長良川サイクリングロード



サイクリングロードの“記念碑的建造物”犀川の橋

岐阜市忠節橋から海津郡海津町の国営木曽三川公園中央水郷地区センターまで、長良川に沿って公称36.5kmの自転車道が県道として整備されています。平野の川沿いですから、ほぼ平坦な道で、変速機能のない自転車でも特に苦労せずに走ることができます。まあ、往復とも漕ぐ必要があるので、標高の高いところへ行って戻るのよりもしんどいかもしれません。忠節橋から2時間とちょっとの道程です。梅雨の最中で曇天でしたが、ここを走ってきましたので紹介します。

自転車道は忠節橋の左岸(岐阜駅のある方)の交番の横の階段から始まります。ここから河渡橋までは堤防の外側中腹に自転車道がつけられていますが、休日は堤防上の道路も自動車通行止めとなりますので、休日は堤防上を走ると交差点もなく快適です。忠節橋のすぐ下流ではちょうど鮎の遡上調査をやっていました。


起点の忠節橋/鮎の遡上調査/JR東海道線をくぐる

大縄場橋、鏡島大橋をくぐって15分ほどで河渡橋です。ここまでは左岸ですが、自転車道はここから右岸になります。案内板が親切ではないのですが、河渡橋の上流側の歩道を反対側に渡ったところに大きな看板があり、右岸の入り口があります。入り口はやっぱり階段です。取り付け道路の下の狭い穴をくぐり、しばらく行くと堤防の上に出ます。このあたりの堤防は最近改修されたばかりので、たいへんきれいな道です。

しばらくすると東海道線の橋梁が近づいてきます。この鉄橋の下を越えるのに、自転車道はなかなか複雑な経路をとっています。この先も、自転車道が出来る前からある橋を越えるところはなかなか苦心して造ってあるところが多いようです。平行する自動車道を横切り、東海道線のガータ桁の下をくぐるのですが、ここが結構低いのでたまたま列車が通るとなかなか恐怖感があります。電車の床下を覗くのが趣味の人には良いかもしれませんが、耳栓をしないと耳に悪いでしょう。最近は車両の便所がほとんどタンクの循環式になったのは幸いなことです。

この先しばらくは堤防の下を通ることになりますが、この付近は直前とうって変わって、道はかなり荒れています。車輪に草がからまる感じです。国道21号線の穂積大橋もなかなか苦し紛れの取り付け方で越えますが、国道の下をくぐった所に自転車道の看板があります。なんか注意書きがありますが、あまり情報量のない看板です。

やがて、堤防道路と入れ違いに、自転車道は堤防上に上がります。ここで堤防道路を横切るところがあるのですが、ここはなかなか危険を感じます。ちょうど、下から坂を登ったところで、下から上がってくる車からは見通しが悪いのですが、堤防道路は猛速運転しなければならないという強迫観念を持つ運転者が多いためか、制限速度40km/hのところ80〜100km/hで走っている車も少なくありません。充分注意をして渡る必要があります。


墨俣一夜城/長良川の川面/堤防上の道

ここからは見晴らしの良い堤防上の道路を走ります。全線の中で最も快適なところだと思います。やがて、右手に立派な天守閣が見えます。墨俣一夜城というこのお城、近年建てられたのですが、史実では一夜で造ったわけで柵や砦程度だったものを立派な天守閣を持ったお城として造るのはどうしたものかと地元でももめた経緯があります。結局、立派な方が良いという意見が優勢で、今のような成金趣味的お城を造ることになったそうです。

お城を過ぎるとすぐ長良川大橋がありますが、ここは全線で唯一、取り付け道路の下をくぐるのではなく上を横断すよようになっています。この先もしばらくは堤防上の道が続きます。両側にはヒメジオンの花が沢山咲いていました。堤防には、このヒメジオンの他、カワラマツバの細かく白い星型の花が今を盛りに咲いていましたし、まだちょっと早いようでしたが、アザミ類の紫色の花も目に付きました。


堤防で咲いていた花 ヒメジオン/カワラマツバ/アザミ

前方に、妙な形をした赤い斜張橋が近づいてきます。この犀川の橋は自転車道の記念碑的建造物として建設されたものです。必要以上に立派に造られて、全線の最後に完成しました。しかも、ふざけたことに「この橋は自転車から降りて渡ってください」なんて書いてあります。橋の上には犬の糞がいくつも落ちていたり、花火のゴミが落ちていたり、地元の人にもあんまり大切にされていないような感じでした。

この橋を過ぎると、終点まで自転車道は堤防の中腹を通ることになります。長良川の川面はこの先見られません。中腹に付けられた道は、しばしば堤防道路へ上がる取り付け道路と交わりますが、この交差点には自転車道に車が侵入しないように柵が設けられており、走りにくくくなっています。一部は改良されて多少マシにはなったものの、あまり快適ではありません。特に安八町内は100mおきくらいに交差点があり、うっとうしいことありゃしないといった感じです。その上、この柵の前に空間があるものですから、ここに自転車道を塞いで車を駐車する迷惑な輩のが多いのには困ったものです。迷惑駐車は、特に海津・平田町内に多いような気がします。

柵を避けながら進んで行くと、赤い羽島大橋と新幹線をくぐりますが、この橋の直前に酒屋さんがあり、道沿いに飲料各社の自販機が何台も置いてありますので、缶飲料を買うのに好都合です。新幹線をくぐってしばらく行くと、右手に不自然に木が植えてあったり、テニスコートになっていたりしているところがありますが、ここは20年ほど前の豪雨の時に堤防が決壊した現場です。最近まで国に責任があるか、で裁判係争中でした。それ以降、木曽三川では本流の堤防決壊は起こっていません。

このあたりからずっと堤防の中腹なので、堤防の上の道を走った方が眺めは良いのですが、ここは岐阜市と三重県方面とを結ぶ幹線道路です。堤防道路は合流車が見えないし路肩やカーブは不明瞭だし、実際は安全な道ではないのですが、見通しが良いように錯覚してしまうため、100km/hを越える速度の車が少なくありません。自転車道の脇にも、新しいお地蔵様があったり、花を供えてある場所など、死亡事故現場らしいのが何箇所もあります。また、自動車が転落した跡も少なくありません。堤防上の道路の自転車・歩行者の通行は禁止されていないものの、避けた方が身のためでしょう。この日も、レーサーで上の道を走っている一団がいましたが、豪雪の伊吹北尾根縦走より危険度は高いのではないでしょうか。


道を塞ぐ迷惑車両/破壊された柵/お地蔵様

名神高速の橋、南津大橋と南下して行きます。晴れていればだんだん多度山が近づいてくるのが見えるのですが、この日は曇り空であいにく見通しが効かず、このあたりからは見えませんでした。まもなく南濃大橋というところに野寺バイスクルパークというのがあります。なぜバイシクルでなくバイクルなんて名前なのか意図は不明です。駐輪場のある小広場ですが、便所や水場もあります。ここは端の方に忠魂碑と天皇陛下御野立所という石碑が建っていました。敗戦後の地方行幸の際にここで休憩でもしたのでしょう。南濃大橋をくぐると、信号交差点があるのですが、ここから赤い○とKのコンビ二が見えます。ここで昼飯を購入して行きました。


野寺バイスクルパークの看板

相変わらず堤防中腹の道が延々と続きます。このあたり、一見すると平らな田んぼが広がっているように見えますが、良く見るとかつての輪中堤が複雑なパターンで残っています。そして、建物は田んぼよりかなり高いところに建っていて、輪中地帯であることを感じさせます。東海大橋を過ぎると、終点まであと残り10kmほどとなります。この先、長良川には橋がありませんが、その代わり2個所の県営渡船があります。やがて、遠くにエノキダケの頭みたいな妙な型のタワーが見えてきます。これが終点、木曽三川公園中央水郷地区センターのシンボルである治水タワーです。このあたりはあまり変化のない道です。

自転車道は、油島大橋のたもとで終点です。終点はやっぱり階段になっていました。国営木曽三川公園中央水郷地区センターという、いかにもお役所っぽい名前の施設があります。建設省が直営でやっている公園なんだそうで、この木曽三川公園というのは日本最大の都市公園だそうですが、これは木曽三川の中流〜下流の河川敷が全部公園地域になっているので、建前上の面積だけは膨大になるためでインチキといっても過言ではありません。実際に公園として整備されているのは、この中央水郷地区センターの他、一宮や川島の三派川地区があります。

NHK中部ブレインズが設けている国営木曽三川公園の詳細な説明

今日は曇天とはいえ、公園内は家族連れや人間のツガイで賑わっていました。タワーなど一部の屋内施設以外は利用無料ですから、安上がりな行楽に大いに利用されているようです。公園の南の千本松原には、治水神社があります。この神社の境内は公園とは打って変わって静かなものでした。この神社、幕の紋章が島津製作所と同じなのですが、これはここに祭られているのが薩摩・島津藩の方々だからです。岐阜県の小学校では必ず習う、薩摩義士の宝暦治水事業の結果、死んだ薩摩の人々80余柱を祭ってあります。この80余名のうち、事故や病気で死んだ方々は30名ほどで、あと50名ほどは切腹だったそうで、総人員の一割程度が切腹してしまったことになります。いかに江戸幕府の島津殿の扱いが苛酷なものであったかがうかがえます。このような神社は輪之内町にもあります。


公園内部から望む治水タワー/治水神社

帰りも同じ道を戻ることになりますが、80kmの平坦路は結構走りでもあります。長良川自転車道は今後、岐阜市〜美濃まで延長も予定されているそうです。最近は自転車といってもマウンテンバイクが主流になり、いわゆるロードツーリングは流行から取り残されている感が強いのですが、たまには平らな所を延々と走るのも良いものです。


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