま)は子供を寝かせようとするところだ。




15.1 Male Reproductive System 男性生殖器系

 男性の生殖器系は Figure 15.1 と Table 15.1 に示したような器官を含んでいる。男性の性腺は、陰嚢内部に被膜に包まれて吊り下げられている一対の精巣である。
 精巣が産生する精子は、精巣上体(副睾丸)で成熟する。精巣上体は密にコイル状に巻いた管で、精巣の外側に存在する。精子が泳いで卵に辿り着くためには、精子の成熟が必要であると考えられる。左右の精巣上体は精管と接続している。精管は鼠径管と呼ばれる管を通って下降(方向的には上昇)し、腹腔に入って膀胱を迂回して、尿道に入る。精子は精巣と精管の両方に貯蔵されている。
 射精と同時に、精液とともに精子は陰茎を出る。精嚢、前立腺、尿道球腺(カウパー氏腺)は精液に分泌液を加える。一対の精嚢は膀胱の基部に位置し、どちらも精管と接続する管をもっている。前立腺は単一のドーナツ状の腺で、尿管の上部、膀胱直下の部分を取り囲んでいる。



Figure 15.1 The male reproductive system. 男性生殖器系


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老人男性では、前立腺は肥大して尿管を圧迫し、排尿痛と排尿困難を生じるようになる。前立腺肥大は医学的に治療可能である。尿道球腺は、豆粒大の器官で、前立腺の後方、尿道の両側に存在する。
 精液の構成成分のそれぞれは、特異的な機能をもっている。精子は、より酸性のpHの液体内で存在でき、乳状の外観の精液はやや酸性のpH(約7.5)である。泳動している精子はエネルギーを必要とする。精液には糖類のフルクトースが含まれていて、精子のエネルギー源になっていると思われる。精液は、プロスタグランジンも含んでいる。プロスタグランジンは子宮を収縮させる化学物質である。学者の中には、子宮収縮により卵子への精子の移動が促進されると考えている者たちがいる。

Orgasm in Males 男性のオーガズム

 陰茎(ペニス)は性交時の男性側の器官である。陰茎は長い軸と肥大した亀頭と呼ばれる先端部分をもっている。亀頭は通常、包皮(ほうひ)と呼ばれる一層の皮で被われている。環切除術は、包皮の外科的摘除であり、通常、出生直後の男児に行われる。(訳注: おっと、これはアメリカ人のジョーシキですね〜、日本人ホーケー多いケドそのままですね〜)
 膨張可能な血管腔をもった海綿状の勃起組織は陰茎の軸長全体にわたって存在している。性的にいい感じになってくると、神経活動電位がCGMP(サイクリックグアノシン一リン酸)の放出を刺激し、勃起組織は充血する。血液を排出する経路である静脈が圧迫されて、陰茎は勃起する。インポテンツは勃起組織が十分に拡張して静脈を圧迫できない際に生じる。新薬であるバイアグラはcGMPを分解する酵素を抑制して最大勃起が発生するようにする作用がある。網膜にも同様の酵素が存在するので、視覚に障害がおきることがある。(バイアグラの副作用)
 性的刺激が増強すると、精子は左右の精管から尿道に入り、各種分泌腺は精液に分泌物を加える。精液は尿道に入ると、律動的な筋収縮がおこって精液を陰茎からドピュッと噴出するのである。射精の間、膀胱括約筋が収縮して膀胱から尿が尿道に入らないようにする。(尿道は精液と尿を同時に運ぶことはないことに注目。)
 精液を陰茎から排出する収縮は男性のオーガズムの一部分である。オーガズムとは、生理学的・心理学的感覚で、性的刺激が頂点に達したときに生じる。喜びをあらわす心理学的刺激は脳に中枢があるのだが、生理学的反応は 1.生殖器官 2.生殖器官と関連した筋 3.体全体 が関与している。著名な筋収縮がおこり、収縮の後、弛緩する。
 射精と性的絶頂の後、陰茎は元のへなちょこな(勃起していない)状態に戻る。射精後、男性は特に不応期(抵抗期)と呼ばれる一時を経験する。不応期では、性的刺激によって勃起がおこらない。不応期の時間的な長さは年齢とともに長くなる。
 一回の射精で放出される精子は約3.5mlで、その中には400,000,000(4億)個以上の精子が含まれる。精子数はこれよりも低いことはあるが、そういった場合でも、精子と卵の受精は可能である。

精子は精巣でつくられ、精巣上体で成熟し、精管を通って尿道に入る。分泌腺からの分泌物を加えた後、精液は陰茎からオーガズムのときにどぴゅっと排出される。


Figure 15.2 Penis anatomy. 陰茎の解剖


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Figure 15.3 Testis and sperm. 精巣と精子

Male Gonads, the Testes 精巣、男の性腺

 精巣は男性の腹腔外の陰嚢内に存在する。精巣は発生の当初は腹腔内にあるが、胎児発育の最後の2箇月の間に陰嚢内に下降する。けれども、時には精巣が下降しないことがあり、そのまま手技により補正したり手術により外科的に治療して陰嚢内に移動させない場合には、通常は生殖不能(不妊)に陥ることになる。生殖不能とは子孫をつくることができなくなるということである。 その理由は、腹腔内の体温が生殖可能な精子の産生にとって高すぎるからである。陰嚢はぷらぷらして精巣を体と近付いたり離れたりさせながら精巣の温度を調節している。
 精巣の縦断面は、小葉と呼ばれる区画で区分されていて、それぞれの小葉は1〜3本の密に巻き付いた精細管を含んでいる(Fig. 15.3a)。

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精細管は伸ばすと約250メートルの長さの全長をもっている。精細管の断面を顕微鏡で見ると、内部には精子の産生段階である精子形成の過程が行われている細胞が詰まっていることがわかる(Fig. 15.3b)。また、支持細胞であるセルトリ細胞が存在し、精子形成に関与する細胞を養い調節している(Fig. 15.3c)。
 成熟した精子は、3つのパーツに分離することができる。頭部、中部、尾部である(Fig. 15.3d)。中部にはミトコンドリアが存在し、鞭毛をもった尾部の運動に必要なエネルギーを産生している。頭部には先体と呼ばれるキャップで被われた核が入っていて、卵に貫入するにの必要な酵素を貯蔵している。健常なヒトの男性から排出された精液は数百万もの精子を含んでいて、適度に受精がおこるようになっている。通常は一つの卵に対して、一つの精子が入るようになっている。

Hormonal Regulation in Males 男性のホルモン調節

 視床下部は精巣の性機能の最高位中枢である。というのも、視床下部は下垂体前葉を刺激して性ホルモンを分泌させるゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)を放出するからである。下垂体前葉の放出する性ホルモンは、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)の二種類である。どちらのホルモンも男女ともに存在する。男性では、FSHは精細管での精子の産生を促進させる。精細管(厳密にはセルトリ細胞)はインヒビンというホルモンの産生も行っている。
 LHは男性では、間質細胞からのテストステロンの産生をコントロールすることから間質細胞刺激ホルモン(ICSH)と呼ばれることもある。間質細胞は精細管の間の空間に見られる。そういったホルモンの全てがネガティブフィードバックの連携に関与していて、精子とテストステロンのすばらしく安定した産生をもたらしている(Fig. 15.4)。
 テストステロンは主要な男性ホルモンで、Table 15.1に列挙したような器官の正常な発達と機能に必要である。テストステロンは思春期に発達する男性の二次性徴の発生と維持をもたらしている。男性は女性よりも身長が高く、肩幅が広く、躯幹と比べて脚(あし)が長い。


Figure 15.4 Hormonal control of testes. 精巣のホルモンによる支配



男性は、大きな喉頭と長い声帯をもっているため女性と比べて声が低い。いわゆる、アダムのリンゴと呼ばれるのは喉頭の一部分で、女性よりも男性のほうが突き出ている。テストステロンの働きで男性は顔面、胸部に毛が多く、場合によっては背中のような部位にも体毛を生じる。テストステロンは毛髪線を後退させる働きがあり男性によく見られるパターンの禿げを生じる。
 テストステロンは男性の筋の顕著な発達の原因となっている。この知識を応用して、男性も女性も、テストステロンもしくはテストステロン類似ステロイドホルモンであるタンパク合成ステロイドを用いることがある。腎臓、循環系にまつわる健康問題とホルモンバランスの破壊がタンパク合成ステロイドの使用によりもたらされる。精巣は、萎縮し、他の男性と比較して女性化する。

男性の性腺は精巣であり、精子とテストステロンを産生する。テストステロンは最も重要な男性ホルモンである。



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15.2 Female Reproductive System 女性生殖器系

 女性の生殖器系には、Figure 15.5とTable 15.2に示したような器官がある。女性の性腺は一対の卵巣であり、骨盤腔上部の左右の両側に一つずつ、浅いくぼみの中に存在する。卵形成は、女性の性腺であるの産生である。卵巣はひと月に一回の割合で卵を生成する。排卵は卵が卵巣から飛び出て卵管に入る過程である。

The Genital Tract 生殖管

 卵管は、子宮管もしくはファローピウス管とも呼ばれ、子宮から卵巣へと伸びている。しかしながら、卵管は卵巣とつながっているわけではない。かわりに、卵管采(らんかんさい)と呼ばれる指状の広がった構造をもっている。卵管采は卵巣におおいかぶさって流れ込むようになっている。排卵の際に、卵巣から卵が排出されると、卵管采と卵管の内腔を被う線毛に押されて卵は卵管に入る。
 いったん卵管に入ると、卵はゆっくりと線毛の運動と卵管の筋の収縮に押し出されて子宮へと進む。卵はおよそ6〜24時間しか生存できないので受精と配偶子形成は卵管内でおこる。成熟しつつある胚は、通常、数日かかって子宮に到達し、受け入れ準備の整っている子宮の内膜に着床する。
 子宮は、厚い壁の筋でできた臓器で、洋梨を逆さまにしたような感じの形状と大きさである。通常、子宮は膀胱の上部に位置し、子宮の先端が膀胱にくっついている。卵管は子宮の上端に接続し、子宮の下端である子宮頚部は腟にほぼ直角に接続している。


Figure 15.5 The female reproductive system. 女性生殖器系


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小さな子宮の開口部は腟管へと続いている。胚の発育は、通常、子宮内でおこる。子宮は womb(子宮)とも呼ばれ、通常、5cm幅の大きさだが、広がると30cmになって発育した胎児を収容できるようになる。子宮内膜と呼ばれる組織が子宮の内腔を被い、胚そして胎児の発育の栄養を供給する胎盤の形成に関与している。子宮内膜は二層構造で、基底層と機能層でできている。妊娠していない女性では、子宮内膜の機能層は月経周期と呼ばれる生殖器系の周期に依存して厚さが変化する。
 子宮頚部の癌は、女性によく見られる癌である。パップ検査により早期発見が可能である。パップ検査では数個の細胞を頚管から採取し、検鏡する。細胞に癌の所見が認められれば、子宮摘出術をすることが薦められる。子宮摘出術は子宮の摘除であり、子宮頚部も取り除かれる。子宮とともに卵巣も摘除することを卵巣子宮摘出術と業界用語では言う。腟は温存されているので、女性は性交はし続けることが可能である。
 は背中に対して45度の角度の管である。腟を被う粘膜はひだを形成し、伸展可能である。腟が伸展可能であることは、出産の際の産道であるために重要である。腟は性交の盛り上がりに役立つ。腟がペニス(陰茎)を受け入れる時、月経の排泄物が出るときに役立つ。

External Genitals 外性器

 女性の外性器は全体をひっくるめて外陰として知られている(Fig. 15.6)。外陰には、二つの大きな恥毛に被われた皮膚のひだである大陰唇がある。大陰唇は恥丘から背側へ伸びている。恥丘は、恥毛の下の脂肪に富んだ隆起である。小陰唇は大陰唇のすぐ内側にある二つの小さなひだである。小陰唇は子宮開口部から前面に向かって伸び、環を形成し、クリトリス(陰核)にかぶさる皮膚を形成する。クリトリスは男性のペニス(陰茎)と相同な器官である。クリトリスは非常に小さいが、勃起する組織の軸をもっていて、洋梨状の形状をした亀頭がその上を被っている。陰核亀頭は感覚受容器ももっていて、性感器官としての働きをしている。
 腟前庭は大陰唇の間のくぼみで、尿道と腟の開口部がその中にある。腟は特に処女膜と呼ばれる環状の組織によって閉鎖されている。処女膜は、本来は初体験(はじめての性交、セックス、エッチ)で破爪(はか)されるものであるが、他の種類の物理的刺激によっても破壊されることもある。処女膜が性交後も存在しつづけるようであれば、外科的に破爪するのもありである。
 女性の泌尿器系と生殖器系は完全に分離している。例えば、尿管は尿のみを運ぶし、腟は産道と性交の受け入れ口としての機能だけをしている。
Orgasm in Females 女性のオーガズム

 性感は女性のほうが男性よりも敏感であり、その根拠がある。クリトリスは性感の着手特に敏感な器官であると考えられている。クリトリスは、勃起組織が充血してちょっとだけなら勃起することができる。充血は広がって暗い赤色調になった小陰唇よりも更に顕著である。膣壁の勃起組織もうっ血して拡張し、血管内圧の上昇により血管壁から搾り出された液体が腟を滑らかにする。別の潤滑成分としては、腟の両側の小陰唇の下の粘液分泌腺よりの分泌物がある。
 とりわけ外陰と腟、そして女体全体筋の緊張からの開放がおこる。亢進した腟の運動性は卵管への精子の輸送の助けとなる。女性のオーガズムは射精でイクというわけじゃないケド、性感反応には幅広いものがある。(???何、もっと詳しく書いてよ。)


毎月、卵巣で卵が産生され、卵管へ入る。受精すると、発育している過程の胚は線毛に押されて、子宮に入り、子宮で子宮内膜に着床する。産道でもある腟と外性器は女性の性反応に積極的な役割を果たしている。


Figure 15.6 External genitals of the female 女性の外性器



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Figure 15.7 Anatomy of ovary and follicle. 卵巣と濾胞の解剖。




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15.3 Female Hormone Levels 女性ホルモン濃度

 ひと月を目安として女性のホルモン濃度の周期は発生するし、卵巣周期により子宮周期が発生するということがこの章に述べられている。

The Ovarian Cycle 卵巣周期

 卵巣の縦断面を見ると、外部の皮質と内部の髄質でできていることがわかる(Fig.15.7)。皮質には多数の卵胞があり、卵胞のそれぞれには卵母細胞と呼ばれる成熟していない卵が存在することがわかる。女性は生下時にはおよそ2,000,000(2百万)もの卵胞をもっているが、その数は思春期までに 300,000〜400,00(30万〜40万)に減少する。一生のうちでわずか少数の(約400)の卵胞が成熟することができる。何故なら初経(平均12歳)から閉経(平均47歳)までの生殖活動期の女性で、ひと月あたり通常たった一つの卵しか産生されないからである。((47-12)x12=420、フムフムあっとるね) 卵母細胞は出生時に(全て)存在するので、女体の加齢とともにその中の卵母細胞も歳をとるといえる。このことは、高齢女性が遺伝傷害をもった児を出産しやすいことの根拠であるといえよう。
 卵胞が成熟していくと、一次卵胞 → 二次卵胞 → 胞状卵胞(グラーフ卵胞) の順に成熟していく(Fig. 15.7)。一次卵胞内で、一次卵母細胞は二つの細胞に分裂する。そのうちの片方は二次卵母細胞と呼ばれ、細胞質(栄養)の大部分を受け取ることになる。二次卵胞は液体が充満した腔内に二次卵母細胞が入った構造をとっている。グラーフ卵胞では、液体が充満した腔が拡大し、卵胞の壁は卵巣の表面に達するまで膨張して破裂する。すると、透き通った膜に取り囲まれた二次卵母細胞(便宜上、卵と呼ばれることも多い)が放出される。これが排卵である。卵胞は卵を放出すると、腺様の構造である黄体を形成する。もしも、卵が精子と受精して妊娠がおこらなければ、黄体は約10日後に退行変性する。
 これらの過程を卵巣周期と呼び、性腺刺激ホルモンである 1.卵胞刺激ホルモン(FSH) と 2.黄体ホルモン(LH) の支配を受けている(Fig. 15.8)。性腺刺激ホルモンの血中濃度は常に一定であるわけではなく、卵巣周期の各相に見合った量になっている。単純に言えば、卵巣周期の前半である卵胞期では、FSHが卵巣の卵胞の発育を促進し、卵胞からはエストロゲンが放出される。血中のエストロゲン濃度が増加すると、下垂体前葉からのFSHの分泌に対するネガティブフィードバック機構が働き、卵胞期は終了する。
 おそらく、血中エストロゲン濃度が増加することで、視床下部からのGnRHの大量の分泌も発生する。すると、28日周期の約14日目に下垂体前葉からのLH産生のサージ(急激な濃度の上昇)がおこる。
 卵巣周期の後半の黄体期では、LHの作用によりプロゲステロンを産生する黄体の発育が促進される。プロゲステロンの働きにより子宮内層が発達する。血中プロゲステロン濃度が上昇すると、下垂体前葉からのLHの分泌へのネガティブフィードバック機構が働き、卵巣の黄体は退行変性しはじめる。黄体期が終末に達すると月経がおこる。

一月に一つの卵胞から二次卵胞が一つ産生される。排卵すると卵胞は黄体になる。



Figure 15.8 Hormonal control of ovaries. 卵巣のホルモンコントロール


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Figure 15.9 Female hormone levels. 女性ホルモンの血中濃度


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Table 15.3 Ovarian and Uterine Cycle 卵巣と子宮の周期
Ovarian cycle
卵巣周期
Events
事象
Uterine Cycle
子宮周期
Events
事象
Follicular phase
卵胞期, 1〜13日
FSH
Follicle maturation 卵胞成熟
Estrogen
Menstruation
月経, 1〜5日
Endometrium breaks down
内膜の破壊
Proliferative phase
増殖期, 6〜13日
Endometrium rebuilds
内膜の再生
Ovulation 排卵, 14日目 LH spike LHのスパイク上昇    
Luteral phase
黄体期, 15〜28日
LH
Corpus luteum 黄体
Progesterone プロゲステロン
Secretory phase
分泌期, 15〜28日
Endometrium thickens
and glands are secretory
内膜が薄くなり、
腺から分泌

The Uterine Cycle 子宮周期

 女性の性ホルモンであるエストロゲンプロゲステロンには多数の機能がある。それらの子宮内膜へのホルモンの作用は、子宮に子宮周期として知られている周期的な一連のイベントをおこさせる(Table 15.3 and Fig. 15.9)。28日の子宮周期は以下のように分けることができる。

1〜5日目では、体内の女性ホルモン濃度は低く、子宮内膜は崩壊し血管は破裂している。子宮周期のある日、月経(mense)として知られている血液と組織が子宮から腟を通って流れ出て、月経期間の間、流出し続ける。

6〜13日目では、新しくできた卵巣内の卵胞が産生するエストロゲンの働きで、子宮内膜は肥厚し血管や腺も発達する。この期間を子宮周期の増殖期という。

28日周期のうちの14日目に排卵がおこる。

15〜28日目では、卵巣の黄体からのプロゲステロンの産生の上昇により、子宮内膜の厚さは2〜3倍(1mmだったのが2〜3mm)になり、子宮腺は成熟し、厚い粘膜の層が分泌産生される。この期間は子宮周期の分泌期と呼ばれる。子宮内膜は胚が発育するのに準備が整った状態になっている。妊娠しなければ、卵巣の黄体は退行変性し、体内の女性ホルモン濃度が低下して子宮内膜は崩壊する。

子宮周期で、子宮内膜は発達して月経期になると崩壊する。

(ンー、女性諸君は保健体育で知っていることばかりでズルイっす。)
Fertilization and Pregnancy 受精と妊娠

 受精がおこると、卵管から子宮へと移動している段階で既に胚の発育が開始している。子宮内膜は発育途中の胚を受け入れる準備が整っていて、胚は受精から数日後に子宮内膜に着床する(Fig. 15.10)。胎盤(たいばん)は母体の組織と胎児の組織が合わさってできている。胎盤は、胎児血と母体血の間で分子の物質交換がおこる場所であるが、通常は母体血と胎児血が混ざり合うことは無い(cf. 何故でしょう? 隙間の大きさの問題なンですね)。先ず、胎盤はヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)というホルモンを産生する。HCGは、胎盤自身がプロゲステロンとエストロゲンの産生を開始するまで、卵巣の黄体に機能を維持しつづけるように働きかける。プロゲステロンとエストロゲンには二つの作用がある。1.下垂体前葉を抑制して新たな卵胞が成熟しないようにする。2.子宮内膜を卵巣の黄体の働き無しで維持する。通常、妊娠期間は月経は来ない。



Figure 15.10 Implantation. 着床



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Estrogen and Progesterone エストロゲンとプロゲステロン

 エストロゲンとプロゲステロンは子宮だけでなく体の各部にも同様に働く。エストロゲンは、体毛の発達や体内の脂肪分布といった女性の二次性徴の発現に大きく関わっている。一般論として、女性は男性と比べて丸っこい外観をしていて、それは女性のほうが皮下脂肪が多いからである。男性と同様に、女性も思春期に腋毛(えきもう、わきげ)や恥毛(ちもう)が発育する。女性では恥毛の上縁は水平であるが、男性では臍(へそ)へ向かって先細っている(訳注: 様々な恥毛の生え方を研究している変質者と紙一重の学者がいる)。エストロゲンとプロゲステロンのどちらも乳房の発育に必要である。他のホルモン、つまり、プロラクチンやオキシトシンも妊娠後の母乳の産生や乳汁分泌に関与している。
 下肢帯は女性の方が男性よりも幅広で深い。そこで、骨盤腔は通常、男性のものと比べて大きい。このことは、女性の方が男性よりも腰幅が広く、大腿と膝の角度がより内股となっている。女性の骨盤は前方に傾いているので、女性はより殿部が突き出ていて、下背の弯曲(わんきょく)が男性よりも大きく、腹部が突き出ていて、X字脚(うちまた)である。
Menopause 閉経

 閉経は女性の一生のうちで、卵巣と子宮の周期が停止する期間で、45〜55歳に開始する。卵巣は下垂体前葉で産生される性腺刺激ホルモンに反応しなくなり、卵巣からエストロゲンとプロゲステロンが分泌されなくなる。閉経が開始する際、子宮周期は不整になり、月経が発生すれば依然として妊娠可能である。それ故、月経が一年間続かなければ閉経は完了したとは考えられない。
 閉経期のホルモン分泌の変化により、しばしば身体徴候が発生する。身体徴候の例として、循環動態の変化が原因の'のぼせ(hot flash)'、眩暈(めまい)、頭痛、不眠、眠気、抑うつがある。そういった症状は、穏やかであったりあらわれないこともある。重篤であれば、治療が必要となる。女性は、時に、閉経期に性交時により満たされる(イク)という。それは、副腎からのアンドロゲンの分泌が原因であることが示唆されている。

卵巣から産生されるエストロゲンとプロゲステロンは、女性の 1.一次性徴 2.子宮周期 3.二次性徴 をひきおこす性ホルモンである。



15.4 Development of Male and Female Sex Organs 男性と女性の生殖器の発達

 個体の性は受精時に決定される。男性はXとYの染色体、女性はXとXの染色体をもつ。受精してから胎内での最初の数ヶ月は、外観から胎児が男児か女児かを知ることはできない(細胞診→染色体検査ならわかる)。性腺は胎生7週までは発育を開始しない。性腺を発達させる組織は未分化であると言われている。何故なら、ホルモンの作用によって精巣にもなるし卵巣にもなるからだ。Y染色体上の遺伝子は、精巣の発育を促し、男性ホルモンを産生させ、精巣や男性ホルモンにより性の分化の方向性が決定される。
 Figure 15.11aを見ると、胎生6週目の男児と女児が同じ型の組織と管をもっていることがわかる。この相違がみられない時期には、胚は雄性にも雌性にもなれる可能性をもっている。Y染色体が存在すれば男性ホルモンが中腎管に働いて男性生殖管に変化させる。中腎管は尿道に注ぐ。尿道は男性では泌尿器系と生殖器系に属する器官である。男性ホルモンは男性での中腎傍管の発育を抑制する。
 Y染色体が存在しなくてX染色体が存在すれば、男性で精巣ができていたのと同様の相同組織から卵巣が発育する。中腎管は退行変性し、中腎傍管から子宮と子宮管が発育する。発育途中の腟が子宮から伸びてくる。女性では泌尿器系と生殖器系の間につながりはない(同じ管を共有していない)。
 14週目になると、原始精巣と原始卵巣はどちらも腹腔内の奥深くに存在する。精巣の内部を(動物から取り出した胚を用いて)調べると精子が発育し始めていて、同様に卵巣でも多数の小さな卵胞が既にできていて、卵胞の中には卵が存在する。胎児発育が最終段階に近付くと、精巣は下降して陰嚢に収まる。卵巣は腹腔内にそのまま存在する。
 Figure 15.11bには、外性器の発育を示してある。外性器を構成する組織は、発生当初はやはり男女で相同である。同じ組織から男性の性器にも女性の性器にもなることができる。胎生6週目に小さな芽(もしくは蕾(つぼみ))が下肢の間に出現し、その部分が男性では陰茎(ペニス)になり、女性では陰核(クリトリス)になる。変化はY染色体と男性ホルモンがするかどうかにより支配される。胎生9週目には、尿生殖溝と呼ばれる二本の腫大した部分の間にある溝が出現する。胎生14週目までに、男性では尿生殖溝は閉じて消失し、腫大した部分が陰嚢になる。女性では尿生殖溝は存続して、腟開口部になる。男性の陰嚢のかわりに大陰唇と小陰唇ができる。

学生教育連絡会#2
 12/5(火) PM6:00〜 at 3F病理CR
・傍聴、オブザーバーとしての参加は自由です。
長村先生の犬である学生の隠密の集まりです(ウソ)。
・長村先生と学生の間の意見交換の場です(本当)。
・まとまった学生の意見なら聞いてくれる長村先生の諮問機関です。


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15.5 Control of Reproduction 生殖のコントロール

 生殖がするかどうかの可能性を抑制したり増強したりする方法が幾つかある。避妊薬や避妊具(Contraceptive はどちらの意味も含む)は、妊娠の可能性を下げる薬物や器具である。

Birth Control Methods 避妊法

 最も確実な避妊法といえば禁欲、つまり性交しないことである。禁欲には性感染症の伝染の回避という利点もある。他の生殖コントロール法(避妊法)が Table 15.4に示してある。Tableには様々な生殖コントロール法の効果について示してある。例えば、Tableに示した中で最も効果の無い方法は、一年間に妊娠可能な女性のうち100人中70人、あるいは70%が妊娠しないで、30人が妊娠するという結果になっている。
 Figure 15.12 には最も効果があり、日常的に用いられている生殖コントロール法が示してある。
経口避妊薬(経口避妊用ピル)は、通常、エストロゲンとプロゲステロンの合剤を28日の妊娠周期のうち21日間服用することになっている。避妊用ピルに含まれるエストロゲンとプロゲステロンは下垂体からのFSHとLHの両方の産生を抑制し、卵巣で卵胞が発育しないようになる。すると、排卵はおこらなくなり、妊娠はおこりえなくなる。避妊用ピルには副作用が発生する可能性があり、常用する場合は定期的に医師の診察を受ける必要がある。
 子宮内避妊器具(IUD)は、成型したプラスチックの小片で、医師が子宮に挿入する。IUDは子宮と卵管の内部環境を変えて、受精しなくなるのだと考えられている。また、受精したとしても、着床しなくなる。Figure 15.12 に示した型のIUDは、プラスチックの周囲に銅線で囲ってある。
 避妊ペッサリー(diaphragm 子宮隔膜)は軟らかいラテックス製のカップで、可動性のあるをもっている。医師の適切な手技が必要で、ペッサリーは腟に性交のせいぜい2時間前に入れられなければならない。ペッサリーは殺精子ゼリーやクリームを併用して試用され、性交後も少なくとも6時間ほど留置しなければならない(訳注: 女性にとっては面倒くさいということですね)。cervical cap は diaphragm の小型版である。

Table 15.4 Common Birth-Control Methods 一般的な避妊法
Name
名前
Procedure
手技
Methodology
方法論
Effectiveness
成功率
Risk
危険,リスク
Abstinence
禁欲
性交を絶つ 腟に精子がない 100% なし
Vasectomy
精管切除術
精管の切除・結紮(けっさつ) 精子の無い精液 ほぼ100% 不可逆不妊
Tubal ligation
卵管結紮(けっさつ)
卵管の切除・結紮(けっさつ) 卵管に卵がない ほぼ100% 不可逆不妊
Oral contraception
経口避妊薬
毎日のホルモン製剤服用 下垂体前葉はFSHとLHを放出しない ほぼ100% 喫煙者に特に多い
血栓塞栓症
Depo-Provera injection
デポ・プロベラ注入
プロゲステロン様ステロイドを年4回注射 下垂体前葉からのFSH・LH放出の停止 約99% 乳癌?、骨粗鬆症?
Contraceptive implants
避妊薬埋め込み
プロゲスティン管を皮下に埋め込む 下垂体前葉からのFSH・LH放出の停止 90%以上 現在のところなし
Intrauterine device(IUD)
子宮内避妊具
医師がプラスチック製コイルを子宮に挿入 着床阻害 90%以上 感染症(骨盤感染症(PID))
Diaphragm
避妊ペッサリー
子宮隔膜
性交前にラテックス製カップ腟に挿入して子宮頚部を被う 精子が子宮に入るのを防ぐ ゼリー併用で90%以上 現在のところなし
Cervical cap
頚部ペッサリー
頚管越しの吸引でラテックス製カップ留置 殺精子薬を子宮頚部付近に撒布 ほぼ85% 子宮頚癌
Male condom
男性コンドーム
勃起したペニスにあった形のラテックス製の鞘(さや) 精子をコンドーム内に溜める、STDも防ぐ 約85% 現在のところなし
Female condom
女性コンドーム
腟内に収まるポリウレタン製の膜 精子が子宮に入るのを防ぐ、STDも防ぐ。 約85% 現在のところなし
Coitus interruptud
中絶性交
射精前にペニスを抜く 精子が腟に入るのを防ぐ 約75% 現在のところなし
Jellies, creams, foams
ゼリー、クリーム、フォーム
性交前に殺精子剤を挿入 大量の精子を殺傷 約75% 現在のところなし
Natural family planning
しあわせ家族計画
記録から排卵日を算出、様々な試験の方法 危険日にはやらない 約70% 現在のところなし
Douche
腟洗浄
性交後腟を洗浄 精子を洗い出す 70%以下 現在のところなし

(うへっ、日本の産婦人科の教科書より詳しいよ、こりゃぁ。)

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 男性コンドームは、薄いスキン(皮)もしくはラテックス製の鞘(さや)で、勃起した状態のペニスにフィットする。射精したものは鞘の中に溜まるので、精液は腟に入らない。殺精子剤と併用すれば、コンドーム単独のときより高い避妊効果得られる。コンドームは一般に、性感染症に対する防御効果があるとされている。
 埋め込み避妊薬は、合成プロゲステロン(プロゲスティン)を利用して、卵巣周期を阻害して排卵を抑制する。6つのマッチ棒サイズの、時間とともに壊れていくカプセルが、女性の上腕の皮下に外科的に挿入される。このシステムの効果は5年間持続する。3ヶ月毎の合成プロゲステロン製剤であるデポ・プロベラの注入(注射)は、子宮内膜の性状を変化させる。子宮内膜に変化がおこり、妊娠がおこりにくくなる。
 出生(バース)コントロールのための避妊法に関して、コンドームなどの従来の方法を見直す動きがある。何故なら、そういった方法により性感染症を防ぐこともできるからである。
女性コンドームが今日、利用可能である。女性コンドームは、可動性のある頚管にぴったりとはまる環がついた大きなポリウレタンのチューブでできている。チューブの開口部には外性器を被う輪がついている。
 研究者は長い間、'男性用ピル'を研究していた。ゴナドトロピン放出ホルモン類似物質は、視床下部の下垂体前葉への刺激を抑制する目的で使用されていた。インヒビンも下垂体前葉からのFSHの産生を抑制する目的で使用されていた。テストステロンや関連化学物質も男性の精子形成を抑制する目的で使用されてきた。テストステロンは注射のみの処方であった。
 避妊ワクチンが今日では開発されている。例えば、女性にHCGに対する抗体を産生させるワクチンが限定的な臨床試験で用いられている。HCGは、胚の着床の維持に大事なホルモンである。HCGは通常は(非妊娠時には)、生体に存在しないので、自己免疫反応はありえないし、免疫(抗体)は、時間とともに減少する。学者の中には、女性用の安全な抗精子ワクチンを開発することも可能であると信じている者もいる。




(page 332)

Health Focus

Endometriosis 子宮内膜症





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Morning-after Pills 二日酔いピル

 '二日酔いピル'という表現は、ヤバイ(避妊対策してない)性交後の妊娠を避けるための投薬を意味する。この表現は正確でない、というのもマズイ性交から1〜数日後に投薬が開始されるからである(二日酔いはゼロ日後)。
 プリベン(preven)と呼ばれるキットがあり、4錠の合成プロゲステロンピルでできている。アブナイ性交の72時間後に2錠が服用され、残りの2錠はその12時間後に服用される。薬物により正常な子宮周期が逆転し、胚が子宮内膜に着床しにくくなる。最近の研究では、なんとなくデキちゃった妊娠の85%がピル服薬で防げると考えられている。
 RU-486の通り名があるミフェプリストンは、以前には子宮内膜細胞のプロゲステロン受容体をブロックして、着床した胚を失わさせる目的で使用されていた。機能しているプロゲステロン受容体がなければ、子宮内膜は胚が付着したまま脱落(剥離)する。RU-486は子宮収縮を目的としてプロスタグランジンと結合して吸収されると、95%の成功率である。いつの日か、この薬物が '二日酔いピル' となり、月経が遅くて妊娠したか定かでないときに服用されるようになるかもしれない。

避妊したい人向けの多数の良く知られた生殖コントロール法や器具が存在する。効果は様々である。加えて、新しい方法も開発される予定である。

Infertility 不妊症

 夫婦がわざわざ不妊対策を講じるまでもない場合だってある。ガンガンやっても受精・受胎しないという場合である。アメリカ医学会は全ての夫婦の15%が子供を得ることを望んでいなくて、一時的にsterile(不妊)とくくられている。別の10%は、望んでいるだけの子供を得ることができなくて、infertile(不妊?)とくくられている。後者は、夫婦が少なくとも一年間の間、子供を授かることができないということを意味している。

Causes of Infertility 不妊の原因

 最もよく見られる女性の不妊の原因は、卵管の閉鎖と子宮内膜症である。子宮内膜症は子宮外に子宮組織が存在する病態で、卵管や腹腔臓器上が好発部位である。332頁の Health Focus で述べたように、子宮内膜症は不妊の原因となる。子宮内膜症は月経物が卵管を逆流したり、卵管から腹腔に入る際に発生する。この逆流により子宮細胞が腹腔内で発育して、通常の子宮周期を抜けて、痛みや妊娠の構造的障害となるような構造的な異常を生じるようになる。
 不妊の原因の治療は医学的治療の介入により是正され、夫婦は子供を得られるようになる(Fig. 15.13)。(卵管などの)閉塞物がなくて、母体の体重が正常であれば、HCGやゴナドトロピンの投与が選択可能である。HCGは妊娠女性の尿から抽出された物質で、ゴナドトロピンは閉経後の女性の尿から抽出される。この治療法を行うと、複数の排卵がおこったり、重複妊娠がおこったりすることがある。
 男性側の不妊の原因の原因としては、精子数が少なかったり異常精子の割合が多いことが挙げられる。疾病、放射線、変異原性化学物質、精巣温度の上昇、向精神薬の使用が原因で男性不妊に陥る。
 生殖が通常の方法では不可能な場合、多くの夫婦は養子を迎える。別の夫婦には、以下の段落で述べるような代替生殖法を最初に試みることがある。全ての代替生殖法について考えれば、児をえる際には5種類の親を想定することができる。(1) 精子ドナー、(2) 卵ドナー、(3) 代理母、(4) 養母、(5) 養父。

Alternative Methods of Reproduction 代替生殖法

Artificial Insemination by Donor(AD) ドナーによる人工授精
 人工授精の間、精子は医師により腟に注入される。精子は、夫のものが母体に注入されることもある。このような手順は、夫の精子の数が少ない場合に特に有効である。精子は時間をかけて集められ、濃縮されて受精に十分なだけの精子数にされる。しばしば、母親とは完全に別人の男性のドナーから取り出した精子により受精を受ける。場合によっては、夫とドナーの精子を混和したものが用いられることもある。
 AIDのバリエーションとして子宮内受精(IUI)がある。IUIでは、卵巣をホルモンで刺激して、ドナーの精子を腟ではなくて子宮に注入する。

In Vitro Fertilization (IVF) 試験管(体外)受精
 IVFでは、受精は試験管内でおこる。新型の超音波マシンでは、卵巣内の未熟な卵をもった卵胞を表示することができる。それ故、最新の方法では、受精薬を投与せずに、針を用いて卵を取り出す。取り出した未成熟卵はガラス器に入れられて濃縮された男性の精子が加えられる。約2〜4日後、胚は子宮周期が分泌期の女性の子宮内に挿入される。着床が成功すれば、発育は正常に続き、出産予定日に達する。


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Gamete Intrafallopian Transfer (GIFT) 配偶子卵管内移植法

 gamete 配偶子という語は精子か卵のどちらかの性細胞を意味する。配偶子卵管内移植(GIFT)は、試験管受精の低い成功率(15〜20%)を克服するために開発された。この方法は正確には、精子と卵が混和された後すぐに卵管に注入される以外は、まるで試験管受精と同じである。GIFTは女性にとって侵襲が一度きりであるという利点がある。卵の取り出しと再注入は全て同じ手術の時に行われる。この理由で、費用も安価である。およそ、$1,500である、試験管受精が$3,000であるのに対して。

Surrogate Mothers 代理母

 場合によっては、金を払って女性子供を産んでもらうこともある。そういった母親は代理母と呼ばれる。この場合は、代理母とは別の精子や卵が受精に用いられる。

不妊治療が失敗したら、代替生殖法が選択可能である。





15.6 Homeostasis 恒常性

 性ホルモンの血中濃度は恒常性のコントロールの一例である。Figure 15.4には血中テストステロン濃度が維持される様子が示してある。Figure 15.8には血中エストロゲン/プロゲステロン濃度が正常域に保たれる様子が示してある。ネガティブフィードバックにより、血中ホルモン濃度が適度に保たれるような自己調節機構が働く。
 次の頁には生殖器系が体の他の系とともに働いて、恒常性を維持している様子が示してある。性ホルモンに関する我々の大部分の知識は、生殖器の成熟や二次的に分泌される性ホルモンの濃度の維持といったことである。そういった機能は恒常性に関わっているに違いないというと大袈裟かもしれない。何故か? 恒常性は常に細胞の内部環境と関わっている必要があるからである。では、関わっていないかといえば、そうではなくて、性ホルモンの働きの中には、恒常性に関わっているものもあるのである。例えば、エストロゲンは脂肪沈着を促進する。脂肪組織は飢餓状態でのエネルギー源になるし、清浄体温の維持に役立つ。
 最近、エストロゲンの生殖器や女性の性徴以外への作用として恒常性の維持に必要な臓器である 1.肝臓、2.骨、3.腎臓への作用もあることが発見された。エストロゲンの作用により肝臓は、血中の物質を輸送する多くの種類のタンパクを産生する。そのタンパクの中には鉄や銅を結合するタンパクやコレステロールと結合するリポタンパクが含まれる。鉄と銅は、細胞代謝に必要な酵素の補因子である。コレステロールと心血管系の疾患との関連を考えると、コレステロールは形質膜の機能に影響する物質である。エストロゲンは骨基質のタンパクの合成も誘導し、骨量の減少をくい止める。閉経期には、エストロゲン分泌の割合は激減し、骨粗鬆症(骨密度の減少)になる。
 同様に、アンドロゲンの生殖器や男性機能への作用とは別に、アンドロゲンには細胞内の代謝に及ぼす働きがあることがわかってきた。アンドロゲンは、骨格筋の構造タンパクや骨の合成を刺激し、肝臓と腎臓の様々な酵素の活性に関与する。腎臓では、アンドロゲンはエリスロポエチンの合成を刺激する。エリスロポエチンは骨髄に赤血球産生の増産を指示するタンパクである。我々は、エストロゲンやアンドロゲンの細胞代謝に関わる働きについてやっと知り始めたという段階である。それ故、性ホルモン恒常性全般に関する知見は限られている。

性ホルモンは我々の外観に大きく影響を及ぼす。何故なら、二次性徴を維持する働きがあるからである。二次性徴の幾つか、例えば女性での脂肪沈着は、恒常性の維持に役立っている。加えて、エストロゲンとアンドロゲンの両者とも、恒常性に関与する全身の代謝への作用があることがわかった。



Chapter 15, Reproductive System

♪ The Elixer of Immortality, Sorcerian