1.ウエアラブルバンド市場、AIや5Gで高価格帯にシフト
(12.1 日経XTEC)
調査会社Omdia(オムディア)によると、2025年第3四半期のウエアラブルバンド販売台数は前年同期比3%増の5460万台だった。市場規模は前年同期比12%増の123億ドルとなり、プレミアム製品へのシフトが進んだ。
500ドルから700ドル、および700ドル超の価格帯では前年同期比29%および34%で増加したとし、この要因として生成AI(人工知能)と5G(第5世代移動通信システム)の進展を挙げた。韓国Samsung Electronics(サムスン電子)が「Galaxy Watch 8」に米Google(グーグル)のGeminiを使ったAIアシスタント機能を搭載し、米Apple(アップル)が「Apple Watch Series 11」などで5Gに対応、アップルや米Garmin(ガーミン)が自社製品に衛星経由のメッセージ機能を追加するなど、多くのベンダーが高価格帯製品で機能の差別化を進めているとした。
2.岐阜県の自動車部品メーカーがランサム被害、一時アカウントからVPN侵入(12.19 日経XTEC)
岐阜県にある自動車部品メーカーがランサムウエア攻撃を受けた。脆弱なパスワードを設定したVPN装置から侵入され、管理者権限を奪われた。異変に気付いたのは米国出張中の従業員だった。土曜未明に連絡を受けた情報管理課の係長と課長がネットワークを切断。週末の間に多くのシステムを復旧させ、出荷への影響を最小限に抑えた。
美濃工業は岐阜県中津川市にある自動車部品メーカーである。岐阜県を中心として国内に6拠点、海外にも工場を展開している。本社だけで1000人近くの従業員を抱える。 異変に気付いたのは米ロサンゼルス拠点に出張していた従業員だ。現地時間10月3日金曜日午前9時25分、本社のサーバーにアクセスしたところ、目的のファイルが見当たらなかったという。見慣れないファイルを見つけてそれを開くとランサムノート(脅迫文書)だと分かった。
従業員はすぐに情報管理課の係長に電話を入れた。日本は土曜日の午前2時半頃だった。報告を受けた係長は上司の課長に連絡。課長は緊急事態と判断し、遠隔操作で本社のネットワークとインターネットの通信を遮断した。 係長と課長は本社に出向き、午前5時前にインターネットとグループ会社のそれぞれをつなぐVPN(仮想私設網)装置を停止させた。
出社した従業員は被害の調査に努めた。優先したのは製品出荷への影響だ。その結果、製品の品質管理に使う3次元データを格納したファイルサーバーや、プリントサーバーが使えないことが判明した。
3次元データがないと製品の品質保証ができない。プリンターが使えないため、工程表や出荷に必要な書類も印刷できなかった。このため、当日の出荷は見送った。
当日実施した社内調査で、社内の全ファイルサーバーとプリントサーバー、一部のパソコンでデータが暗号化されていることが判明した。IP-VPNで接続していたグループ会社も一部影響を受けた。
情報管理課は土日の間に、バックアップデータが残っていた品質管理のファイルサーバーを再構築して復旧した。プリンターをパソコンに直接つなぐことで製品を出荷できる状態まで復旧させた。
3.53期連続黒字・営業利益率36%、一人勝ち続けるアパホテルDXの全貌(12.19 日経XTEC)
53期連続黒字、営業利益率は驚異の36%――。ホテル業界において、圧倒的な収益性の高さを誇る企業がある。「アパホテル」を運営するアパグループだ。
同社の2024年11月期の連結決算は、売上高が前期比18%増の2259億円、営業利益は45%増の821億円、経常利益は同44%増の795億円でいずれも2期連続で過去最高を更新。直近の2025年11月期も「売上高が2700億円、経常利益が950億円程度となる見込み」(アパグループ)といい、3期連続での過去最高更新が確実視されている。
直近10年は成長を加速している。建築・設計中のホテルや海外ホテル、提携ホテル(アパの予約サイトで予約可能なアパブランド以外のホテル)を含む客室数は約14万室に達した。
とりわけ注目すべきはその高い利益率だ。一般的なホテル企業の営業利益率が5?10%程度とされる中、30%台をたたき出すアパグループの稼ぐ力は群を抜く。アパホテルと同様に高収益企業とされる東横インでも、2025年3月期の営業利益率は17%ほどだ。
アパグループの強みは所有・運営・ブランドのすべてを自社で一貫して手掛ける「3階建ての収益構造」と語られることが多い。不動産開発からホテル運営までを一体化することで、高収益を実現しているわけだ。同社のように自社で土地・建物を所有し、運営まで手掛ける企業はそれほど多くない。
ただし、これは収益力の一側面に過ぎない。ホテル経営で何より鍵を握るのは、稼働率と客室単価を掛け合わせて1室当たりの平均売上高を示す「RevPAR(レブパー)」である。
アパホテルはホテル事業への進出当初からRevPARの最大化を経営の重要事項とし、宿泊体験を磨いて稼働率を高めつつ、予約状況に応じて価格を段階的に引き上げる運用で収益を伸ばしてきた。これを可能にしているのが、アパグループの「テクノロジー巧者」としての裏の顔だ。
4.ソフトバンクが6Gの有力周波数帯センチメートル波を推進、広いエリアと広帯域両立(12.18 日経XTEC)
6G(第6世代移動通信システム)における周波数帯の拡大に向けて、センチメートル波(3G〜30GHz)の活用が国際的に検討されている。特に7G〜24GHzは「FR3(Frequency Range 3)」と呼ばれ、活用が期待されている周波数帯だ。国内ではソフトバンクが2025年6月からフィンランドNokia(ノキア)と協力して7GHz帯における実証を開始し、早期実用化に向けて訴求を始めている。実証の結果は良好で、6Gエリア拡張のための有力な周波数帯になりそうだ。
7GHzを含む6Gの周波数帯については、世界無線通信会議「WRC-27(World Radiocommunication Conference 2027)」で、その利用に向けた議論が進められる。6Gで他に検討されている周波数帯のサブテラヘルツ波(100G〜300GHz帯)は、高周波数の利用自体の難しさやデバイスの開発が進んでいないことから、早期実用化が難しいとされている。5G(第5世代移動通信システム)で導入された28GHz帯や39GHz帯を使うミリ波は、カバーできるエリアが狭いこともあり、普及があまり進んでいない。これに対してセンチメートル波は広いエリアと容量向上を両立でき、今後普及が進む可能性がある。
5.「個性」が出てきた携帯インフラ競争、ソフトバンクの説明会で残った不安
(12.17 日経XTEC)
携帯大手のインフラ競争が興味深い展開を迎えている。数年前は大手3社でほぼ横並びの印象だったが、2023年春頃からNTTドコモで通信品質の問題が顕在化し始め、いまだに尾を引いている。その間、見事な立ち回りを見せたのはKDDIだ。
KDDIはSub6と呼ばれる3.7GHz帯/4.0GHz帯の周波数をうまく活用し、5Gの容量を一気に拡大。英Opensignal(オープンシグナル)が2025年2月に発表した通信品質調査結果「グローバル・モバイル・ネットワーク・エクスペリエンス・アワード2025」では、全6部門のうち「信頼性エクスペリエンス」など3部門で世界1位を受賞した。
KDDIは国内で唯一、スマートフォンと衛星の直接通信サービス「au Starlink Direct」を手掛け、「空が見えればどこでもつながる」とアピールしている。混雑したエリアや時間帯でも安定した通信を維持できる「au 5G Fast Lane」、混雑状況に合わせたデータ伝送で遅延を制御する「L4S(Low Latency, Low Loss, and Scalable Throughput)」なども導入している。
ソフトバンクも負けじと容量の強化に力を入れている。同社は2025年12月10日に説明会を開き、5G SA(Stand Alone)の展開では他社をリードしているとアピールした。5Gには4Gの交換機に5Gの基地局がぶら下がるNSA(Non-Stand Alone)方式と、純粋に5Gの交換機と基地局だけで構成するSA方式の2種類がある。5GだけのSA方式のほうがシンプルで効率がよく、「真の5G」と呼ばれている。
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