可搬型電子冷却水槽の製作    友鮎の運搬に最適!!

  

 
1.はじめに

友釣りのシーズンにはまだ時間がありますが、そろそろ準備を始めてもよい時期とな

りました。

友釣りでよく悩むことがあります。それは如何に友鮎の活きの良さを維持するかです。

泊まり込みで現地に行った場合、前日に友鮎を購入しておく必要のある場合がありま

す。また、釣り場を車で移動せざるを得ない場合もあります。この様な時に最適な可搬

型電子冷却水槽を作りましたので紹介いたします。昨年の夏は可成りの時間を費や

し、実用試験しました。滋賀県から千葉県まで、鮎をこの水槽に入れて車で運搬しまし

た。また、72時間連続で、この水槽で鮎を飼ってみました。いずれの場合も鮎は非常

に元気な状態に維持出来ました。


2.原理と構造の概要

鮎を水槽で生かしておく(数日間)ための最低条件は、@水温を15℃程度に維持出

来ること A常に酸素(空気)を水に送り込んでやること B水の老廃物を除去すること

です。ここで最も困難なのが、水温の維持です。夏場の車のトランクの中の温度は4

0℃を超えます。通常の方法では鮎は30分も保ちません。冷却が必須となります。

電子冷却にはペルチエ効果を利用した半導体素子サーモモジュールを用います。

サーモモジュール

サーモモジュールは可搬型の冷蔵庫に利用され販売されております。また、最近の

パソコンのCPUの冷却、天体観測用の冷却CCDにも利用されております。直流電圧

を加えると、片方の面で吸熱し、片方の面で発熱します。この素子を利用すれば、水

槽の水温を下げることが出来ます。しかし、普通の冷蔵庫の様に、急速に温度を下げ

ようとすると、素子も大型となり、かつ、大電力が必要となります。そこで、効率よく実現

するために次の配慮が必要となります。

◇水槽は断熱構造とすること

◇注入する水は15℃程度のものとすること…友鮎を購入した時の水を用いる

◇電子冷却能力は、初期の水温を維持出来る最低限の容量とする…勿論、常時水槽

には空気を送り込む必要があるので、これによる水温の上昇は抑えられること。

3.作り方の概要

(1)水槽

水槽は市販のクーラーボックスを購入しました。私が購入したものを紹介します。キャリ

ッジクーラーボックス 15リットル 貝印製 この蓋を改造し、上部から冷却ブロックを挿

入し、ブロックの一部が水中に没するように配置しました。

蓋に穴をあけ、冷却ブロックを差し込む

(2)冷却ブロック

冷却素子には日本ブロアー(株)のサーモモジュールを購入して用いております。

仕様は次の通りです。

型番             SM−06−127M

最大吸熱量         51.4W

最大電圧           15.4V

最大電流           6A

最大温度差         70℃

モジュール選択の目安は、吸熱量と最大電圧です。特に、電源が車のバッテリである

ことから、これに耐えられる最大電圧値を選ぶ必要があります。また、温度制御を省略

するために、実験的に最大吸熱量が51.4Wのものを選びました。

サーモモジュールの放熱側はアルミ製放熱板とし、吸熱側には水中に一部が没する

ような構造としたアルミブロックを用い、両者の間にサーモモジュールがサンドイッチ状

となるようにネジで取り付けます。勿論サーモモジュールの両面には熱伝導を良くす

るためにシリコングリスを塗布します。また、放熱板と吸熱ブロックとの隙間は、水の浸

入を防ぐため、シリコン樹脂を充填します。放熱板の上部には、DC12Vで駆動できる

放熱ファンを取り付けて発熱を強制的に放散させます。

今回使用したファンはDC12V6Wのものを秋葉原で購入してきました。

これらを組み上げたものが、下図の冷却ブロックです。

      

冷却ブロック

吸熱ブロックは今回はとりあえずアルミの塊のような構造としましたが、アルミサッシなど

を利用して作ってもよいと思います。要点は蓋を閉めた時、吸熱ブロックが水中に没

し、水の保有する熱を吸収できるような構造にすることです。吸熱ブロックが水に接し

ていないと、冷却効果は大幅に低下します。

冷却ブロックは水槽の蓋の上部に飛び出しており、強制冷却用のファンが回転してい

るため、触ると危険です。そこで、当初のクーラーボックスに付いていた取っ手部の部

品を裏返しにして、ファンの上に取り付けました。

水を冷やすだけでは、鮎は生きられません。電池で動くエアポンプを取り付けます。

周辺の暑い空気を水中に送り込むため、温度の上昇が気になりますが、以上の仕

様であれば、この上昇は抑えられます。エアポンプについてはDC12V用が入手でき

なかったので、単一乾電池2個で動作するものを用いております。

さて、どの位の消費電力となるかですが、以下に実測値を記します。

電源電圧12VDC(バッテリ直結)

電流   3.5A

ファンを含めた電流   3.7A



もし、車のバッテリと別にバッテリを準備するとしたら、40AHのもので10時間連続使

用できます。また、AC100V電源を利用する場合はこの電流が流せる直流電源が必

要です。下図は今回同時に作成した電源装置の外観です。

電源装置(AC100V→DC12V)

4.使ってみた様子

昨年8月に滋賀県にある親戚の家に行き、前日3尾の友鮎を購入しました。バッテリと

DC電源を用意しておりましたが、DC電源を用い、約10時間この冷却水槽中に入れ

ておきました。翌朝すこぶる元気のよい鮎を友に利用できました。水温は前日が18℃

で翌朝は16℃でした。

また、その後3日連続でこの水槽中で4尾の鮎を入れて様子をみましたが、3日後も全

く変わらない元気さを維持しておりました。ただし、3日ともなると、排泄物でかなり水が

汚れておりました。長期に亘る場合はフィルターが必要です。これには更に一工夫い

ります。

5匹の鮎を滋賀県から千葉県まで、この水槽を用いて運搬しました。車のトランクの中

で約12時間の旅行でしたが、元気な姿のまま、自宅に持ち帰ることができました。水

温の変化は殆どありませんでした。

今年の友釣りではフルに利用するつもりです。

みなさんも一度試されては………

5.ご参考

サーモモジュール:日本ブロアー株式会社 

            千代田区外神田3−5−13

            電話:03−3251−3511

クーラーボックス:アウトドア用品店やホームセンターのレジャー用品売場で、15リットル程度のものを入手

放熱板:秋葉原電気街で

ファン:同上

以上