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かつて、Henry Heimlich 医師は多くの人が考えているのと同様に、食物や他の物質をのどにつまらせて死亡することは滅多にないことだと思っていた。が、窒息は米国の事故死の中で第六位の主要な死因であることに気付いた。一日に20人以上の人が窒息で死亡しているのだ。多くの子供が玩具や膨らませようとして破裂した風船の断片で窒息する。 Heimlich 医師は、研究を開始した。迅速な行動が必要である。何故なら、呼吸の停止は、ちょうど四分以内のうちに障害や死を招くからである。背中の叩打(こうだ)は意味をなさない、何故なら、叩打することによって閉塞している物体を、上方へ移動させて気道から核出させる代わりに、下方(奥)へと移動させて狭い気道を完全に閉塞(ブロック)させてしまうからである。Heimlich 医師は、どうすればよいかを発見した。握りこぶしを作って、別の手で掴んで、力を込めて横隔膜の上で上向に力を込めて押し込むのである。誰か他の人が後ろにいれば助けになるが、一人だけでもできる。肺から出る空気によって物体はそのつど押し出される。この手順は簡単に実行できる。写真の男性は恋人を今日ではハイムリッチ操作と呼ばれている手技で助けている。 気道と食道は咽頭で交差し、そのことが原因で食事と会話が同時にできない。食物は間違った経路に入り、気管に入り込むことがある。気道は繰り返し分岐し、径は次々に細くなり、最終的に肺胞と呼ばれる小さな気嚢になる。(page 166)肺胞に至ってガス交換がおこなわれる。食物は体内に貯蔵されるが、酸素はそうでない。そこで、身体に酸素を取り込むために呼吸をしつづけなければならない。酸素は血液内で輸送されて、全ての細胞に運ばれ、その細胞で細胞呼吸が行われる。細胞呼吸は、細胞内の共通のエネルギー担体であるATPの形でエネルギー産生を行う過程(プロセス)である。二酸化炭素は細胞呼吸の最終産物であるが、酸素とは逆向きの流れで移動する。血液は二酸化炭素を組織から呼出される場所である肺へと運ぶ。酸素と二酸化炭素が血液中を輸送される方法は興味深い。赤血球と呼吸色素のヘモグロビンが両者(O2とCO2)に関して重要な役割を果たしている。 普通に思いつくとうり、呼吸運動は脳によって支配されている。脳により肋骨の檻(おり)は自動的に上下運動を行う。呼吸運動を行う割合は調節を受けることがある。特に、血中の二酸化炭素の量によって調節を受ける。また、吸い込む空気の量と吐き出す空気の量は随意的に調節できる。恒常性は、通常、自己調節機構によって保たれているが、意識して空気の需要を見積もって呼吸の深さを上昇させることも可能である。 |
Figure 8.1 The Heimlich maneuver 若い男性は恋人がキャンディーで窒息しそうになっているのを、ハイムリッチ操作で助ける手順を示している。 |
8.1 Respiratory Tract 気道 吸息(inspiration≒inhalation)と呼息(expiration≒exhalation)の間、空気はFigure 8.2 に示したような一連の腔や管や開口部を通って肺へ入ったり肺から出たりする。 空気が気道に沿って流れると、フィルター作用を受け(異物が除去され)、(体温で)暖められ、湿気が与えられる。フィルタリングは、外鼻孔の粗毛や線毛(単数はcilium)や粘液、鼻腔の他の部分や下気道の線毛単独等によって行われる。鼻では、毛や線毛はスクリーニング・フィルター装置のような働きをする。気管やその他の気道では、線毛は上向きに拍動し、1. 粘液 や 2. 埃や 3. たまたま「道を間違えて下に向かって」溜まったものが嚥下されるか吐き出されるかの場所である咽頭に入り込んだ食物のかけら を運び出す。空気は、気管上皮の表面付近を走行する血管によって放出される熱により暖められて、気道の経路の湿った表面により湿気を与えられる。 逆に、空気は呼息の間は外に向かって流れ、冷たくなって湿気を失う。空気が冷えると、持っていた湿気を気管や鼻(鼻腔?)を被う上皮に落とし、その湿気が濃縮されて鼻が濡れることがある。空気は依然として湿気を保っていて、寒い日に呼息をすると息の湿気が濃縮して小さな雲のように(吐く息が白く)なる。
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Figure 8.2 The respiratory tract. 気道 |
Figure 8.3 The upper respiratory tract. 上気道 上気道は鼻腔、咽頭、喉頭からなる。 |
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The Nose 鼻 鼻には二つの鼻腔がある。鼻腔は狭い管で、二つの鼻腔は互いに骨と軟骨でできている中隔(鼻中隔)で隔てられている。狭い鼻腔上部の陥凹には、特殊な線毛の生えた細胞は嗅覚受容器として働く。神経は嗅覚細胞から脳へと伝わり、脳に於て嗅覚受容器から得た活動電位は嗅覚として解釈される。 涙腺は涙液を涙管(鼻涙管)を通じて鼻腔へと排出する。このことが原因で、泣くと鼻水が出るのである。鼻腔は、副鼻腔とも交通している。副鼻腔は頭蓋骨内の粘膜に被われた空気が満たされた空間である。風邪やアレルギー反応が原因の炎症がおきると、副鼻腔へと通じる管が閉塞し、粘液が蓄積して洞性頭痛(副鼻腔性頭痛?)の原因となる。 鼻腔は咽頭の上部である鼻咽頭へと注ぐ。耳管は鼻咽頭から中耳へと続いている。
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The Pharynx 咽頭 咽頭は、漏斗状の経路で、鼻腔と口腔を喉頭へと繋ぐ。それ故、通常は「のど」のことをさす咽頭は三つの部分を持つ。つまり、1. 鼻腔が軟口蓋の上に開口する鼻咽頭、2. 口腔が開口する口腔咽頭(部)、3. 喉頭に開口する咽頭喉頭(部)である。扁桃は、口腔と咽頭の接合部で防御リングを形成している。扁桃はリンパ組織なので、吸入した外来の物質から身体を守るリンパ球を含んでいる。扁桃はB細胞とT細胞を、内部の組織や液体成分に侵入するであろう抗原に対して、反応できるように準備させる働きもしている。この働きで、気道は恒常性の中では免疫系としての役割も果たしている。 咽頭では、空気の通る経路と食物の通る経路が交差する。それは、空気を受け取る喉頭が食道の腹側にあるからである。喉頭は気管の上に位置する。喉頭と気管は通常は開いていて空気が通れるようになっているが、食道は通常は閉じていて嚥下するときにのみ開く。
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The Larynx 喉頭 喉頭は、先端であるアダムの林檎が頚(くび)前面に位置するような三角形の箱のように図示することができる。アダムの林檎は男性のほうが女性よりもより隆起している。喉頭の最上部では様々に大きさが変化できる声門と呼ばれる開口部がある。食物が嚥下されると、喉頭は上向きに喉頭蓋に向かって移動する。喉頭蓋は食物が喉頭に入らないように防ぐ組織の弁である。喉頭蓋の動きは手を穏やかに喉頭の上に置き、嚥下することで触知することができる。 喉頭は、声帯を内部に持つことからvoice box(研究社の辞典には 喉頭 の口語表現として記載)と呼ばれる。声帯は、粘液を帯びた襞(ひだ)で、声門を横切って張っている弾性を持った靭体に支持されている。空気が声門を通過すると、声帯は振動し、音を発生する。思春期の時期に喉頭と声帯の発育は、男性のほうが女性よりも急速で顕著になり、男性の方がアダムの林檎の隆起が強くなって太い声を生じるようになる。若い男性では、声が「壊れる」ようになり、それは長くなった声帯をコントロールできないからである。声の変化は、男性の声を低いピッチ(調子)のものにする。 声のピッチが高いか低いかは、話したり歌ったりする際に声帯の張力を変化させることで調節されている。声帯の張力が強ければ、声門は狭くなれば、声のピッチは高くなる。声門が広がれば、声のピッチは低くなる。声の大きさ(loudness/intensity)は、振動の振幅によって変わる。つまり、声帯が振動する程度によって変化するのである。 |
The Trachea 気管 気管は、一般には windpipe(やはり気管)と呼ばれ、喉頭と主気管支を繋いでいる管である。気管は食道の腹側に位置し、C字型の軟骨輪によって開いた状態にされている。C字型のリングの開口部は食道に面していて、このことによって嚥下の時に食道が開くようになっている。気管を被う粘膜は一層の多列線毛上皮をもっている。(pseudostratified(偽重層→日本語では多列)の意味は、上皮は一見重層であるかのように見えるが、実際には全ての細胞が基底膜に接しているという意味。(Chapter3で既出)) 上皮に突出する線毛により粘液とデブリスを咽頭へ向けて掃き出すことによって肺は清潔に保たれている。喫煙により線毛が破壊され、続いてタバコ煙のすすにが肺に沈着することが知られている。喫煙については章末でより詳しく述べている。 |
The Bronchial Tree 気管支とその枝 気管は右主気管支と左主気管支に分岐して、それぞれ右肺と左肺に向かう。(bronchiの単数形はbronchus) 主気管支は、多数の二次気管支に分岐して徐々に細気管支になる。気管支の構造は気管の構造と類似しているが、気管支が分岐を繰り返していくにしたがって、その壁は薄くなり、小さな軟骨の輪は付随しなくなる。喘息の発作の際、細気管支の平滑筋の壁は収縮し、細気管支の収縮と特徴的な喘鳴が発生する。細気管支のそれぞれは最終的に多数の肺胞と呼ばれる空気のポケット或いは気嚢に被われた伸展した空間に辿り着く。肺胞は肺を構成する。 The Lungs 肺 肺は胸腔内に存在する二つの錐体形の臓器である。右肺は上中下の三つの葉(よう)をもっている。左肺は上下の二つの葉をもっていて、体の左側にある心臓の場所を空けている。肺の葉は更に小葉に分けられる。小葉のそれぞれには細気管支が張り巡らされていて多くの肺胞を養っている。左右の肺は胸腔内で心臓の両側に位置する。両肺の基部(底面)は、幅広で凹んでいて、凸状の表面をもつ横隔膜にフィットする。肺の別の表面は、胸腔内で肋骨と横隔膜の作る曲面をなぞっている。 |
The Alveoli 肺胞(単数形: alveolus) 肺胞嚢のそれぞれは単層扁平上皮が毛細血管で取り囲まれたものでできている。ガス交換は、肺胞内の空気 と 毛細血管内の血液 の間でおこる。酸素は肺胞壁から浸潤して血流に入り、一方で二酸化炭素は血流から浸潤して肺胞壁を通って胚胞へ拡散する。 ヒトの肺の肺胞は表面をサーファクタントで被われている。サーファクタントはリポプロテインのフィルムで、表面張力を下げて肺胞が閉じないようにしている。新生児、とりわけ未熟児の肺は、このサーファクタントのフィルムを欠いている(サーファクタントが十分に分泌されていない)のが原因で、肺が潰れることがある。この状態を新生児呼吸窮迫症候群といい、現在ではサーファクタント交換(補充)療法によって治療されている。 (ヒトの肺には)おおよそ3億個もの肺胞があり、全体の断面積(表面積)は、50〜70m2になる。この広さは、典型的な教室の広さであり、皮膚の表面積の少なくとも40倍の広さである。空気の入った多くの部分の空間があるので、肺は軽い。通常、肺の組織のひとかけを水の入ったグラスに落とすと浮く。
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ガス交換に用いられる空気は 1. 気道の死腔 と 2. 肺の残気量 を除いたものである。 |
Ecology Focus Photochemical Smog Can Kill 光化学スモッグは殺人スモッグになりうる。 skip |
胸膜は肺を被い、胸腔を裏打ちしている。胸膜間圧は環境圧(気圧)よりも低い(陰圧である)。 |
Inspiration 吸息 呼吸中枢は脳の延髄に位置する。呼吸中枢は、ニューロンの集合であり、自動的で律動的な電位を発して吸息を刺激する。二酸化炭素と水素イオンは、呼吸中枢の活動性を直接刺激する主要な刺激となるる。呼吸中枢は低酸素濃度の影響は受けない。頚動脈の頚動脈小体と、大動脈の大動脈小体に存在する化学受容体は、血中の 1. 水素イオン濃度と二酸化炭素濃度の上昇 と 2.酸素濃度の低下 を検出する。水素イオンと二酸化炭素濃度の上昇がおこると、化学受容体を持つ小体は呼吸中枢と連絡し、呼吸の回数と深さが上昇する。 呼吸中枢は、神経を通じて刺激を横隔膜と肋間筋へと送り出す。弛緩した状態では、横隔膜はドーム状であるが、刺激が伝わると、横隔膜は収縮して低下する。外肋間筋も収縮して、胸郭は上外側へ向かって偏移する。このとき、胸腔の容積は増大していて、肺は拡張している。肺が拡張すると、広がった肺胞内の圧は低下し、口や鼻から空気が流入する。 吸息は、呼吸の中では活発な相である。吸息相では、横隔膜と肋間筋は収縮して胸腔内圧は低下し、肺は拡張し、空気が急速に流入する。空気が流入するのは、肺が既に開いているからであり、空気が肺を押し広げるのではないことを覚えておきたい。このことは、陰圧によるヒトの呼吸と言われることがある原因である。肺胞での部分的な吸引があれば、空気は肺へ流入するようになる。 |
(page 173) Expiration 呼息 呼吸中枢が神経電位を横隔膜と肋骨郭へと送るのを停止すると、横隔膜は弛緩して元のドーム状の形状に戻る。腹腔内臓器は横隔膜を押すように上昇し、肋骨郭は下方内側へと偏移する。この時、弾性をもっている肺は元に戻り、空気は押し出される。呼吸中枢は律動的に、通常の呼吸数と呼吸量の呼吸が行われるように働く。もしも、普通よりも多く吸息するようになれば、肺はぱんぱんに拡がって肺胞は引き伸ばされてしまう。そうなると肺胞壁の伸展受容器が刺激され、抑制性の活動電位が発生して、膨らんだ肺から呼吸中枢へと伝わる。すると、呼吸中枢は、呼吸刺激の電位を送るのを止めるようになる。 吸息が呼吸の中では活発な相であるのに対し、呼息は通常は受動的な相である。横隔膜と外肋間筋は弛緩し、呼息が発生する。呼吸が深くなったり急速になると、呼息もは活動的になる。内肋間筋の収縮により、肋骨郭が下方外側へと偏移する。また、腹壁の筋が収縮すると、内臓が押し上げられ、そのことによって横隔膜が押し上げられて胸腔内圧が上昇するので空気の排出に有利に働く。
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External Respiration 外呼吸 外呼吸は 肺胞の空気 と 肺毛細血管内の血液 の間のガス交換である。ガスにより圧が産生され、それぞれのガス及ぼす圧の量は分圧であり、PO2やPCO2のように表記される。肺毛細血管を流れる血液は、体外の空気に比べて 高い PCO2を持っている。それ故、CO2は血液から肺へ向かって拡散する。大部分のCO2は重炭酸イオン(HCO3-)の形で運ばれる。少量の遊離CO2が拡散し始めると、以下の反応式が右向きへ向かって進行する。
酵素である炭酸脱水素酵素(カルボニックアンヒドラーゼ)は、赤血球中に存在し、この反応を促進する。反応が進むと、やはり赤血球中に存在する呼吸色素であるヘモグロビンが持っている水素イオン(H+)を切り離す。つまり、HHbがHbになるのである。Hbはデオキシヘモグロビンと呼ばれる。 酸素の場合は逆の圧のパターンである。肺毛細血管を流れる血液の酸素濃度は低く、肺胞の方が酸素分圧が高い。それ故、O2は血液や肺の赤血球に浸潤する。ヘモグロビンは酸素を取り込んで酸化ヘモグロビンになる。
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Internal Respiration 内呼吸 内呼吸は 体循環の毛細血管の血液 と 組織液 の間のガス交換である。体循環の毛細血管に入る血液は、赤血球がオキシヘモグロビンを含んでいるため明るい赤色である。オキシヘモグロビンは酸素を解離し、血液から離れて赤血球や組織に入る。???
酸素は、組織液のPO2が血液のPO2よりも低いため、血液から出て組織に入る。組織のPO2が低いのは、細胞が絶え間なく好気的細胞呼吸を行って酸素を消費しているからである。二酸化炭素は、組織液のPCO2が血液のPCO2よりも高いため、組織から血液へ拡散する。二酸化炭素は、絶え間なく細胞によって産生され、組織液に集まる。 CO2は血液に拡散した後、赤血球に入り、そこで少量がヘモグロビンに取り込まれ、カルバミノヘモグロビンを形成する。大部分のCO2は水と結合し、炭酸を形成する。炭酸は水素イオン(H+)と重炭酸イオン(HCO3-)に解離する。血中のCO2濃度の上昇により以下の反応は右向きへ進む。
カーボニックアンヒドラーゼは、赤血球中に存在し、反応全体の最初の部分速度を促進する。重炭酸イオンは赤血球から出て、血漿中を運ばれる。毛細血管から出た血液は、赤血球に(オキシ)ヘモグロビンが少ないため暗紫色である。ヘモグロビンのグロビン部分は反応全体で産生される過剰な水素イオンと結合し、HbからHHbになり、還元ヘモグロビンと呼ばれようになる。 |
外呼吸 と 内呼吸 は、それぞれ 血液と肺胞の間のガスの動き と 血液と体循環の毛細血管の間のガスの動き である。どちらの過程も拡散が機序である。 |
pH | Temperature 温度 | |
Lung 肺 | 7.40 | 37℃ |
Tissues 組織 | 7.38 | 38℃ |
肺と組織のPO2や温度やpHの違いは、ヘモグロビンの肺での酸素の取り込みと組織での酸素の放出に影響を及ぼす。 |
Upper Respiratory Tract Infection 上気道感染 上気道は、鼻、咽頭、喉頭からなる。上気道感染は鼻腔から副鼻腔や中耳や喉頭へと波及する。ウィルス感染は、時に二次性細菌感染を惹き起こす。'strep throat(ストレプスロート)' と呼ぶ状態は、化膿連鎖球菌による感染が上気道全般の感染や全身の感染へと発展した状態である。抗生物質はウィルス性感染に対しては無効であるが、ストレプスロートを含む細菌感染の大部分には有効である。 Sinusitis 副鼻腔炎 副鼻腔炎は副鼻腔の感染である。副鼻腔は顔面骨の内部に存在する腔であり、鼻腔に注ぐ。約1〜3%の上気道感染には副鼻腔炎が伴っている。副鼻腔炎は、鼻汁の欝滞(うったい)が副鼻腔へと続く小さな経路をブロックする際に発生する。後鼻漏や顔面痛といった症状は、患者が前かがみになると増悪する。痛みや圧痛は前頭下部や顎の辺りに通常発生する。後者の場合は、歯痛も伴う。治療の成功は、副鼻腔からの適切な排泄を回復できるかにかかっている。温浴シャワーや正立睡眠が有効な場合もある。さもなくば、うっ血除去薬のスプレーが、副鼻腔に溜まった物質を溶解させずに肥厚させる働きのある経口抗ヒスタミン薬よりも用いられる。 |
Figure 8.11 Upper respiratory infections. 上気道感染 |
Otitis Media 中耳炎 中耳炎は中耳の細菌感染である。中耳は気道の一部ではないのにここで取り上げているのは、鼻感染のある小児にしばしば中耳炎が合併症として見られるからである。鼻の感染は、鼻咽頭から中耳へと通じる耳管を通じて波及する可能性がある。痛みは中耳疾患に最も多くみられる症候である。耳閉感、聴力低下、目眩(めまい)、発熱も症状としてみられる。抗生剤投与により完全に回復することが殆どであるが、新たな感染で再発することも多い(再発が多いという特徴)。ドレナージ管(ティンパノストミー・チューブ)を、再発を繰り返す小児の鼓膜に、中耳の滲出液が貯留することでおきる聴力の損失を防ぐ目的で設置することがある。通常、時間の経過とともにチューブは抜去される。 |
Tonsillitis 扁桃炎 扁桃炎は扁桃が炎症をおこして肥大したときにおこる。扁桃はリンパ組織の塊で咽頭に存在する。鼻咽頭の後壁の扁桃は、しばしばアデノイドと呼ばれる。扁桃は咽頭に入る病原体の多くを除去する。それ故、扁桃は身体への侵入に対する第一の防衛ラインなのである。扁桃炎が頻繁におき、扁桃腺肥大により呼吸困難がおきるようであれば、外科的に扁桃腺摘出術を受けて扁桃腺をとることができる。今日では以前ほど扁桃腺摘除術は行われなくなった。それは、扁桃は生体を感染から守るのに重要な機能を果たしていることが知られているからである。 Laryngitis 喉頭炎 喉頭炎は、聞き取れる大きさの声で話す事ができなくなる'嗄声(させい)'を伴った喉頭の感染である。通常、喉頭炎は上気道感染の治療と共に消失する。上気道感染を伴わない持続性の嗄声は、癌の危険信号の一つであり、内科医による診察を受けるべきである。 |
組織 | 組織 | |||||||
CO2 | + | H2O | ← → |
H2CO3 | ← → | H+ | + | HCO3- |
二酸化炭素 | + | 水 | ← → |
炭酸 | ← → | 水素イオン | + | 重炭酸イオン |
肺 | 肺 |