狸と狐の売りあいこ

狐と狸のお話パートUです。今度のお話はどっちに軍配?

  んと昔があったそうな。
木枯らしの吹き始めたある日のこと、狸と狐と出おうて、
「ひどう寒うなったのう」
「寒いだけじゃない。景気は悪いし、腹はへるし・・・」
「ひとつ景気づけに、めおい(共同飲食)をしようや。なんぞごちそうして食おうや」
「うん、それがええのう。じゃが銭がないがな」
「心配ご無用だ。狐の七化け、狸の八化けで人間様を化かすことにしょうや」
  が人間に化けて、狸をかついで町に売りにでかけたそうな。
「狸を食わねばコロリがはやる。狸を食わねばコロリがはやる」
「まあ、それほどコロリがはやってはいけんけえ、狸をくれえ」
狸を買うて置いとったそうな。
 狸は死んだふりをしとったが、狐の狸売りが帰った時分を見はかろうて、 そろいそろい縄をほどいて、抜けて戻ったそうな。
「ああ、ええあんばいにいったぞなあ。これだけ銭があったらたらふく食えるぞ」
「ほんにうまいこと、人間様をだましてやったぞのう」
そこで足るほどご馳走を作って食うたそうな。肉のようけい入った大山おこわだったそうな。
  れからしばらくして、また狸と狐が出おうて、
「こないだは、うまくいったのう。また腹がへったで、こないだの調子でやろうか」
「よかろう。今度は狐どんが売られる番で、わしが売る番じゃ」
 狸が人間に化けて、狐を売りに町へ出かけたそうな。
「狐を食わねばコロリがはやる。狐を食わねばコロリがはやる」
町を大声で回ったそうな。
「なんだ、こりゃあ。またコロリがはやるんなら狐をくれえ」
狐を買うて、
「こないだ買うた狸のやつ、死んどった思うたら縄抜けをして逃げたけえ、今度はようくくっとけえ」
どえらいごつうくくられて、逃げようにも逃げられない。 それでほんに狐は人間様に食われてしもうたそうな。
  はうまいことをして、狐の売り上げで、ひとりご馳走をして足るほど食うたそうな。
油のようきいた大山おこわで、ほっぺたが落ちるで、よう押さえて食うたそうな。
 昔こっぷり

語り手:真庭郡川上村 田原桐夫
岡山文庫39 岡山の民話(岡山民話の会 編)日本文教出版より