1.海外から197万回の特殊詐欺電話、国内事業者の番号偽装対策に不備
(12.5 日経XTEC)
実在する警察署の番号が電話機に表示され、受話すると捜査員をかたる――。この特殊詐欺に国内電話が海外から悪用されたことが2025年11月に判明した。1回線だけを使い、1カ月強の間で約197万回の異常な発信があったという。発信転送の設定ミスが疑われたが、こうした特殊な機能の利用はなかった。基本機能だけで番号を偽装でき、事業者に根本的な問題があった可能性がある。
「当社の提供する電話番号が発信者番号を警察署等と同じ電話番号に偽装されて使用されておりました。ご迷惑とご心配をおかけしまして深くおわび申し上げます」
国内でIP電話サービスなどを提供するアイ・ピー・エス・プロ(IPSPRO)は2025年11月21日、自社のサイトでこう謝罪した。同日、警視庁などが捜査で実施した解析により、同社の電話サービスが特殊詐欺に使われていたとメディアで報じられていた。親会社のアイ・ピー・エスも同日、子会社の管理を徹底し再発防止を図り、警察の捜査に全面協力すると公表した。
IPSPROは「SIPトランクサービス」などの名称で法人向けIP電話サービスを提供する。番号の偽装に使われたのは「050」で始まる番号を持つサービスで、IPSPROによれば「海外の通信事業者に1回線を提供した」(営業担当)。同事業者がさらに詐欺グループへ回線を貸し出したと見られる。同事業者の所在国は開示できないという。回線が使われた期間は2025年2月8日〜3月14日。番号を偽装したと見られる発信が約197万回もあった。
2.アサヒへのランサム攻撃は「典型的な手口」、EDRの回避も常とう手段(12.1 日経XTEC)
アサヒグループホールディングス(GHD)がランサムウエア攻撃の被害を発表してからおよそ2カ月が経過した。強固なセキュリティー対策を施していると思われるアサヒGHDがどのような被害に遭ったのか謎だった。だが2025年11月27日に開催された記者会見の内容からは、ランサムウエア攻撃の典型的な手口だったと推測できる。
ランサム攻撃者はVPN(Virtual Private Network)装置の脆弱性を突いて侵入し、ネットワークを探索。脆弱なパスワードを破るなどして複数のコンピューターへの侵入を繰り返し、最終的にはActive Directory(AD)サーバーの管理者権限を奪取。ADサーバーの管理下にあるコンピューターにランサムウエアを感染させたと見られる。
3.エリクソンとフランス事業者、MIMOやAIで5Gの性能高める(11.18 日経XTEC)
スウェーデンEricsson(エリクソン)とフランスOrange(オレンジ)は、5Gの効率性と柔軟性、持続可能性を高める取り組みを連携して進めている。既存の周波数資源の最適利用に向けては、通信が混雑する場所にエリクソンのFDD Massive MIMOアンテナ統合無線装置を設置し、複数シナリオでの実験を行っている。より柔軟なネットワークの実現に向けては、フランス・パリにクラウドRANを導入し、2年間の試験運用を開始した。エネルギー効率改善に向けては、性能やユーザー体感を損なうことなく高度なエネルギー管理を可能にする自律型ネットワークとAI(人工知能)の導入も進めている。
4.2031年末には6G契約が1億8000万件に、Ericssonリポート
(12.4 日経XTEC)
スウェーデンEricsson(エリクソン)は、2031年までの無線通信市場動向を予測する最新リポート「Ericsson Mobility Report November 2025」を発表した。今回のリポートでは、初めて商用6G(第6世代移動通信システム)の市場動向についても言及し、6G契約件数が2031年末までに1億8000万件に達すると予測している。AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)デバイスによるものは含まれていないが、これらが早期に立ち上がれば、契約数はさらに増えるという。
最初に商用6Gサービスを開始する国は、米国、日本、韓国、中国、インド、GCC(Gulf Cooperation Council:湾岸協力会議)諸国となると予測する。一方で5G(第5世代移動通信システム) SA(スタンドアロン)展開が遅れている欧州では、これらの国々に約1年後れを取るとしている。
5.急加速する「GEO」に対応、データ暴食を逆手に生成AIを受け入れ(12.4 日経XTEC)
生成AI(人工知能)の普及により、インターネット上での利用者の行動変化が現実になってきた。利用者が生成AIの回答で満足して、情報元となったWebサイトには訪問しなくなる「ゼロクリック」の影響が様々なサイトで表れ始めているのだ。
企業や組織が運営するWebサイトが生成AIにデータの暴食を許し、学習データを提供するだけの存在に立場を落としていけば、持続的な運営が難しくなるWebサイトが増えかねない。企業の情報発信やマーケティング活動にも大きな影響が及ぶ。
生成AIを拒否するか、それとも受け入れるか――。Webサイト運営者が打てる対策は、前回紹介した「門前払い」のほかにもう一つある。データ暴食を逆手に取り、生成AIを積極的に受け入れて回答の中でWebサイト運営者が発信したい情報を参照・引用してもらう機会を増やすことだ。回答とともに参照元や引用元としてリンクが掲載されれば利用者の流入も期待できる。
Webサイトを生成AIの情報源として参照・引用されやすくする手法がGEO(生成エンジン最適化)だ。AIO(AI最適化)やLLMO(大規模言語モデル最適化)とも呼ばれる。従来のSEO(検索エンジン最適化)を生成AI向けに応用する手法として注目を集めている。
ゼロクリックの影響は現在主流の検索サービスで既に表れている。米Google(グーグル)の「Google検索」は検索内容に生成AIが短く回答する「AIによる概要」の表示を増やしており、2025年9月に日本語での「AIモード」の提供も始めた。LINEヤフーも「Yahoo! 検索」で生成AIの回答を得られるサービスを提供している。
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