もぐらと太陽


 昔々、あるところへ、1匹のもくろめ(もぐら)の一番大将がおって、世界中で自分より穴ぁよう掘るものはおらん。じゃけどもが、どうも土の上に出た時分に、天道様(太陽)が照らすと背中が熱うて困るんで、
 「あの天道様ぁどうしたらのうなるじゃろうか。」
いうて言うたら、物識りがおって、
 「そりゃあ、萩の木の枝ぁ切ってからに、弓ぅこしらえて、天道様ぁ射ち落としゃあえかろう。」
 「そうか、そんならそうしよう」
いうて、一生懸命で萩の枝ぁ取って弓矢ぁこしらえて、そして萩の根元から天道様ぁねろうて射ったところが、天道様へ穴があいて、暗うなったんですなあ。
  ・・・・それが日蝕いうもんが初めてできたときじゃ・・・・
 せえで、暗うなったんで、日が当たらんから、なんぼう土の上を歩き回ってもとても気持ちがよかった。

 ところが、その穴が治って、にわかに日が射えたら、もくろめは死んでしもうた。せえで、天道様ぁ射った罰で、今でももくろめが地上に出て天道様の明かりぅ受けたら死ぬるんじゃいうて。
 せえで、それまでは萩の木がとても大きゅうなって、山じゅうかぶさるような大きな萩の木があったのに、もくろめに枝ぁやったいうんで、せえで大木にゃあ絶対なれんようになった。
 せえで、高望みぅすな(高望みはするな)いうて、天道様は高えとこにござるでしょう。高望みぅすりゃあ罰があたる。

語り手:真庭郡落合町栗原 三浦志げ代
岡山むかし話101選<上>(立石憲利 編著)山陽新聞社より