間違いだらけのネットワーク作り(310) 2003/12/20
「情報化研究会大会模様」、記事評「LAN再考」(日経コンピュータ)

先週の情報化研究会大会は盛況でした。 好天に恵まれ、会場である駿河台の明治大学リバティータワー11階からは、冬らしい透明感のある青空と明るく照らされた街並みがきれいに見えました。 内容の紹介をする前に参加した方からのメールから感想を拾って見ましょう。

「松田さん、有賀さん、稲田さんのお話も面白かったのです。
稲田さんの話された内容は、現在の仕事にヒントになるものがあったので、
日ごろの仕事を違う視点で見ることができそうです。
来年のNET&COMも、休みが取れたらセミナー参加します。
#今の仕事だと、休まないとダメそうです。。。」(Aさん、女性)

「全くお話が理解できなかったら、どうしよう」と、不安だったの
ですが、大体の内容をとても興味深く、聴くことができました。
実は、現在携わっている業務はプログラム開発が主で、なかな
かネットワーク関連の現状に触れることがないので、これからも
この研究会を楽しみにしていきたいと思います。」(Bさん、女性)

「有賀さんのお話は、私が日ごろ、ぼんやりと疑問に思いつつも、まともな日本
語として表現できていなかったことを見事に表現されていました。
 「設計をしてもいい人材と設計させてはいけない人」と言うのが印象深かった
ですね。」(Cさん、男性)

「昨日は有意義な時間をありがとうございました。
いつも情報化研究会の後は仕事に前向きになれます。
皆さん、目線が高いので…」(Dさん、男性)

「松田さんのお話も普段だと幕張で大勢の中に埋もれて聞かなくてはならないのが
間近で聞けて嬉しかったです!そして、挑戦、挑戦の姿勢!
松田さんがIPセントレックスに挑戦されなければ、ユニデンさんが電話機を作ることも
自営VoIPサーバの技術にデタラメな名前が付くこともなかったでしょう?!!!」(Eさん、女性)

来年のNET&COM講演では、IPセントレックスを動かして分かったポイントだけでなく、少し視野を広げて企業ネットワークの将来展望にも重点を置いて話したいと思います。 そのヒントは今回の研究会で有賀さんや稲田さんからも貰いました。 そして、参加した方との打ち上げや2次会の席でも貴重な情報を貰いました。 長い冬休みの間にいろいろアイデアを練りたいと思います。

情報化研究会大会模様

この大会ではCSK取締役副会長の有賀さんと総務省電気通信政策局技術政策課長の稲田さん、そして私が講演しました。 私の話はこのHPに書いてあることを少しインパクトをつけて話ているだけなので紹介は省略します。 さらに詳しく、次世代IPセントレックスなどの展望を含んだ講演は上記のNET&COMでする予定です。

有賀さんの講演テーマは「高品質、高信頼性ソフトウェアを生産性高く開発する−情報サービス業界の変革とエンジニアリング化」です。 多岐にわたる講演の内容を私のフィルターを通して大胆に要約すると、「日本のソフトウェア産業の国際競争力を高めるためには、従来の暗黙知にたよった非科学的ソフトウェア生産から脱却し、クルマの生産と同様に計測・分析・改善が可能な形式知に基づく可視化・数値化された開発方法に転換せねばならない。 そのためには標準化されたITスキルを身に付けた人材の育成が肝要」、となります。 

経済産業省がIT標準スキル、というのを定義しましたが、プロジェクトは標準スキルの組み合わせとして構成されるようになるとのこと。 将来は認定された標準スキルで仕事が制限される可能性もあるそうです。 1級建築士でないとビルが設計できないように、設計のスキルがない人はさせてもらえなくなると言うこと。 厳しいようですが、設計できない人にさせるからトラブルが起こるのですから、当然といえば当然のことです。 

稲田さんのテーマは「ユビキタス時代のネットワーク戦略」。 私はユビキタスを勉強したことがなかったので稲田さんの講演を楽しみにしていました。 本を買っても、なかなか読んで勉強する気にはなれませんが、講演はその時間集中して勉強できるのがいいところです。 ましてや小泉首相のユビキタス見学の案内役をつとめた稲田さんが講師なのですから、またとない勉強の機会です。 稲田さんの講演も私なりに解釈して大胆に要約すると、「ユビキタスとはどこにいても、ネットワーク、端末、コンテンツをコンピュータやネットワークの存在を意識せずにストレスなく利用できること。 その有力なツールの一つである電子タグはネットワークと結びついて情報へのアクセスを容易にするキーとなり、モノと情報を結びつけて消費者への責任所在の明確化(例:トレーサビリティ)や新しいサービスの開発(例:ガソリンスタンド、保険会社、自動車会社のサービスをクルマの電子タグをキーに連携)を可能にする」、となります。

お二人の講演内容の詳細とそれに対する私のコメントを日経バイト2月号の「間違いだらけのネットワーク作り」に4000字程度でまとめました。 その表題は「何のために仕事してるんですか?」です。 何故、このエッセイのテーマがそうなってしまうのか? まあ、かなり面白いと思うので読んでみてください。

記事評「LAN再考」(日経コンピュータ 2003年12月15日号 p.50)

UFJ銀行のIP電話に関する記述が面白いですね、この記事は。 記事評「UFJ銀行IP電話4万台導入の衝撃」 で私は「私にとっての最大の疑問は何故100億円もかかるんだろう、ということです。 電話機4万台ですから、1台あたり25万円。 金融機関向けに機器の二重化等を徹底しても私のモデルではこの半分にも達しません。」と書きました。 UFJ銀行も再検討の必要を感じたのでしょう、見直した結果60億円になったとのこと。 さらに面白いのは日経コンピュータ編集部が試算すると50億円になるとのこと。 

そうでしょ、と言うだけです。 ベンダーの提案そのままでニュースリリースしたようですが、やっと納得できる数字になりました。 ニュースリリース前に妥当な金額になっていればビックリせずにすんだのですが。

もう一つこの記事で感じたのは、日経コンピュータの用語の定義の方が日経コミュニケ−ションより正確なこと。 P.65にあるIPセントレックスの用語解説は「IPセントレックス・サービスは、通信事業者が提供するPBX機能をIPネットワーク経由で利用できるようにするもの。」  一方の日経コミュニケーションは企業がVoIPサーバを自前で使うUFJ銀行の利用形態を以前は「自営IPセントレックス」と呼び、NET&COMのセッションでは「自営」も取れて、IPセントレックスになってしまったようです。 同じ出版社なのですから、正しい方に統一して欲しいものです。 読者の混乱を招きます。
 
 

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