おはぎになった蛙

 岡山の民話の中にも「和尚さんと小僧さん」の話はたくさん有ります。いつも しかめつらしい和尚さんを知恵のある小僧さんが負かすといった痛快さがありますね! このお話は、その痛快さがコンパクトにまとめられています。

 るお寺に、和尚さんと小僧さんとおられたんですが。和尚さんは大変おはぎの好きな人じゃったそうです。

 る時、よそからおはぎをもろうたんですけえど、ちょうど法事に出ていく時でして、留守の間に小僧に食べられちゃあならんが思うて、気になるもんですけえ、重箱を覗いて、
 「おはぎ、おはぎ、これから法事に行くからなあ、小僧が見たら、お前、蛙になっとってくれえよ」
言うて、ふたをして出ていったんですと、

 ころが、小僧が脇の方でそれを聞きょうたんですと、
 「ああ、和尚さんはあんなことを言ようる。このおはぎを食べてしもうちゃれえ」
言うて、きれえに食べて、それから背戸の方から蛙をたくさん取って来て、お重の中へ入れとったんですと。

 方、和尚さんが、あのおはぎを食べちゃりましょうと思うて、 楽しんで帰ってきて、重箱のふたを取ったら、蛙がぴょん、ぴょん、ぴょん、ぴょん跳び出て来たですが。
 「こりゃ、こりゃ、おはぎやおはぎ、小僧じゃねえぞ。住職じゃ。」
いうて、言い聞かしたんですてえ。

語り手:岡山市中井町 小松原芳子
稲田浩二・稲田和子著 「岡山の笑い話」より