同期生の書いた本


「イエロー 差別される日本人」 渡辺幸一著(栄光出版社 ¥1500)

国際社会で標的にされる日本人。
イギリスの金融街で生きる著者が、自らの体験を通じて、日本人はなぜ海外で差別され続け、目の仇にされるのか。その背景にある戦争という負の遺産を考察し、日本人の誇りと国際性を問う異色の一冊!

 私は本書の中で「日本人は、自身が揶揄され、侮辱され、差別されていることに鈍感であると」指摘をしている。外国からどう思われているかひどく気にしているように見えながら、実は日本人は国際社会の中で、また、歴史の文脈の中で、自分たちの位置をみさだめることに熱心ではない。これらのことを総括すると、どうしても日本人の<内向き>の姿勢に行き着く。(あとがきより)

国連を訪れてまず気が付くことは、その建物が世界中の国が世界平和を求めて協力して建設されたものであるということだ。ノルウェーから運ばれた材木、会議場を敷き詰めたすばらしいペルシャ絨毯。日本は建設費の数十%を負担しているにもかかわらず、日本の香りのするものは目に入らなかった。ただ、入り口近くに置かれた粗末な展示用戸棚の中に、8時の時を示したままの柱時計と少し変形した湯のみ茶碗が、無言で出迎えただけであった。
12月8日、ケーブル・テレビは朝からずっと真珠湾攻撃や硫黄島上陸の色あせた記録映画を延々とやっている。日本で見たことのない惨い戦いの記録。
1988年秋、シアトルの日本語補習校の女性教師が学校近くの住人から空気銃で発砲され、片目を失明した。土、日に開かれる日本語補習校で運動会の練習をしていたのである。撃たれた理由は?
あの、周りを省みない騒音だと私は思っている。

1989年初め、ABCニュースは昭和天皇の葬儀中継と共に日本を特集した。東北地方の南部鉄の里も紹介された。翌日、長女は学校で 'Do Japanese people live in thatched houses?'(藁葺きの家)と聞かれた。数日後、私は日本について3年生全員に2時間の講義をした。

以上はほんの1年間アメリカに住んで感じ、体験した一部である。私はマイアミ日本語補習校の教師を偶然することになったが、企業戦士の大変さは子供達を通じて痛切に感じた。クラスの子の父親が心労で胃に穴が空き、手術をした。
渡辺君はマイノリティーの立場でアメリカ・イギリスに暮らしてはや18年。利害関係の最もシビアーな世界で生きている。でも、どんなに辛いことがあっても渡辺君は日本に帰ろうとしない。それは、それ以上に暖かい友人や学校のスタッフや社会のシステムがあるからではないだろうか。制度や形式だけにとらわれ、中身のないことが多々あるこの国にいて、いささかうんざりしていた私にとって、大学院の講義は, 授業を終えた後、大学院で学ぶ現役の先生達で熱気にあふれていたし、小学校やピアノの先生の個を重んじる教育に子供達も満足していた。
渡辺君の体験からわかるように、日本は世界に向かって現在・過去・未来に関してアピールのしかたがまだ足りないのではないだろうか。この本から、日本の周りにある分厚い壁を感じてほしい。(mm43:中尾(中野)秀子さん書評)



「イエロー:差別される日本人」を、1週間前の当直のとき(1999.6.1)に、いっきに読みました。渡辺君の洗練された文章と、異国の地で、しかも生き馬の目を抜くような金融街で奮闘されているようすにひきこまれるように読んでしまいました。彼とは弁論部でいっしょに活動しましたが、一度お会いしたいという欲求がつのってきました。こころから彼にエールを贈りたいと思います。(mm43:3年2組:森岡@愛媛県瀬戸町)


  

写真集「大吟醸」河野裕昭著

短歌集「霧降る国」渡辺幸一著

写真集の方は、河野裕昭君の作品。彼は、独学で修業し、これまでにも「カネミ油症」などの社会派の写真集等を出版しています。今回の「大吟醸」は、10年近くにわたり全国の蔵元を巡り、寝食を共にし米の醸し出す表情をあますところなく伝えています。稲穂の風になびく様から、その米を蒸し、そして無表情な酒米が酒麹と出会うことにより、一つの生命体としての息吹を吹き込まれていく過程が、酒造りの工程を通して撮られています。また、この酒米に息吹を吹き込む杜氏や蔵人達の真剣な顔つきや、息抜きの時の柔和な顔など、作者の日本酒特に大吟醸に対する入れ込みがそこはかとなく楽しみに見ることができます。この作者には、日本全国「水車の旅」等の作品集もあります。

短歌集の方は、渡辺幸一君の作品。彼は、現在イギリスに在住し、日本系信託銀行に勤務しながら歌作しています。彼は、西洋人の偏見に遭いながらも、短歌を通して日本人の心を伝えようとしています。彼の作品のなかに「窓枠にJAPとナイフで刻まれし汽車に揺られて出勤しをり」・「人種百あれば正義も百ありと思い知りつつ夜道を帰る」という歌があります。日本からでは分からない外国(特に西洋の)での生活が見えてくるようです。
また、朝日新聞の折々のうたで大岡信さんが書いていますが、「犬の子の耳やわらかく幾度も形を変えて風を聴きをり」こうした歌も作っているのです。
彼は、こうした国での生活を通じ、ひたすら日本に投稿を続け平成7年度の「朝日歌壇賞」・平成8年度の「角川短歌賞」を受賞しさらに平成9年度には「北九州市民文化賞」を受賞しています。この「霧降る国」は、角川賞受賞後の第一歌集であり、異国でのさまざまな生活を丹念に詠み日本人とは何かを問いかけているようであります。

この二人の作品が世に出たことを記念して一昨年の秋に、門司港レトロ地区、旧門司税関ギャラリーにおいて「写真&短歌・大吟醸賛歌・二人展」を開催しました。その時の剰余金で門司高校並びに北九州市立図書館(五ヵ所)に上記の本を寄贈していますので、興味をお持ちの皆様には、そちらでの閲覧をお願いいたします。(同窓会誌第19号「二冊の本」碓井正君記より)



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