週間情報通信ニュースインデックスno.1515 2026/2/21


1.Geminiの能力は人間に近づいたか、ARC-AGIベンチマークが注目される理由 (2.20 日経XTEC)
米Google(グーグル)の論理推論(Reasoning)モデル「Gemini 3 Deep Think」の最新版が、AI(人工知能)にとって解くのが難しいことで知られる「ARC-AGI-2」ベンチマークで、過去最高成績となる正答率84.6%を記録したことが話題を集めている。解法を「丸暗記」しただけでは解けないタイプの問題ですら、AIは解けるようになってきた。

 ARC-AGI-2は、「人間にとっては解くのが容易だが、AIにとっては解くのが難しい」という問題を集めたベンチマークだ。例えば人間は、ある図形の形状に込められた「意味」を読み解くことができる。一方でAIは図形の視覚的なパターンを認識はできても、そこに込められた意味を読み解くことは苦手としている。

 ARC-AGI-2がAIに解かせようとしているのは、こうした図形パズル問題だ。回答するAIにとって「初見」となる図形を複数見せて、図形の間に共通する意味やルールを考えさせる。解法を丸暗記しただけでは解けない、つまりは論理推論能力がなければ解けないタイプの問題であるとされている。

 ただしARC-AGIを更新できるのは、「6」か「7」が最後であり、2030年までにはAGIが到来する見込みであるとショレ氏は予測する。非常に厳密な方法でAIの知性を測っているショレ氏でも、AGIは近い未来に到来すると考えているわけだ。

2.クアルコム、6GではMIMOと全二重通信が重要と指摘 (2.17 日経XTEC)
米Qualcomm(クアルコム)は、6G(第6世代移動通信システム)時代のユースケースを実現するにあたって、次世代MIMO(Multi-Input Multi-Output)技術とSBFD(SubBand Full Duplex、サブバンド全二重)の2つが重要な役割を果たすとしている。これらの技術を組み合わせることで、広い帯域幅を持つ中周波数帯上位の効率利用と、それによる広域での高速大容量、低遅延な通信が可能になるという。同社ブログの連載記事「6G Foundry」第9弾として、2026年1月23日(現地時間)に発表した。

 6Gでは、データを継続的に作成、分析・共有するAI(人工知能)が常時稼働し、上り/下りでより大容量の通信をするようになる。また、膨大なデータを基に高度な処理を行う没入型XR(クロスリアリティー)や自動運転車、モバイルロボットなど、応答性も重視するアプリケーションが数多く登場する。

 Giga-MIMOは、これまでのMassive MIMOで最大数百だったアンテナ素子数を数千にまで増強することでビームフォーミングの精度を高め、高速大容量の通信と広域カバレッジの両立を可能にする。SBFDは、1つのTDD(Time Division Duplex)キャリアを下りと上りのサブバンドに分けることで、同時送受信と上り通信のカバレッジ拡張、低遅延化を可能にする。

3.AIエージェントに「全部渡せばいい」は間違い、コンテキストの取捨選択が鍵(2.16 日経XTEC)
 大規模言語モデル(LLM)では一度に記憶・処理できるトークン数の上限がモデルごとに定められている。「コンテキストウインドー」と呼び、例えば米Anthropic(アンソロピック)の「Claude」は20万トークン、米Google(グーグル)の「Gemini」は100万トークンのコンテキストウインドーを持つモデルがある。これだけの大きさがあれば、必要な情報は全て詰め込めばよいように思える。

 しかし実際には、コンテキストウインドーの上限に収まっていれば性能が保たれるというわけではない。コンテキストに含まれるトークン数が増えるほど、LLMが情報を正確に読み取る能力が低下する現象が確認されている。「コンテキストの腐敗(Context Rot)」と呼ばれる問題だ。

 LLMは入力された全ての情報を参照しながら回答を生成する。不要な情報が増えるほど重要な情報が埋もれ、ハルシネーション(事実と異なる出力)が起こりやすくなる。Anthropic Japanの吉田弘毅アプライドAI・プロダクトエンジニアは「それを防ぐためにもコンテキストエンジニアリングが大事になってくる」と語る。

4.「SaaS is Dead」かどうか知らんが、AIエージェントはRPAの悪夢再来だぞ (2.16 日経XTEC)
 IT/デジタルかいわいで最近の大きな話題といえば「SaaS is Dead」、日本語にして「SaaSの死」だろうね。業務アプリケーションや人に代わって業務を担うAI(人工知能)エージェントの登場・普及によってSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)が滅びるというもので、それを懸念してSaaSベンダーの株価が最近大幅に下落したのはご存じのことと思う。ただねぇ、日本企業がこんなキャッチーな話題を伴うブームに乗せられて、AIエージェントを無原則的に導入したら、それをこそあの「悪夢」の再来だぞ。

 まずSaaS is Deadについてだが、既に多くのメディアで報道されているので、ごく簡単に要点をまとめておこう。今回はいわば第2弾の騒ぎだ。第1弾は、2024年12月に米Microsoft(マイクロソフト)のサティア・ナデラCEO(最高経営責任者)が、AI時代にSaaSなど業務アプリの姿が一変するといった発言をしたのがきっかけだ。で、今回はそれを具体化するかのように、米Anthropic(アンソロピック)が2026年1月30日に、ユーザーのプロンプト(指示文)に応じて業務を処理する「Claude Cowork(クロードコワーク)」に関する新たな発表をしたものだから大騒ぎとなった。

 Claude Cowork自体は2026年1月12日に既にリリースされており、1月30日には新たに法務や財務、マーケティング、営業といった様々な専門業務を自動化できる各種プラグインをオープンソースとして公開した。まさにSaaSビジネスを直撃するということで、米国のAdobe(アドビ)やIntuit(インテュイット)、Salesforce(セールスフォース)といったSaaSベンダーの株価が大きく下落することとなった。これがSaaS is Deadと呼ばれる騒ぎの大まかな経緯だ。だから、もちろんSaaSの死が確定したわけではない。

 要するに、業務フローや大本の業務プロセスがブラックボックスになるような形で「ヤンチャな」AIエージェントが走り回るような事態は「悪夢」であり、避けなければならないということだ。もっとも、米国企業ならシステム面の統制などもきちんとしているはずなので、AIエージェントの導入でまずは多数の従業員を解雇しつつ、これから先もSaaSを使い続けるかを判断していくはずだ。だから、SaaS is Deadはあるかもしれないし、ないかもしれない。一方、日本ではそれとは全く別に「悪夢」が再び訪れる予感がするぞ。

 さて、日本企業における「悪夢、再び」の話だが、悪夢をつくり出した当事者たちは、それを悪夢だと思っていないかもしれないな。何の話かというと、5年以上前に日本企業の間で一大ブームとなったRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)のことだ。RPAは本来、パソコン上で行っている標準の定型業務をソフトウエアの「ロボット」に代行させて自動化するツールだ。だけど日本企業の多くは、部分最適化した業務プロセスや属人的な仕事のやり方を残したままでRPAを導入するという愚挙に出た。

 AIエージェントをこのように適当に導入すると、RPAを適当に入れたときよりヤバくなる。その訳は、RPAの時とは異なり、手順書などのドキュメントを作成しないと想定されるからだ。なんせ、プロンプトを入力することで求めていた作業結果が得られるならば、そのプロンプト自体が手順書代わりとなる。というか、AIエージェントに対して仕事をお願いする際のやり方といった程度にしか意識されなくなる可能性がある。で、AIエージェントがやっている業務は完璧なブラックボックスと成り果てる。

 

5.「C」と「I」が多過ぎる! クラウドのセキュリティー用語にもう惑わない (2.18 日経XTEC)
企業システムのクラウド移行が進む中、クラウド向け、特にマルチクラウドに対応したセキュリティー対策の強化が求められている。CSPM(Cloud Security Posture(ポスチャー) Management)、CIEM(Cloud Infrastructure Entitlement Management、キーム)、CWPP(Cloud Workload Protection Platform)など、「C」から始まるセキュリティーサービスを多く見るようになったのはこのためだ。それぞれ何を守るのか、ここで整理しておこう。

 最初のCSPMはIaaS(Infrastructure as a Service、イアース)やPaaS(Platform as a Service、パース)の設定を保護するサービスである。登場の背景には、「クラウド展開を迅速に進めるため、開発者が直接主導する案件が増えている。そのため、構成ミスのリスクが大きくなっている」(ガートナージャパンの鈴木弘之ディレクターアナリスト)といった事情がある。管理者はCSPM上で、事前にセキュリティー設定のあるべき姿(ポスチャーと呼ぶ)を定義しておく。続いてCSPMがAPI(Application Programming Interface)を通じてクラウドの現状の設定を収集し、ポスチャーと比較してリスクが見つかったら警告する仕組みである。

 CIEMはクラウドのIDと権限を管理するサービスだ。文字の並びを見ると前述のSIEMに似ているが、全く異なるID管理のソリューションである。IDの運用・管理においては、ユーザーごとに付与する権限を必要最小限とする「最小権限の法則」が重要だ。過剰な権限を与えてしまった場合、ユーザーが操作ミスをしたりIDが流出したりすると、影響範囲が広くなってしまう。

  なお、この他にクラウドに関連する「C」から始まるセキュリティーサービスとしてCASB(Cloud Access Security Broker、キャスビー)がある。これはエンドユーザーによるSaaS(Software as a Service、サース)利用を一元管理するためのサービスだ。

 システム部門が許可したクラウドだけにアクセス範囲を制限する他、アクセス状況の可視化、情報漏洩やマルウエア感染防止などの機能を備える。CNAPPがクラウドサービスを直接保護するのに対し、CASBはエンドユーザーとクラウドサービスの間の通信を監視する点で位置付けが異なる。

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