猿のおしりが赤いわけ


 かし、あるところに、一匹の食いしん坊のサルが住んでいた。山の中の一本道を魚屋が、魚を仕入れて帰るたびに、
「さかなをくれえ、さかなをくれえ。」
 とねだっては、じゃこを取って食べていた。

 かな屋は、ぷりぷり怒って、山道まで来ると、かけるようにして通った。 けれども、毎日、サルはかならずやって来て、魚を取っていく。

 日毎日、このように魚を取って食べられるので、魚屋も考えた。せえで、
「おサルさんや、魚がほしかったらなあ、さみいじぶん(寒いときに)、晩方、しっぽを 水の中へつけてみい。そうすりゃあ。ようけえ(たくさん)エビのような、こめえ(小さい) 魚が来てなつくけえ、そりょう(それを)とって食べりゃあええ。」
 て、教えてやった。

 ルは、言われたとおりに、しっぽを池の中につけた。じかじかするするほど、 よおけえ魚が集まって来たんじゃ思うて、もうちょっと、もうちょっととがまんしとった。

 いぶたって、もういいじゃろうと思うて、そうっと、しっぽをあげようとしたが びくとも動かなんだ。氷が一面にはっとったんじゃ。困ったサルは、力いっぱい引っぱった。
すると、バガッという音がして、しっぽがちぎれてしもうたそうな。

 れからサルのしりは赤うなったいうて。
それもひとむかし

語り手:井原市西方町 横溝楽市
岡山県小学校国語教育研究会編 「岡山のむかし話」より