蛇婿入り

 異類(人間以外の動物や妖怪など)との婚姻話の代表的なお話です。全国各地に伝わっています。
話の内容は様々で、「豆炒り型」「娘変身型」「姥皮型」「鷲の卵型」「蟹報恩型」などに分けられています。
異類婚では「タラ婿入り」「くも婿入り」「食わず女房」「鬼婿入り」「猿婿入り」「猪婿入り」「犬婿入り」などがあります。
また、東南アジア(朝鮮族・漢族・アイヌ・ギリヤーク族・高砂族・ミャオ族)では、蛇のほかに、うわばみ、みみず、なまず、蛙、たにし、大熊 なども出てきます。



 父さんがなあ、田んぼの水ぅ見に行ったら、 蛇が水口のところに 横たわっとって、どうしても 逃げんで、どうしたもんだろう思うて、 なんとか 逃がさな、田んぼに 水が入らんし、せえで 追うても どうしても逃げんから、 家に娘が三人おったんで
 「どれでも一人、娘を嫁にやるけえ逃げてくれえ」
いうたら、逃げていった。
 せえで、自分は あそこの池の主だからと名のって、
 「かならず 娘を1人くれえよ」
って言って帰っていった。

  えで、娘を嫁にくれえというので蛇に嫁にやらにゃあいけん。困ったもんんだ思うて、まあ、 三人の娘を呼んで、

 「三人のうちの 誰か 蛇の嫁になってくれえ」
言ったら、一番上のは いやじゃ 言うし、二番目も いやじゃ 言って、一番下のが、
 「ほんなら私がなろう。約束したのを、お父さんも困ろうけえ、なろう」
って言って、

 「ほんなら、たんすにいっぱい浮きと針を詰めてください。そりょう(それを)持って 蛇の嫁にいくけえ」
いうて、


 えで、浮きと針をいっぱいたんすに詰めて、持って行って
 「これをな、嫁入り道具だから、池の底にな、先に沈めてくれえ。そのあとから 行くけえ」
いうて、そうしたら 蛇が たんすの上に 乗っちゃあ沈め、上に乗っちゃあ沈めするけど、浮きが入っとるけえ、 浮いて沈まらんのん。
 また上に乗っちゃあ沈め、上に乗っちゃあ沈めしょうるうちに、針が 体に刺さって、へえで  蛇が死んでしもうたそうな。
 針は蛇には毒だけえ 死んでしもうた。

 

語り手:苫田郡上斎原村 加治若恵さん
「民話集人形峠」(岡山県上斎原村の採訪記録) 立石憲利編著 上斎原村教育委員会発行