関さんの森 里山としての再生計画(案)

 

 

2017.5.28 T.Hoshino

 

1.    はじめに

 

私は関さんの森の近くに住む自然を愛好する者です。過去30数年に亘り春夏秋冬、関さんの森を観察してきましたが、里山としての手入れが十分とは云えず、夏になると蚊の大きな発生源となり、とても散策できる状態ではありません。関さんの森は首都圏の数少ない里山だと思います。里山は自然と人が共存しながら成り立っていくものと思っております。現状では里山としての存在価値が無くなっているのではないかと思います。最近の状況を写真で示します。

 

Fig.1,2,3は昨年(2016年)8月2日撮影

 

 

Fig.1 森の中央広場(草原)

20160802森の中央広場02

 

Fig.2 森の中央広場の散策路

20160802湧水池01

 

Fig.3 湧水池

 

 

Fig.4152017519日および527日撮影

 

 

Fig.4 森の中央広場 草が生い茂っている

中央広場01

 

Fig.5 森の中央広場

20170519湧水池01

 

Fig.6 湧水池01

湧水が少なくほとんど日が当たらない

 

湧水池01

 

Fig.7 湧水池02

 

湧水池02

 

Fig.8 湧水池03

湧水池03

 

Fig.9 湧水池04 かなり汚泥が堆積している

倒木による通行止

 

Fig.10 倒木で通行止

 

倒木による通行止02

 

Fig.11 倒木で通行止(詳細)

竹の伐採放置

 

Fig.12 伐採した竹が放置

竹の切り株01

 

Fig.13竹の切り株が多数ある

竹の切り株02

 

Fig.14雨水が溜まっている。

これが蚊の発生源となる

あおすじあげはの食草 楠の木

 

Fig.15おすあげは食草 くすのき

 

. 生態系(動物)の変化

私の趣味はどちらかと云うと、動植物の内、動物系です。したがって関さんの森の動物系の変化について述べさせていただきます。

 

2-1ふくろう

6月になると関さんの森から犬の遠吠えのような“あおばずく”の鳴き声が聞こえてきました。しかしここ数年声が聞かれません。ふくろうは松戸市の鳥に選ばれていますが、このままでは困りますね。

 

2-2 秋の虫

1975年(昭和50年)ころは9月になると森の中央の草原で秋の虫“ウマオイ”の声をよく聞くことが出来ました。また“クツワムシ”の声も聞こえました。蚊はそれほど多いとは思いませんでした。しかし2000年を過ぎると“アオマツムし”がとって代わり、蚊が急激に増加しました。

 

2-3 トンボ、ヤンマ

19751985年ころはかなり多くのトンぼが生息しておりました。盛夏には“オニヤンマ“をよく見かけました。”ギンヤンマ”、“カトリヤンマ”も時々見かけました。

 

おにやんま

 

Fig.16 オニヤンマ

 

カトリヤンマは竹林に生息していたようです。

しかし最近では殆ど見かけなくなりました。トンボ、ヤンマの幼虫は水棲です。森の池が汚れていてヤゴが生息できなくなったのではないかと思っております。

 

秋には森の中央の草原や池のまわりで数種類のアカトンボを多数見かけましたが、ここ数年その数が大幅に減少しています。

2000年〜2010年に関さんの森で撮影した写真をfig.8fig.11に示します。

 

なつあかね

 

Fig.17 なツアカネ

りすあかね

 

Fig.18 リスアカネ

まいこあかね

 

Fig.19 マイコアカネ

このしめとんぼ

 

Fig.20 コノシメトンボ

 

2-4 蝶

“クロアゲハ”(最も多い)、“オナガアゲハ”(少し)、“ジャコウアゲハ”(まれに)、“アゲハ”(多い)、“キアゲハ”(やや多い)、“アオスジアゲハ”(多い)などが生息しておりましたが、最近では南洋系の “ナガサキアゲハ” ばかりが目立ちます。食草に変化があったのかも知れません。

また、高い木の梢周辺を住処にしていた“ゴマダラチョウ”の姿はなく、南洋系の“アカボシゴマダラ”がとって代わっています。これらは明らかに地球温暖化の影響によるものと思われます。

Fig.12fig.17関さんの森で見られる蝶です。

あかぼしごまだら

 

Fig.21 アカボシゴマダラ♂

 

20170519あかぼしごまだら ♀

 

Fig.26ら アカボシゴマダラ♀

ごまだらちょう

 

Fig.22 ゴマダラチョウ

ながさきあげは

 

Fig.23 ナガサキアゲハ

くろあげは

 

Fig.24 クロアゲハ

あおすじあげは

 

Fig.25 アオスジアゲハ

 

これ以外に、モンキチョウ、キチョウ、モンシロチョウ、スジグロチョウ、ツマキチョウ、アサギマダラ(稀に)、ミスジチョウ、キタテハ、アカタテハ、ルリタテハ(稀に)、ツマグロヒョウモンなどを見ることが出来ます。

 

2-5 セミ

セみだけは変わっていないようです。特に“アブラゼミ”が多く、森の中を蚊に追われながら散策するとせみの抜け殻が多数見つかります。“ニイニイゼミ”(近年数が減っている)、“アブラゼミ”、“ミンミンゼミ”、“ツクツクボウシ”、“ヒグラシ”(鳴かない年もある)などが生息しています。

 

2-6 池の動物

以前はもう少し池の水量が多かったのですが、最近は地下水のくみ上げの影響か、湧き水が少なくなり、茶色くよどんでいます。“エビガニ(ザリガニ)”が生息しており、子供たちがよくエビガニ釣りに来ていましたが、最近は見かけなくなりました。エビガニは、まだ生息していると思いますが、水が濁っていてよく見えません。以前は“メダカ”を見かけましたが、もはや生息できる水質ではなさそうです。

夏場に蚊の多いのはこの池に原因がありそうです。魚が生息していれば食べてくれるのにその可能性はなくなっているようです。

 

2-7 蚊

夏になると関さんの森は蚊に占領されます。とても散策などできません。蚊の発生原因は前述の池と竹の切り株だと思います。竹の増殖が激しく、伐採しているようですが、切り株に雨水が溜り、蚊の発生の温床になっているようです。

 

2-8 スズメバチ

森の下草狩りが十分できていないため、スズメバチが巣を作るようになっています。スズメバチがいるから下草刈が出来ないのか実態はよく分かりません。

 

2-9 植物

大きな木は別として中央の草原の草木の種類が毎年変化しているようです。毎年調査しているようですが詳細はわかりません。

 

 

 

3. 関さんの森 里山としての再生計画

 

3-1 概要

自然の変化は植物系の観察より動物系の観察の方が顕著であると考えております。今関さんの森は“関さんの森を育む会”のみなさんの手で整備が進められているようですが、状況は上述のとおりです。これからの関さんの森はどうあるべきかを討議し、目標を立てて進める必要があると思います。整備には多くの工数と費用がかかります。ボランティアだけでは不十分です。目標を明確に掲げ、県や市などで計画的に予算を確保するなどが必要と思われます。

 

3-2 近くの見本となる施設

市川動植物園の散策路が見本として良いと思います。かなり手入れをしているようですが、無料で散策できます。湧き水が比較的豊富で、7月にはホタルが飛び交います。

 

3-3 当面の目標:夏場の蚊の発生を抑える

 

1)中央草原の周回通路の内側の竹を伐採する

 

2)竹の切り株を取り除く(全般)

 

3)伐採物は現場に保留せず、廃棄物として処理する。

 

4)倒木や朽ちた木、枯れ枝はできるだけ取り除く

 

5)池の周りの小木は伐採し、池に日光が当たるようにする

 

6)池はたまった泥を適宜除去する。あまり深くはしない(安全確保)

 

7)水質浄化を検討する:最も難しいがこれをやらないと蚊は減らない。

 

湧き水に期待することは難しいと思う。池の水を循環させる装置が必要と思われる。

 

蚊を除去するために、薬剤散布は行うべきではない。他の生態系を破壊してしまう危険がある。

 

8)魚(ふな、めだかなど)を放流する

 

9)周囲に安全柵を設ける

 

10)森の下草刈を定期的に実施する。

 

11)散策通路を明確にする.中央の草原内にも散策路を設ける。

 

12)野草の育成を進める:特別の野草でなく、近辺に昔からある野草とする:外来種はできるだけ除去する。

 

. 防犯について

また松戸市か・・・松戸市は犯罪が多く発生しています。人気の少ない暗い森は犯罪が発生しやすいと思います。幸いにも関さんの森で問題が発生したとは聞いていません。出来るだけ速やかに森の整備を行い、犯罪が起こりにくい環境にすることが必要です。

 

関さんの森が地域の人に愛される里山に早くなることが必要です。関係各位のご理解をいただき、早く実現できることを期待しています。

 以上

 

参考資料

1              関さんの森を育む会

2              関さんの森 埼玉県生態系保護協会