1.「SaaSの死」に3つの疑問 再び株価急落、震源はAnthropicのAI新機能(2.5 日経XTEC)
SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)企業の株価が急落している。震源は米AI(人工知能)開発企業Anthropic(アンソロピック)のサービス「Claude Cowork」向けの新たなプラグインの公開だった。AIが外部サービスを操作できる機能で、SaaSも「AIで代替できる機能」に成り下がると見て、市場が反応した。本当にSaaSはAIに取って代わられるのか。「SaaSの死」を検証する特集の初回は、株価急落を巡る3つの疑問を取り上げる。
株価の軟調が始まったのは、アンソロピックがClaude Coworkを公開した2026年1月12日(米国時間)ごろ。Claude CoworkはAIによるノーコード自動化ツールだ。自然言語で指示すれば、タスクを完了させるための手法をAIが考え、必要に応じて外部のツールも参照しながらパソコン上で作業を自動的に進める。
例えば、ローカルフォルダ内のファイルを直接操作して写真を整理したり、業務用アプリの「Word」や「Excel」を活用して資料を作成したりできる。「Cowork(協働)」の名の通り、ユーザーの作業を担うサービスといえる。AIによる自動化で、一部のSaaSは不要になりかねないとする懸念が株価を低迷させた。
決定打となったのは、アンソロピックが1月30日に公開した11種類のプラグインだった。特定の専門業務に最適化されたもので、「営業(Sales)」は見込み客の分析、「マーケティング(Marketing)」はキャンペーンの立案やコピーの生成、「人事(HR)」は履歴書の精査や面接日程の調整といった機能を備える。それぞれ、SaaS大手である米Salesforce(セールスフォース)や米Adobe(アドビ)、米Workday(ワークデイ)の一部のサービスと競合する。
しかもプラグインの相互連係が可能だ。例えばある製品のキャンペーンを考える場合、「戦略(Strategy)」のプラグインが市場と競合を分析し、「マーケティング」がキャッチコピーを生成した上で、「営業」が顧客となるターゲットの一覧を作成する。
従来、各SaaSに個別にログインして分析していたものが、Coworkだけで完結するようになれば、ユーザーインターフェース(UI)さえ必要なくなる??。市場でこうした見方が広がり、米株式市場でSaaS関連株が2月3日に急落。前日比でセールスフォースの株価は最大11%、ワークデイも同9%それぞれ下げた。米メディアは、2月第1週に世界で約2850億ドル(約45兆円)の株価暴落があったと報じている。
「SaaSの死」というキーワードの流行は、米Microsoft(マイクロソフト)のサティア・ナデラCEO(最高経営責任者)が2024年12月に米国のポッドキャスト番組で「伝統的なビジネスアプリケーション(=SaaS)は、AIエージェント時代に崩壊(Collapse)する可能性がある」と発言したのがきっかけだ。2025年に入って「SaaSは不要になる」との文脈で、ナデラCEOの同発言がメディアやSNSで広まった。
しかし、待望されたAIエージェントの実装は難易度が高く、過剰な期待であると指摘する声が相次いだ。米調査会社のIDCは「SaaSは死ぬのではなく、再定義されるだけだ」とのリポートを発表。SNSでは「『SaaSの死』の死(SaaS is dead is dead)」という言葉も飛び交った。ソフトウエア株が一時的に下がる局面もあったものの、過度な心配との評価が定まっていった。
一方、Claude Coworkに端を発した今回の「SaaSの死」ショックは、2025年とは質が異なる。「2025年は『雰囲気』だったが、今回はアンソロピックが実際に競合となる技術を公開している」。セールスフォース本社に勤務するエンジニアは危機感をにじませる。
2.mineoのオプテージが「音声フルMVNO」参入、格安スマホビジネスの転換点に
(2.6 日経XTEC)
MVNO(仮想移動体通信事業者)としてモバイル通信サービス「mineo(マイネオ)」を提供している関西電力系通信事業者のオプテージは、「音声フルMVNO」への参入を発表した。「格安スマホ」として認知度を高めてきたMVNOのビジネスは、大きな転換点を迎えることになりそうだ。
携帯電話会社からネットワーク設備を借りてモバイル通信サービスを提供するMVNOは、格安スマホなどの名称で知られている。携帯大手より大幅に安い料金で利用できることを武器に、利用者を増やしてきた。
だが携帯電話会社も、サブブランドやオンライン専用ブランドなどで、より低価格な料金プランを提供し始めている。MVNOから携帯電話会社に転身した楽天モバイルは、データ通信使い放題のサービスを低料金で提供している。このような現状において、MVNOの存在感は大きく低下している。
そこでMVNOは、生き残りのために安さだけに頼らない戦略を打ち出している。中でも戦略を大きく転換したのがオプテージだ。同社は2026年1月27日、au(KDDI)回線を用いた音声フルMVNO事業への参入を発表した。
オプテージを含め国内MVNOのほとんどは、「ライトMVNO」という形態で事業運営している。これは、基地局や音声通話の交換機、SIMの発行に必要な加入者管理機能といった多くの設備を携帯電話会社から借り、データ通信の交換機や顧客管理システムなどは自ら保有する形態だ。
ライトMVNOは保有する設備が少ないため低コストで運用できる。そのことが、MVNOの低料金に寄与している。
だが一方で、多くの設備を携帯電話会社に依存しているので、サービス設計の自由度が低い。例えば加入者管理機能がないので自社ではSIMを発行できない。サービスを提供するには、携帯電話会社からSIMを借りる必要がある。そのためeSIMなどへの対応がスムーズに進まないといった弱みがある。
そこでサービスの自由度を高めたいMVNOは、加入者管理機能を自社で保有してSIMを発行できるようにしている。そういったMVNOは「フルMVNO」と呼ばれる。ただ以前は、MVNOに音声通話用の電話番号を割り当てることができなかった。そのためフルMVNOになっても、サービスを自由に設計できるのはデータ通信に限られていた。
しかしながら2023年に電気通信事業法施行規則等が一部改正され、MVNOに音声通話用の電話番号を割り当てられるようになった。これを受けて、MVNOも加入者管理機能に加えて音声通話やSMSの交換機を保有すれば、音声通信も含めた自由なサービスを設計できるようになった。それらの設備を一通り保有するMVNOが、音声フルMVNOである。
それにもかかわらず、MVNOの数は現在も増え続けている。総務省の資料によると、2024年末時点で1991社存在し、それまでの2年間で259社も増えた。従来のMVNOのようにモバイル通信でビジネスをするためでなく、異業種の企業が顧客接点の強化などのために参入していることがその背景にある。ライトMVNOによる安さだけではもう勝ち抜けない以上、MVNOにも規模が求められる時代になりつつあるようだ。
3.若者人気のテキスト通話「Jiffcy」、LINEで十分? 評価は時期尚早(2.5 日経XTEC)
若者の間で流行しているアプリがあるらしい。それはテキスト通話アプリ「Jiffcy(ジフシー)」だ。先日、デスクから「Jiffcyって知っている? 若者が結構使っているらしいけれど」と聞かれたのだが、筆者は知らなかった。調べると、Jiffcyは日経トレンディの特集「2025年ヒット予測ベスト30」で10位に選ばれていた他、様々なメディアで取り上げられていた。注目が集まっていることは間違いなさそうだ。
Jiffcyは「テキストで通話感覚のコミュニケーションができる」ことを売りにしている。この文面だけ見れば、「要するにチャットでしょ」と思うが、TeamsやLINEなどと異なる点がある。それは、相手とリアルタイムにやり取りをする点だ。相手を電話のように呼び出し、相手が応じるとテキスト通話ができるようになる。そしてテキスト通話で入力した文字は、1文字ずつ互いの画面にリアルタイムで表示される。1対1のテキスト通話の他、4人までのグループテキスト通話も可能だ。
4.ソフトバンクがカスハラ対策AIを提供開始、通話中の怒声を穏やかに変換
(2.3 日経XTEC)
ソフトバンクは2026年2月2日、コールセンターなどで問題となっているカスタマーハラスメント(カスハラ)対策向けに、通話中の顧客の声をAI(人工知能)で変換するサービス「SoftVoice(ソフトボイス)」の提供を開始した。通話相手の発言内容はそのままに、怒声や威圧的に聞こえる声質・抑揚を和らげてオペレーターに届ける。これにより、オペレーターの精神的な負担の軽減を狙う。
SoftVoiceは、通話相手の音声をリアルタイムで解析し、声の高さや抑揚、音量といった「怖さ」に直結する要素のみをAIの音声変換技術で調整する。怒りの感情自体は伝えつつ、攻撃性を抑えた声に変換し、オペレーターが冷静に対応しやすくする。さらにノイズ抑制、警告メッセージ表示、通話録音といった機能も備え、段階的な注意喚起や記録による業務支援も実施する。主要な処理はローカル環境で完結し、通話音声をクラウドに送信しない設計とした。
利用料金は10IDまで月5万円(税別、以下同)となり、11ID以上は1ID当たり月5000円で提供する。「トライアルとして、申し込みから2カ月目まで無償かつID無制限で利用可能だ」(ソフトバンクの中谷敏之AIプラットフォーム開発本部SaaS企画準備室担当部長)。
5.ロックウェルAP社長が語る「すみ分け」、SDA進めどPLC消えず
(2.3 日経XTEC)
ソフトウエア定義のFA(ファクトリーオートメーション)である「SDA(Software Defined Automation)」に、米Rockwell Automation(ロックウェル・オートメーション、以下ロックウェル)が注力している。同社は、SDAを「工場自律化」に向けた基盤技術と見なし、ハードウエアによる制約縮小を狙う。例えば、PLC(Programmable Logic Controller)を使わず、汎用的なPCで複数台の産業用ロボットを協調制御できるようにするなど、ソフトウエアベースの自動化を強化している。
とはいえ、ロックウェルはハードウエアから撤退したわけではなく、いまだ主力事業だ。PLCの研究開発も続けている。2025年10月には、PLCの新製品「ControlLogix 5590」を発表した。制御システム向けのサイバーセキュリティー国際規格「IEC 62443」に準拠しつつ、全てのアクセスを継続的に検証してシステムの安全性を保つ「ゼロ・トラスト・アーキテクチャー」を採用するなど、サイバーセキュリティー強化を前面に出して売り込む。
ロックウェルはSDAに注力していますが、PLCも継続して開発しています。SDAが広まるにつれて、PLCの役割が今後縮小する話も聞きますが、PLCやハードウエアの大きな役割とは、何になるのでしょうか。
我々にとってのSDAとは、「ロックウェルのロジックコントロールエンジンを、どのチップセットでも、どのハードウエアでも実行できるようにすること」を意味します。つまり、ロックウェルのPLCハードウエアに限らず、汎用PCや産業用PC(IPC)などでも実行できるようにすることです。
何より、PLCの長所は「より産業用に特化しており、10〜15年もの長期間を高信頼、かつ極端な環境条件で稼働できる」点にあります。特に、(汎用PCが苦手とする)高温・高湿の環境です。
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