1.はじめに
今、われわれが主に利用しているエネルギーは石油、石炭、天然ガス、水力、原子力などです。
そして、最近地球温暖化抑制を目指し、ソーラー発電、風力、可燃廃棄物(バイオマス)を利用して行く動きが出てきました。
そこでもう一度、地球に存在するエネルギーを見直してみると、大きく3つに分類されることが分かります。
太陽エネルギー・・・・・・・石炭、石油、天然ガス、水力、風力、バイオマス(動植物)、潮力、太陽光発電(シリコン発電パネル)、太陽熱温水器など
原子力(将来は核融合)・・・・原子力発電
地熱(マグマの有する熱エネルギー)・・・・地熱発電など
現在主流となっている石油は資源の枯渇が見えてきており、天然ガスについても遠からず枯渇に至ることは明らかな事実です。石炭を含むこれらのエネルギー資源はすべて過去に太陽エネルギーによって生み出されたものです。今後これらを継続して拡大使用して行くと、資源の枯渇が早まるばかりでなく、固体化している炭素を二酸化炭素として大気に放出することで温暖化が促進されることはすでにご承知のとおりです。
二酸化炭素を出さないエネルギーとなると、先ず原子力が挙げられます。しかし、使用済み核燃料に含まれるプルトニウムは、扱いを誤ると核兵器に化ける危険性があり、ある制限のもとで使用しなければならないという制約があります。
そこで、考えられるのが太陽エネルギーを直接利用する方法です。石油、石炭、天然ガスのように太古の昔、太陽のエネルギーで生育した植物が地中に埋もれ炭化したものの利用を極力抑えて、太陽からのエネルギーを別の形で利用する手法を見出すことが今われわれに課せられた重要なテーマです。
数千万年~数億年かけて蓄積された太陽エネルギーを短期間に一挙に消費すれば地球の環境が変わるのは当然です。しかし今も無尽蔵に地球に降り注いでいる太陽エネルギーをもっと有効に利用すれば二酸化炭素を撒き散らすことがなくなり、その課題の解決策になると思います。
太陽エネルギーを直接エネルギーに変換するシリコン発電パネルを用いた太陽光発電システムがかなり普及し始めました。しかし、まだコストが高く、また、シリコンを発電パネルにするまでに多くのエネルギーを使用するなどの課題があります。より自然環境に負担の少ないもう一つの利用方法の開発が急務だと思います。
2.太陽の熱エネルギーを直接動力、電気にできるスターリングエンジン
米国では内陸砂漠地帯(アリゾナ)で大規模な太陽熱によるスターリングエンジン発電の実験を開始しております。日本では砂漠はなく、雨が比較的多く、日照時間が多くないので、太陽熱を直接利用するスターリングエンジン発電は向かないような気がします。しかし、世界を見渡せば、全く雨の降らない広大な砂漠があります。日本で利用しなくてもよいのです。安価で効率のよい発電システムが出来れば輸出できます。今は潤沢なオイルマネーで潤っている中東の産油国ですら、石油が枯渇した時の次の手を考え始めています。
日本は資源はないが、ものつくりが得意な国です。代替エネルギー技術を確立することは日本にとってこの上ないチャンス到来です。・・・・・等などと考えながら太陽光利用の小型スターリングエンジンシステムの実験に取り掛かりました。
スターリングエンジンの歴史は非常に古いのですが、種々の事情からこれまで本腰を入れた開発がなされてこなかったと云えます。しかし今このスターリングエンジンが見直されつつあります。
私自身もここ10年来、スターリングエンジンに関わる会社の技術顧問をしながら、これが本当に次のエネルギー源に成りうるか考えてきました。まだ確信は得られておりませんが、米国サンパワー社の1KWフリーピストンタイプ(FPSE)などを実際に動かし、データーを取ってみると、かなり可能性がありそうに思えます。また米国スターリングテクノロジー社の3KWスターリングエンジン(クランク式)の技術を導入し、国内で製作、テストしたことで、スターリングエンジンの特徴、機能などがかなり具体的に把握できたと思っております。
これからは、このスターリングエンジンシステムを日本において如何に早く、その将来性を見極め、商品化することが重要であると考えております。
3.太陽熱利用スターリングエンジン試作機(プロトタイプ)の概要
スターリングエンジンの燃料としては天然ガス、バイオガス、バイオマスなどかなり多様なものが使えます。1KWFPSEの場合はガス燃料用の設計であるためプロパンガスで稼動しましたが、勿論天然ガス、バイオガスでの稼動も可能です。
3KWスターリングエンジンの場合は、この設計がバイオマス(木質チップなど)用であるため、より幅の広い燃料での稼動が可能です。実際に稼動した実績では、間伐材や廃材のチップ、木炭、薪、紙類、廃食用油、バイオガス(主成分メタン)、灯油、プロパンガスなどがあります
しかし、これらは全て太陽エネルギーにより固形化された炭素、水素を再燃焼させたエネルギーです。バイオマスを燃料にすることは京都議定書をクリアーしますが、二酸化炭素は排出されます。そこでこのスターリングエンジンを太陽熱で直接駆動する方式が浮かび上がってきます。これであれば全く二酸化炭素の排出はありません。
ここでご紹介する試作機は全くのプロトタイプであり、実用的ではありませんが、順次開発を進め、将来性があるかどうかの見極めをしていきたいと考えております。
3.1 集光装置について
太陽の光を直角に受ける面の照射エネルギーは約1KW/m2です。斜めから受ければこの量が少なくなります。従って、照射エネルギーを十分に得るためには、太陽の方向に常に向くようなメカニズム(日周運動に同期)が必要となります。
天体望遠鏡の赤道儀と同じ仕組みですが、太陽は恒星の動きと異なり、地軸の傾きの関係から、これに合わせるためには、少し余分な考慮が必要です。
東京を例にとると、冬至の太陽の南中時の高さは約31度(最も低い)、夏至の時が77度(最も高い)となり、1年を通してこの間で変化します。集光装置はこの太陽の高さと日周運動に追随させる必要があります。プロトタイプでは経緯台構造とし、別途前述の追随機能が取り付けられるように考慮しております。
集光用の反射鏡はアクリル樹脂に背面メッキの球面体反射鏡を用いております。直径は80センチ、焦点距離約50センチで、原理的には約500Wの太陽エネルギーを集めることが出来ます。将来、大型の反射鏡を作る場合は、小型の平面鏡を放物面に合わせて配置する方法がよいと思います。
3.2 スターリングエンジンについて
手元にあった小型のスターリングエンジン(出力数W)を用いることにしました。先ずはどんな調子で回転するかが当面のターゲットです。米国製でソーラースターリングエンジン アリゾナとの刻印がありますが、詳細は不明です。これを写真―1に示します。
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