た び の き ろ く
   初めてのソウル2泊3日の旅(1998年11月29日〜12月1日

☆今回の旅のダイジェスト

1998年

11月29日(日)

9:30

12:30

JAL1953便成田発

ソウル着

徳寿宮、ソウル駅とその周辺散策、明洞散策。ウェスティン朝鮮泊

11月30日(月) 終日 汝矣島、KBS放送局見学、鐘路三街、東大門市場、景福宮、ロッテデパート、明洞など。ウェスティン朝鮮泊
12月 1日(火)   ソウル駅とその周辺散策、その後空港へ向かい午後帰国便へ。

                       
今回、私は2泊3日という短い期間ではあったが初めての海外旅行へ行く機会をつくることができた。行き先は韓国の首都ソウル、旅行社ではソウル2泊3日で食事は一切付かない、すべてフリータイムのツアー(実質、ホテル付き往復航空券)を申し込んだ。
韓国へは、学生の頃から一度は行ってみたいと思っていたが、近いからいつでも行けるという思いと、パスポート取得の煩わしさから今回まで延び延びになってしまったのである。
今回の旅行の目的として、観光地を極力回らずに日常の韓国の街を見ること食事もなるべく屋台やガイドブックには載っていない(観光客相手ではない)店を利用すること学生の時よく日本で聴いていたラジオ放送、RADIO KOREA(KBS)の局舎内を見学させてもらうことの3点に決めた。

 11月29日(日)9時30分定刻通りにJAL1953便は成田空港を離陸した。まもなく「到着地ソウルの現在の気温は3度」との機内アナウンスがあった。真冬並みの気候である。私は26Kという窓側の席だったが私の隣にはやはり一人旅をしているらしい大学生くらいの男の人が座っていた。私は、窓から見える景色を写真に撮ったり、韓国のガイドブックを見たりしていたが、さっきから隣に座っているその彼が興味深そうにチラチラと何回もこちらの様子を見ている。「何だ、こいつ」と思いながらもガイドブックを読み続けていると、ついに「Excuse me,do you speak English?」と英語で私に話しかけてきた。予想もしなかった展開に私は少々とまどいながらも「Yes,a little」と答えた。彼はなんと韓国人だったのである。
そのあと、互いに自己紹介を簡単にしたあと、彼の流暢な英語と私のぎこちない英語で会話が始まった。彼は、カナダのバンクーバーへ旅行に行ったかえりで、途中の東京で一泊、これからソウルに帰るところだという。私が、ソウルに着いたら南大門市場を見るつもりだと話すと、彼のお母さんがその市場で働いていると言った。また、市場の行き方も教えてくれた。
機内食が済んだ頃、窓から韓国の山々が見え始めるようになった。木は全く生えていない、はだかの赤茶色の山々がずっと続いている。そのうえ、集落も見当たらない。そのうち、高度を徐々に下げはじめ、「あと15分でソウルに着陸」のアナウンスがあった。飛行機から見るソウル上空は、ぼんやりと赤みがかった本当にひどいスモッグである。そのスモッグを通して高層マンション群がたくさん見え始めてきた。時間があれば、これらの高層マンションを訪ね、韓国人のローカルな生活の様子を見たいと思う。
飛行機は12:00ちょうど、時間通りにソウルの金浦空港に着陸した。入国手続きはスムーズに終わり、日本から持ってきたお金を両替するため、空港内の両替所へ行った。8万円を差し出すと、一万ウオン札79枚と1000ウオン札数枚、硬貨数枚が出された。厚さにすると、週刊誌と同じくらいになる。一度に金持ちになった気分になったが、財布に入りきらないことが分かり、小出しにして数カ所にしまった。
空港内の指定された場所へ行くと、旅行社の韓国人係員が待っていた。宿泊予定のホテルまで専用のバスで連れていってくれるのである。バスに乗るため空港ビルの外に出て初めての韓国の空気を吸ったが、横浜と比べて、大変寒い。それに空気全体が(大気全体が)ニンニクのにおいになっている。これには驚いてしまった。しばらくの間気持ち悪かったが、じきに慣れてしまった。ホテルに向かうバスの窓からソウルの町並みや歩いている人々を見ていたが、ハングルの看板と右側通行という点を除くと日本とそっくりでなんだか異国に来た感じがしない。
私は、係員の方にKBSの放送局内を見学できるのかどうか聞いてみた。ガイドブックにも載っておらず、気になっていたのである。答えは、「見学できません。特別なアポイントメントが必要です。」だった。その答えに少々がっかりしたが、とにかく明日はKBSに行ってみようと思う。
ホテルには14:00頃に着いた。このホテルは、ウェスティン朝鮮ホテルといい韓国では五つ星の最高級ホテルである。場所も、ソウルの中心地、ソウル市庁に近く立地条件もよかった。横浜で言うと関内辺りになるのであろうか。部屋で荷物の整理などをし、少し休んでいたが、窓から外の街の様子を見ているうちにじっとしていられなくなり、すぐ近くにある昔の朝鮮の王宮、徳寿宮に歩いて行ってみることにした。
 ホテルの外に出るとやはり空気がニンニクのにおいになっている。地図の通りに歩いていこうとしたが、どうもうまくいかない。原因はすぐに分かった。道幅の広い車道ばかりで横断歩道が非常に少ないのである。従って、今度は非常によく張り巡らされた地下道を通っていくことにする。地下道というよりも、地下街である。高麗人参や、その他韓国の特産品を売る店でいっぱいである。15分くらい歩いて徳寿宮に着く。入り口で700ウオン(約70円)を払って中にはいると、広い庭園になっている。この日は日曜日ということもあり、家族連れが多く見受けられた。市民の憩いの場所になっているようである。婚礼衣装の姿も見受けられた。園内の歴史的な建物を見たあと、今度はソウル駅を見るため、すぐ近くの地下鉄の市庁駅へ向かった。
 駅からソウル駅には、地下鉄1号線に乗って1コ目である。切符は、自動販売機と窓口と両方で買える。私は、窓口で「ソウルヨク」(ソウル駅)と言った。運賃は450ウオン(約45円)だった。あまりの安さに驚いた。駅に掲げられていた路線図と運賃表を見たが、たいていの所へはこの運賃で行けるようである。車内ではスポーツ新聞を読んでいる人が目立った。スポーツ新聞は、日本のと同じように、一面の活字が大きく、派手な色使いになっている。またPCSと呼ばれる携帯電話がかなり普及しているらしく、あちこちで呼び出し音がなっていた。「ヨボセヨ?」「イエー、イエー」と言っているのが聞こえる。しかしながら日本のに比べると大きく、デザインも少しやぼったいように思われた。5分ほどでソウル駅に到着、一旦地上へ出て国鉄のソウル駅に向かった。この駅舎はれんが作りの大変立派な建物で、東京駅に似ている。駅構内には、キオスクのような店や食堂がたくさんある。切符の自動販売機は見当たらず、すべて窓口で買うようになっていた。また、ほとんどの列車が座席指定になっているようだった。どの窓口にも数十メートルもの長蛇の列ができている。記念に切符を買おうと思っていたがあきらめ、駅構内の本屋に入る。現在、韓国でもパソコン、インターネットは盛んなようで、その関係の雑誌や解説書が日本と同じようにたくさん並んでいた。
 再びソウル駅の外に出て駅前の広場のようなところでぶらぶらしていたところ、「アンニョンハシムニカ?」と声をかけられた。振り返ると警官がこちらに向かって敬礼している。きっと挙動不審に思われたのであろう、韓国語でどこへ行くのかというようなことを聞かれたのであるが、どこに行く当てもなくぶらぶらしていたところである。しかしそのことを韓国語で答えることができない私は、韓国語で「日本人観光客ですが」と言うと、警官はにこにこして行っていいですよというようなことを言った。
 夜はホテルから歩いて数分の韓国最大の繁華街、明洞にある小さな食堂に入った。壁にハングルのメニューが貼ってあり、その中からサムゲタン(雛鳥の中に餅米、高麗人参、ニンニクなどを入れ長時間煮こんだ栄養満点の料理)を頼んだ。座って待っていると、店のおばさんがペットボトルのミネラルウオーターとコップを持ってきてくれた。韓国の水道水は飲用にあまり適さないのである。また、ビールが飲みたいと思っていたが、韓国語で何というのか分からない。店のおばさんに「ビール」と言ってみると、「HITE」という韓国銘柄のビンビールを持ってきてくれた。そのあと、キムチが3皿も出てくる。それだけで満腹になりそうだが、どのキムチもあとをひく美味しさだ。ただ辛いだけでなく、コクと甘さが感じられる。メインのサムゲタンであるが、鶏のさっぱりとしただしがよくきいているうえ、肉も鶏臭さが全くなく大変美味しかった。全部で7000ウオン(約700円)を払い、「カムサハムニダ」と言って店を出た。
 
11月30日(月)、朝7時に起きる。ホテル内で朝食をと思ったが、どれも20000ウオン(2000円)以上する。日本ならともかく、韓国の物価水準から考えるとべらぼうに高い。そこで、昨日のうちにチェックしておいたホテル近くの「LG25」というコンビニに買いに行くことにした。LGとは、韓国有数の財閥である。そこでサンドイッチ2つとおにぎり、韓国緑茶そして63度30分殺菌の低温殺菌牛乳を買った。韓国でもパスチャライズド牛乳があるのか、と感心した。牛乳はふつうの牛乳の他、いちご牛乳やバナナ牛乳もあった。全部で5400ウオン(約540円)だった。ところで、店内では高校生たちが大勢でカップラーメンを食べていた。韓国のコンビニでは店内で食べられるのである。この後もあちこちのコンビニを利用したが、いつもカップラーメンのコーナーは高校生をはじめ子供でいっぱいだった。サンドイッチは、コロッケや、野菜がはさまっていたが、何ともいえない独特の香りがあった。おにぎりには肉のそぼろのような物が入っており、日本のと似ていた。お菓子のコーナーでは、韓国の練りようかんが売っていたので韓国にもようかんがあるのか、とびっくりした。このようかん、パッケージを見ると、ハングル文字で「カルシウム170ミリグラム含有」とあった。ようかんは、お年寄りが好んで食べるものだけに、この考え方はすすんでいるな、と思った。
 9時にホテルを出て地下鉄を2本乗り継ぎ、汝矣島(ヨイド)へ向かった。KBS(RADIO KOREA)の放送局内を見学させてもらうためである。アポは全く取っていない。汝矣島は漢江の中州にあり、国会議事堂、放送局、オフィスビルが集まる副都心になっている。40分ほど地下鉄に乗り、地上へ出ると、きちんと区画整理された広々とした街が広がっている。横浜のMM21の様である。駅構内の地図で調べると、KBSは駅から歩いて10分くらいの場所にあった。入り口を探していると、ハングルで見学者用の案内板が出ているのを見つけた。昨日、「見学はできません。」と空港であった係員の言ったことは間違っていたようである。中に入り受付の女性に、「私は日本人観光客だが見学はOK?」と韓国語で尋ねるとノートに名前と住所を書かされ、その後奥の見学コースへ案内してくれた。大変丁寧な応対であった。
 中はKBSの番組紹介パネルの展示があったり、ドラマ撮影の様子が見られたり、ラジオのスタジオの様子が見られたり、と渋谷のNHK放送センターの見学コースと同じ様な感じであったが、学生の頃からKBSを聞き続け一度韓国を訪れて見学していと思っていただけに、実際に放送スタジオなどをじかに見るとここから放送していたのか、と感慨深い物を感じた。ところで、私の他にも小学校の1,2年生くらいの子供たちが先生に連れられて団体で来ていた。社会見学だろうか。子供たちには見学させるのは少し難しいのではないのかなあと思いながら様子を見ていると、案の定、展示物にはあまり興味を示さず、きれいにワックスでつるつるに磨き上げられた床の上で次々にスライディングをして遊んだり、おしゃべりに夢中になったりしていた。子供はどこでも同じだ、とつくづく感じさせられた。この子供たちは、帰る際に放送局の建物をバックに記念撮影をしていたが、カメラのシャッターを押す時に「チーズ!」というのではなく「キームチー!」といっていたのが印象的だった。
 この後、地下鉄を利用して、チョンノサンガ(鐘路三街)、ムアジェ(母岳)、朝鮮の王宮キョンボックン(景福宮)、トンデムンシジャン(東大門市場)などを見て回り、夕方ホテルに戻った。夕方からは、ロッテデパートや韓国最大の繁華街の明洞を見て回った。途中でまた警察官に呼び止められてしまった。よっぽど挙動不審に見えるのだろう。
 明洞は先程も書いたように、東京の銀座と同じ様な雰囲気である。が、近代的なブランド品の店に加え、昔ながらの韓国の食べ物屋台も共存し、人々の活気いっぱいの街であった。夕食は、例によってメインストリートから離れた小さな店に入り、石焼きビビンバ(韓国風混ぜご飯)を注文した。ここでも食前にキムチが3皿出てきたが、量が多すぎて大半を残してしまった。しかし、納豆を混ぜたキムチや、シシトウと煮干しのキムチなど、日本では考えられないキムチを食べることができた。その後、屋台でサツマイモを油で揚げたお菓子や、干し柿などを買った。他にもするめ、タラなどを焼いて売っている屋台、韓国のもち、鯛焼き、今川焼き、焼き栗の屋台など数多く見ることができたが、とりわけ今川焼きの屋台は人気があるようで、どこも大変な人だかりがしていた。
NIKEの店にも入ってみたが、エアマックスなどランニングシューズの価格は、日本の三分の二から半額になっていた。
 明洞の店をすみずみ見て回り、まだ飲み足りないので途中コンビニでビンの360ミリリットル入りの真露焼酎(850ウオン、約85円)とタラの干物(1500ウオン、約150円)を買ってホテルに戻ったのは22時を回っていた。明日は帰る日、朝10時30分にホテルに係員がバスで迎えに来ることになっている。

 12月1日(火)7時に目が覚める。例によって朝食はコンビニに買いに行く。部屋に戻りテレビをつけると、ぬいぐるみと子供たちが出てきてポンキッキの様な子供向けの番組をやっている。別のチャンネルでは、朝の連続ドラマをやっていた。
 係員がホテルに迎えに来るまでまだ2時間ほどある。そこで、私はソウルの通勤電車を経験しようと、再び地下鉄に乗りソウル駅に行った。無事ソウル駅に着いたものの、東京顔負けの混み方であり大変疲れてしまった。通勤客に混じって一緒に歩いていると、私も一ソウル市民になった気がする。駅構内の食堂を見ていると、ハングルで「ウドン」と書いてあるのが目にとまった。ウィンドウにあるサンプルを見ると、日本のかけうどんのようなものである。確か値段は2000ウオン(約200円)くらいだったと記憶している。コンビニで朝食を買わずにこの店で食べればよかったと、少し後悔した。キオスクで記念にスポーツ新聞でも買おうかと思って見ていると、ちょうど雑誌のコーナーに日本の「週刊少年ジャンプ」そっくりの漫画雑誌がおいてある。私はそれを買ってみた。「オルマエヨ?」値段を聞くと、2000ウオン(約200円)であった。よく見るとその漫画の名前はハングル文字で「ジャンプ」とあった。中を読むと、連載ものの漫画がたくさん載っているほか、コミックの広告も載っている。日本で人気のアニメ「クレヨンしんちゃん」もコミック化されてどうやら韓国バージョンになって売られているほか、テレビでも放映されているようだ。
 ホテルへ戻る帰りの地下鉄の車内で物売りが乗り込んできた。ガイドブックには、ガム売りがいる時があると書いてあったが、今回はガム売りではなかった。車内の通路の真ん中に立ち、テレホンカードくらいの透明なプラスチック製のものを掲げてなにやら説明している。よく聞いてみるとこれはどうやら薄型の虫眼鏡のようなもので、名前は「Magic Glass」というらしい。値段は2000ウオン(約200円)とのことであった。買う人がいるのかと思って見ていると、中年の男性二人が買っていた。いま思えば、私も記念に買っておけばよかったと思う。
 10時30分、定刻通りに係員の方がホテルに迎えに来る。途中、美味しいキムチを売っているというおみやげ店を案内してもらい、空港へ向かった。わずか3日間という短い時間で当初の目的はすべて果たせなかったものの、初めての海外旅行ということもあり印象深い旅になったことは間違いなかった。
 韓国は、いま現在も北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)と「休戦」状態にある。戦争は終わってはいないのである。私はカメラを持っていったが、国防上の理由から空港、鉄道関係、高所からの撮影は禁止されているとガイドブックに載っていた。異常なまでに発達した地下街は、戦争が始まったら即、防空壕の役割を果たすことになるだろう。高速道路や、KBSの放送局があるヨイドには、やけに広い何もない広場があったが、臨時の飛行場、或いは滑走路に使われるかもしれないと別の本で読んだことがある。初めての海外旅行で楽しいものにはなったが、一方でこのような現実も忘れてはならないとつくづく感じさせられた。




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