* 韓国 水原・韓国民俗村の旅(2000年1月14日〜1月16日)



 真冬のソウルは東京と比べると大陸性の気候のせいで大変寒く、あの漢江も凍るほどである。しかしながら、唐辛子を中心とした辛い韓国料理を一際おいしく感じることができるのもこの寒い時期である。昨年の冬韓国を訪れた際のあの寒さの中で食べる韓国料理の美味しさと街のパワフルな雰囲気をまた味わいたいと思い、H○S旅行社へ電話した。韓国は国内旅行とあまり変わらない価格で手軽に行けることもあり、過去3回の旅行申し込みの際にはあまりの人気で予約O.K.の返事をもらうまでにある程度の時間を必要とした。今回も覚悟して申し込むと、初めて希望の日程と内容のまますんなりと返事をもらえた。

 1月14日(金)成田発18:10のユナイテッド881便に乗るべく自宅を出る。毎回感じるのだが、成田空港まで行くのが本当におっくうでならない。東京ーソウル線は需要が大変多いのだし、羽田空港から乗れるようになったらどんなによいかと思う。成田空港は週末の金曜日である程度混んでいるかと思ったが以外に空いていた。出国審査も大変スムーズであった。私が乗るUA881便は満席とのことであったが。今回は運良く行き帰りともに窓側の席になった。乗客はアメリカの飛行機のせいかアメリカ人が大変多かった。離陸してまもなく飲み物とともに機内食が配られた。前回、ノースウェスト航空に乗ったときにはビビンバが出てきて少々驚かされたが今回はアメリカの飛行機らしく、歯ごたえのある肉の薄切りがはさまっているホットドッグが出てきた。乗務員が英語で何か飲み物は?と聞いてきたのでビールを注文すると、銘柄名を聞かれたのでキリンラガーを頼んだ。銘柄まで希望できたのは今回が初めてである。
 食事を終え、韓国入国に必要な書類を書いていると後25分ほどでソウルに着陸とのアナウンスがあった。窓の外はもちろん真っ暗だが、すでにポツポツと韓国の街灯りが見え始めている。海外旅行ではあるが寝る間もない程、本当にせわしない飛行機の旅である。着陸が近づくにつれ、だんだんと「宝石をちりばめたような」ソウルの街灯りになってきた。夜、異国の地に夜景を見ながら到着するのは何とも言えない郷愁が感じられて自分では大変気に入っている。今回、夜の便にしたのはこれが理由である。
 入国の諸手続を終えて空港ビルの外に出ると、気温はもう零下になっているのだろうか、キリッとした東京では感じることのできない寒さが伝わってきた。今回泊まるホテルは南大門市場付近にあるレックスホテルで、着いてみるとごみごみとした街中にあった。ホテルに着いたのは22時前になっていたが、このまま寝てしまうのはもったいないのでコンビニへの買い物がてら付近を少し散歩することにした。ソウルの街はどこへ行っても地下道が発達していてまたその地下道の中もたいていは「○△地下商街」などという名前で商店街のようになっている。このような地下商街を歩いて初めて今自分がソウルに来ているのだと実感できる。地下商街の入り口では日本と同じような宝くじ売場があり、何と、パトロール中と思われる若い警官二人がくじを買って騒いでいた。その場で当選結果が分かるタイプのくじなのだろう。ところでホテルから歩いて5分くらいのコンビニに行くまで数人の人に韓国語や日本語で声をかけられた。「今、日本の景気はどうですか?」私が「よくないです。」と答えるとその人は付近のビルの中へ消えていった。韓国語で声をかけてくる人はともかく、いきなり日本語で声をかけてくる人は、なぜ私が日本人と分かるのか不思議で仕方がない。毎回韓国に行く度に必ず一度は経験する。
 韓国には日本と同じくらいに街のどこにでもコンビニがある。よく見かけるのはLG25というコンビニであるがもちろんセブンイレブンやミニストップなど日本でおなじみのもたくさんある。が、全体にどのコンビニも店舗が狭いのが特徴である。店内の様子は日本と同じで、日用品から韓国ののり巻き(キンパブ)やおにぎり、サンドイッチ、温かい肉まんまで同じである。台湾のコンビニで日本のお菓子や日用品をよく見かけてがっかりさせられたが、韓国では日本製のものはめったに見かけないので陳列棚を見ているだけで楽しい。私はミネラルウオーターとイカのスナック菓子を買って遠回りして別の道でホテルへ戻った。夜遅くにこのように一人でぶらぶらと散歩できるのも、所々で見ることができる警官二人組によるパトロールのおかげであろう。地下街では、ストーブに当たりながら警備している警官もいる。
 
 1月15日(土)昨夜、朝6時にアラームがなるようセットしておいた時計が時間どおりに鳴って目が覚める。目が覚めたときは韓国に来ているという意識がないまま自分の家にいるつもりで(意識で)目が覚めるのだが、辺りを見回して今、自分がホテルの部屋にいて、韓国に来ていることに気づく。この時の感じは何とも言い表しようがなく嬉しいものだ。ホテルの部屋のカーテンを開け、外を見るとまだ暗いが、車の通行量は非常に多い。今日は土曜日である。
 今日は、電車で水原(スーウオン)へ行き、そこから韓国民俗村へ行く計画である。午後はソウルに戻り、買い物を兼ねて新村、仁寺洞や鍾路、明洞やロッテデパートなどを急いで見て回るつもりである。もう4回目の韓国、道や行き方は全部覚えている。
 水原は、ソウルから約40キロほど南下したところに位置する街である。行き方はいろいろ考えられるが、私は一番簡単な地下鉄(国鉄乗り入れ)で行くことにした。
 その前に、私はソウル駅構内の食堂で朝食を済ませようと、いくつかの店を物色した。マクドナルドがあるが韓国ではとても食べる気にはならない。日本風のウドンの店はほぼ満席状態で結構な人気だ。結局私は韓国ならではのチゲが食べたくなり、店の外にあるハングルメニューを見てチゲがある店に入った。注文したのはスンドプチゲ(おぼろ豆腐の鍋物)で、キムチ3種類とご飯がついて4000ウオン(400円)という安さだった。鍋なので注文してから出てくるまでに時間がかかるかと思っていたら1分もしないうちに出てきたので驚いた。唐辛子とアサリの辛いだし汁の中におぼろ豆腐やネギ、卵などが入っていて大変体が温まった。スンドプチゲは大変美味しかったので後日、日本に帰ってから自分でつくってみたが、だし汁が今一つもの足りず、満足できる味が出せなかった。
 ソウル駅から水原までは1時間強、950ウオン(約95円)という安さ!韓国の公共交通機関は、当地での物価水準を考えても安いようだ。ソウル地下鉄1号線はソウルを過ぎると地上に出て国鉄乗り入れとなり、水原まで各駅に止まりながら運行している。仁川に行く路線もある。韓国の地下鉄には、しばしば物売りが乗り込んでくる。携帯用虫めがね、ばんそうこう、傘などいろいろな物を演説調の口調で売っている。今回も私はどんな物売りが乗り込んでくるかと楽しみにしていたのだが、あいにく物売りは居合わせなかったようだ。日本とは変わらない街の風景を車窓から見て楽しんでいるうちに終点の水原に着く。9時30分をまわっていた。水原駅はけして大きな駅ではないのだが、土曜日ということもあり、また特急列車の停車駅でもあるせいか、すごい人でごった返していた。駅前は広場になっており、地下商店街に通じる広い道も人であふれ返っていた。
 ここから韓国民俗村に行くわけだが、ガイドブックによると、駅前から無料のシャトルバスが出ているらしい。私はこのすごい人混みの中をかき分けてバス停を自力で探すのはおっくうだったので近くにあった水原市の観光案内所で聞いてみることにした。もちろん韓国語か英語で聞いてみようと覚悟して行ったのだが、何と「日本人の方は中へお入りください」と日本語の貼り紙がしてある。韓国語で「私は日本人観光客なのですが」と声をかけて案内所の中に入ると日本語の達者なおばさんが出てきた。近くのいすに座るようにいわれたので座って待っていると、水原や民俗村のパンフレット(日本語版)を用意してきて簡単に説明をしてくれた。また、気になっていた民俗村への行き方を尋ねると、「無料のシャトルバスはあと1時間ほど来ないから駅前のバス停から37番の路線バスで終点まで行きなさい。」と教えてくれた。私がこの案内所に行ったときはこのおばさん一人だけであったが、おばさんが私に行き方などを説明してくれている間にも外の窓口には次々と韓国人が道を尋ねに来るので私に「今日は本当に忙しいわ!」と愚痴をこぼしてため息をついた。
 路線バスに乗るために教えられたバス停に行くと、ここも大勢の人でごった返している。また、私が乗る37番以外のいろいろな番号のバスが数珠つなぎで次々と来ている。私はこれと同じ光景を沖縄・那覇の国際通りで何度も見たのを思い出した。5分ほど待っていると37番のバスが来たが数珠つなぎのためバス停からだいぶ離れたところで止まっている。料金は前払い、700ウオン(約70円)だった。私は韓国の路線バスに乗るのはこれが初めてである。車内は空いていたのですぐに座れた。バスに乗ってすぐに驚いたのは、車内でラジオがかかっていたことである。韓国のバスはジェットコースターの様だという噂を私はこれまでに何度も耳にしてきたがはたしてそうであった。スピードをやたらと出し、あのような乱暴な運転をしたのでは車体の劣化もかなり早いだろうと思った。30分ほどで民俗村に着いた。
 もらったパンフレットによると、韓国民俗村は30万平方メートルの広い土地に韓国の昔の伝統家屋260余軒と民俗資料を展示してある野外民俗博物館とある。ここは団体旅行者がたくさん来るのだろう、広い駐車場も観光バスでいっぱいだ。入場券を買おうとチケット売り場に行くと、韓国の小学生の団体が並んでいた。入場料は8500ウオン(約850円)と、当地の物価水準からみればかなり高めだ。村内は大変広く、丁寧に見たら予定していた午前中には全部見終えることができそうもない。済州島の民家、田舎のお屋敷、鍛冶屋、陶磁器などの工房、占い師の家などが所々に再現され、中も見ることができる。それぞれハングルと英語で説明が記されている看板が立っている。どれも見ていると何だか懐かしいようでほっとさせられる。昔の日本の風景に似ているようで似ていない、不思議な光景であった。文化の伝播というものは非常に興味深いものがあると感じさせられた。
 さて、当「通い猫ミーのホームページ」は文字通り猫の話題を扱ったページなのでここでも韓国の猫について少しだけふれることにする。村内にはおみやげ屋が数カ所に点在し、私が寄ったおみやげ屋(露店風)では、店の人がするめらしいものをコンロで焼いていたが、その匂いが気に入ったのか、日本猫に似た白と黒のトラ猫がぴったりとコンロの横について座っていた。店に来る観光客もその猫の様子を珍しそうに見ていた。
 どことなく懐かしさの感じられる韓国の伝統家屋をもっとゆっくり見ていたかったのだが、午後の予定もあるので民俗村はこの辺で切り上げることにする。結局厳しい寒さの中、2時間ほどいたことになる。民俗村から再び水原駅に戻り、来るときチラッと見て気になっていた駅前の地下街で昼食を食べることにする。水原駅までは帰りはバスではなくタクシーで帰ろうと思い、待っていたがなかなか来ない。15分ほど待ってやっと一台の模範タクシー(料金がやや高めの外国人向けタクシー)がきた。「スーウオンニョクカージュセヨ」(水原駅へ行ってください。)約20分ほどで駅に着いた。やはりタクシーは速い。料金は10000ウオン(約1000円)程度かかったが。
 水原駅前はやはり人、人でごった返している。さっそく気になっていた駅前の地下街へ降りていく。両側にはラーメンやキンパプ(のり巻き)などを食べさせる安そうな店が並んでいる。私は韓国のラーメンが食べたいと思い、そのうちの一軒の店に入った。メニューを見ると、ラーメンは何と2000ウオン(約200円)である。さっそく注文すると、店のおばさんは山積みになっている韓国のインスタントラーメン(袋入り)をとりだし鍋にお湯を沸かして作り始めた。それに生卵とネギを入れてできあがり。どうやら韓国でラーメンを注文するとインスタント麺で作ってくれるようだ。私はソウルでも店先にインスタントラーメンが山積みになっている食堂をあちこちで見た。韓国のインスタントラーメンは最近では日本のコンビニでも買えるようになった。韓国で人気があるインスタントラーメンは「農心」という会社が作っている真っ赤なパッケージの「辛ラーメン」だそうである。韓国のコンビニでは1つ500ウオン(約50円)で売られている。ところで日本でもよく見かけるこの真っ赤なパッケージの「辛ラーメン」の辛は、辛いということではなく、農心の会社の社長?の名前だそうである。私は日本の韓国食品店で様々な韓国インスタントラーメンを買って家で作って食べたがこの辛ラーメンが一番飽きのこない味に感じた。韓国のインスタントラーメンはそのほとんどがキムチ味というか、唐辛子とニンニクの混ざったような味で、病みつきになってしまう味である。中にはカルシウムが添加されているラーメンや、化学調味料を使っていないラーメンなどちょっと変わったのもある。もちろんスープはオレンジ色をしていて辛いが食べ慣れるとだんだんとなれてくるのが分かる。麺は太めでインスタントと思えないほど腰があって歯ごたえが大変よい。ラーメンを作っていると、唐辛子とニンニクの混ざったような独特の匂いが立ちこめるが、この匂いこそソウルの街中の食堂街や市場で漂っている匂いである。
 話が飛んでしまったが、駅前の食堂で、日本でも食べ慣れた韓国ラーメンを食べ、また電車でソウルへと向かった。今回は時間の関係で民俗村と水原駅周辺しか見ることができなかったので次回はゆっくりと水原市内をまわってみたいと思う。
 ソウル市内に戻ると、私は新村にある現代百貨店の地下食品売場を見に行った。とにかく日本の百貨店では考えられないほどのすごい人の数である。客も多ければ店員の数が信じられないほど多い。何しろ一つの商品棚に一人の店員が付いているのである。ここは地下食品売場といってもどちらかといえばスーパーマーケットに近い内容の売場である。日本ではこのような売場にこれだけの店員を雇えるスーパーはおそらく一つもないだろう。韓国の景気は少しずづ回復してきているのだろう。私はここでゆっくりとおみやげを買うつもりだったがあまりの人の多さに買い物をする気を失った。このあと、おもちゃ売場や台所用品売場など各階を見て回ったが、人の数が多すぎてエスカレーターに乗るのもひと苦労だった。エスカレーターに乗るのに苦労したのは生まれて初めてである。
 現代百貨店はあきらめ、再び地下鉄に乗って鍾閣へ行き、駅の地下商街や仁寺洞周辺へ歩きに行った。ちょうど1年ぶりに訪れた仁寺洞は広範囲で道路工事が行われており、非常に歩きにくかった。が、数々の茶器や韓紙、筆などを売る店が立ち並んでいる街の雰囲気は大変気に入っている。鎌倉や京都の街の一角へ来たようである。30分ほどこれらの店を見て回り、今度は地下鉄で市庁へ向かう。この駅もまた地下商街が発達していて楽しめる。ロッテデパートへはここから明洞方面へ歩いて5分ほど、やはりすごい数の人である。また、ロッテの駐車場へはいる車が行列を作っている。この辺りは歩道がないので歩くのに気を使う。
 ロッテデパートの地下食品売場は韓国に来るといつもおみやげを買うところである。案の定、地下食品売場は人であふれ返っていた。私はここで、生鮮食品売り場へ行き、韓国産のニンニク、タマネギ、みかん等を買った。どれも本当に安い。韓国のおみやげというと朝鮮人参やキムチが主だが、これらは日本でも手に入りやすい。とすると、韓国産の野菜やくだもの類は安くておいしく、また日本では手に入りにくいので格好のおみやげになる。帰国時に成田空港で植物検疫があるがすぐに終わるし、検疫を受けて没になったことはない。ニンニクは日本のものよりも見た目は悪い分、匂いが強いので包装はきちんとしておいた方がよい。このフロアの別のスペースでは日本の物産展のようなのをやっており、日本の寿司やお菓子などが売られていた。特におなじみのこんにゃくを使ったゼリーはすごい人気だった。値段は日本で売られているよりも若干高かったにもかかわらず。
 夜は明洞へ行き、日本人観光客がよくいく石焼きビビンパの店、全州中央会館へ行った。この店はこれまで何度も行っているが、行く度にビビンパの美味しさを再認識させられる。
 1月16日(日)今日は日本へ帰る日で、飛行機の時間は11時50分ソウル発である。残された時間を利用してソウル駅へ再び行き、駅構内の店で朝食を食べたり、おみやげを買ったりする。泊まっているホテルは南大門市場に近いので、市場にも寄ってぶらぶらと歩いていると、どこからともなくあの「辛ラーメン」の匂いがしてくる。空港へは早めに着いたが、私が乗る便は出発時間がやや早くなって変更されていた。機内食(サンドイッチ)を食べたあと、ウトウトしていると、「あと15分で着陸」のアナウンスがあった。日本と韓国は距離だけはすごく近い。


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