うさぎと猿とかわうそ

昔話の中でうさぎはどんなタイプなのでしょう!
昔の人は、それぞれの動物のイメージでぴったりの性格表現 をしているのに驚きます。
それだけ人間の生活と自然が身近だったのでしょうね。
また、このお話は「猿のお尻が赤い訳」の別話にもなっています。


  むかし、うさぎと猿とかわうそがおったそうな。
あるとき、ひとりのおっつぁんが、盆買い物をしてもどりょうた。
「あのおっつぁんの持っとるものを取っちゃろうや」
「ふん、それがええ」
「そりゃあ、おもしれえ」
そこで、うさぎが、おっつぁんの2,3歩先をぴょこんぴょこんと足が悪いようなふりをして、歩いてみせた。
「ありゃ、あっこに足の悪いうさぎが跳びょうる。つかまえて盆のごっつぉう(ごちそう)にしたろう」
おっつぁんはそこへ荷物を置いといて、うさぎを追いかけた。追いつけてくりゃあくるほど、うさぎは、 ぴょんこ、ぴょんこ跳んで、遠いへ遠いへ行って、とうとう山へ逃げてしもうたそうな。おっつぁんは、 どうしょうもない。もとの所へもどってみりゃあ、置いとった荷物がありゃあせん。うさぎを追わえとる 間に、猿が持って逃げてしもうたんじゃ。
  さぎと猿とかわうそが、一つ所へ寄って、荷物を広げてみたら、ござがあるし、豆があるし、塩もある。
「うめぇこといったなあ。これをどねんして分けりゃあ」
「ふん、そりゃあええ分別がある。わしがみんなに分けたぎょう」
うさぎはなかなかしごにならんもんじゃから、
「猿さん、おまえにゃ、ござをやろう。木に登って昼寝をするときに、これを敷いて寝りゃあ気持ちがええぞ」
「そうか、そりゃありがてえ」
猿はござをもろうて喜んだ。
「かわうそさん、おまえは川で魚をとって食べるから、この塩をやろう。塩をつけて食べりゃあうめえぞ」
「そうか、そりゃありがてえ」
かわうそも、塩をもろうて喜んだ。
「わしゃあまあ、しかたがねえから、残った豆でももらおうか」
  こで、猿は、高い木に登って、枝の上にござを敷いて、よっこらせっと、ころがったところが、ずるずると 滑って、どさんと落ちて、お尻の皮をすりむいて、ひどいことになったそうな。
泣く泣くかわうそのところへ行ったところが、かわうそはかわうそで怒っている。
「魚をとったらつけて食べょう思うて、塩のかごを頭にのせて、川の中へゾブーンとはいったら、塩はみんな 溶けてしもうた」
「おどれ、このうそつきうさぎめ!」
  とかわうそは、怒ってうさぎの所へおしかけて来た。
「おい、うさ公。よくもおまえは、わしらにおかしなもんばあ(ばかり)、くれたな。わしらはおまえさん にだまされて、ほれ、このとおりじゃ」
「やあ、そねえ言うけど、わしを見い。豆を食うたら、顔のほうから頭のほうに、こっぱん(じんましん)が いっぱい出て、ように弱っとる。やっぱり悪いことはせられんなあ」
うさぎは豆の実だけ食べてしもうて、皮を顔じゅうにひっつけとったんじゃ。
猿のお尻がいまだに赤いのは、お尻の皮をすりむいたおり、血が出たのが残っとるんじゃと。
 

語り手:真庭郡湯原町 牧  馨
岡山文庫39 岡山の民話(岡山民話の会 編)日本文教出版より