まま子と魚

 かしむかしになあ、ある家に男の子が三人おったんじゃ。上の男の子は、まま子でとてもやさしゅうて、 親孝行な息子じゃったん。お母さんは、自分の子どもばかりかわゆうて、まま子をいつもいじめようたんじゃけど、まま子は、少しもひがまなんだ。

 ご飯の時に、自分の子どもにゃ魚のいい切れのところをやって、まま子にやぁ骨ばっかりのところをやったんじゃ。下の男の子が、
 「お兄ちゃんは、どうして骨ばかり食べるん」
というて聞いたんじゃ。お母さんはどういうて返事をするじゃろうかと思うたら、
 「そりゃあなあ、お母さんがぼくに、骨なしになるな、骨なしになるないうてくれるんじゃ」
というたんじゃ。

 母さんは、いまいましゅう思うて、次の晩にゃあ魚の頭のところをつけといた。
 「お兄ちゃんは、どうして頭ばかり食べるん」 いうて下の男の子が聞いたら、今度は、どねん答えるじゃろうかと、まま母が思ようたら、
 「そりゃあなあ、お母さんがぼくに、頭(かしら)になれ、頭になれいうてくれるんじゃ」
というたんじゃ。

 ま母は、今度こそ思うて、しっぽのところをつけてえたんじゃ。そうしたら、また下の男 の子が、
「お兄ちゃんは、どうしてしっぽばかり食べるん」
と聞いたんじゃ。今度こそよう答えんじゃろう思うていると
 「そりゃあなあ、お母さんがぼくに、跡を取れ、跡を取れいうてくれるんじゃ」
と答えたもんじゃから、まま母も、ようそれからはいじめんようになったんじゃと。

語り手:総社市井尻野西村 神野茂子
日本の民話9山陽 (稲田和子 立石憲利 編) (株)ぎょうせい より