関駅へ通じる新設区間の踏切
名鉄岐阜線とは、岐阜市内線・美濃町線・田神線の軌道線と、揖斐線・谷汲線の総称です。これらの線は名鉄の他の線区が架線電圧1500Vに対し600Vで、路線図でも細線で描かれていて、なんか不遇な感じです。
美濃町線の末端区間、美濃〜新関については、新関の先の路面に出るところから長良川鉄道の関駅方向へ道路を横断するよう線路を付け替えた上、長良川鉄道に駅を増設し、連絡運輸を行うことでこと運用を引き継ぐ形で廃止されました。99/3/31日に美濃〜新関が廃止され、翌4/1から長良川鉄道に連絡する関駅の運用が開始されました。また、長良川鉄道にも、旧名鉄松森駅に対応する松森駅が開業しました。新しい名鉄関駅は、長良川鉄道関駅の下り線ホームの美濃太田方50mくらいの場所を舗装して待合室を作ったものです。プラットホームはありません。新設線は路面に出て美濃方向に向かっていた部分を道路を横断する踏切に変更し関駅に入るようになっています。この踏切は踏切信号があり、関駅を発車した電車は30mほど進んだところで一旦停止して踏切が閉まるまで待ってから横断するという扱いをしているようです。
従来の新関駅はそのまま残っており、新関以西のダイヤも同じです。関まで行く電車は日中は1時間毎の長良川鉄道連絡の時間のもの限られ、他は従来通り新関折り返しの運行となっていますが、従来に比べて乗り継ぎは格段に便利になりました。でも、長良川鉄道側はあんまりやる気がない感じで、反対側の長良川鉄道の関駅舎の方には何の案内表示もありません。それにしても古い方に“新”が付くとは妙な名前になってしまったものです。
しかし、越美南線開通以来、今まで放置されてきたというのもなんだかな、と思います。似たような所に樽見鉄道と揖斐線の交差部分(美濃北方〜真桑間)があります。美濃北方から(樽見)北方真桑まで徒歩で乗り換える人もいるようですが、判りにくい道を1kmほども歩く必要があり現実的ではありません。ここもなんとか連携するようにしてほしいものです。
岐阜市内線・揖斐線は、1997年春に新車780型が投入され、揖斐線電車は平日の朝の一部を除き、ほとんどが岐阜市内まで乗り入れるようになりました。また、これに伴い、揖斐線黒野〜忠節から日中の戦前うまれの旧型車を一掃したことにより、少しばかり所要時間も短縮されました。続いて1998年春には780型を増備し、谷汲線や本揖斐の区間運転に使用されていた700型も廃止されました。これで、揖斐線黒野〜忠節の電車はすべて軌道線型になって原則として市内線に乗り入れることになりました。すっかり路面電車化したわけです。
新型車名鉄780型(伊自良川橋梁)
これに伴い、改札外で線路内通行者が多く何かと問題のあった忠節駅4番ホームが移設されました。新しい4番ホームは3番ホームの横に無理矢理に造られています。いわゆる神戸の御影駅状態ですが、もともと広かった旧4番線も10年ほど前から利用者が減少し、自転車置き場と化していましたので、実効的な広さは変わず問題はないのでしょう。跨線橋は改造されておらず旧ホームの方にしか行けないため、4番ホームに行くには構内踏切を渡ります。
右側が新築された4番線。ホーム上屋と民家のバルコニーはぶつかる寸前。
なお、旧型車のうち520型はまだ廃止されませんが、これは実質的には犬山あたりの3400型“いもむし”同様の動態保存と思われます。 揖斐線のスピードアップは、ことによれば開業以来かもしれません。また、美濃町線は小屋名〜新関間を高架化して、長良川鉄道関駅に接続した上で長良川鉄道と並行する関〜美濃を廃止しようという計画があります。
さて、揖斐・谷汲線のうち、新車も投入され順調に営業されているように見える忠節〜黒野間以外の区間は廃止の動きがあります。この区間は以前、30分間隔で直通急行運転なども行われていましたが、現在は750型単行のワンマンカーが1時間毎に黒野との間を往復するだけになってしまいました。
岐阜新聞によると、揖斐・谷汲沿線の町村は「なんとか残す手だてを考えたい」と積極的な反応を見せているのに対し、大昔、路面電車撤廃決議をした実績のある岐阜市は「経営に参加するつもりはない」と冷たい対応だそうな。(でも、岐阜市は平地ロープウェイやらディアルモードバスやら妙な新交通システムには熱心なのよね。)
ただ、名鉄の駅よりは街の中心部から離れているものの、揖斐川町には近鉄養老線、谷汲村には樽見鉄道が通っているという事情もあり、沿線町村の住民の反応は冷ややかな感触があります。岐阜県が名鉄の株主になるという話もありますが、別会社を設立して存続するというような積極的な姿勢はなさそうです。
揖斐線・美濃町線とも、新岐阜までの乗り入れは実現しているものの、自転車より遅い軌道部分がネックとなり距離の割には多大な所要時間を要しています。もともと全国有数の自家用車保有率の高い地域であり、沿線道路も改良され自家用車利用の利便性は大変向上していますし、郊外型店舗の増加により岐阜市街地の吸引力が衰退したこともあって利用者が一層減少を続けるのは確実視されますから、今後の展望は明るくないでしょう。岐阜市の協力が得られなければ、岐阜線すべて廃止というのも決して非現実的なことではなさそうです。
今後の動向を注目したいと思います。