1.プログラマー大淘汰時代が到来、「AI開発に使うPythonなら安泰」の嘘(9.26 日経XTEC)
近年、若い人が身に付けておくと社会で有利になる技能として「プログラミング」が注目されてきた。2020年には小学校でプログラミング教育が必修化された。
高度なソフトウエアを開発するプログラマーには高度な能力が必要だ。ソフトウエアを競争力の源泉とする米国のIT企業はそうした高度な人材をかき集め、「ビッグテック」と呼ばれる巨大企業に成長した。
ここに至って日本でもようやくソフトウエアの重要性が認知され、ソフトウエア開発に必要なプログラミングにも脚光が当たるようになった。プログラミング教育必修化の流れには、こうした背景があると考えられる。
ところが「プログラミングを学べば将来、社会で有利になる」という前提自体が揺らいでいる。理由はコード生成が可能なAI(人工知能)の登場だ。まだ完璧なコード品質は望めないものの、プログラミング初心者よりもはるかに安定した品質のコードを出力してくれる。人間がコードを書く代わりにAIに書かせる「バイブコーディング」も流行の兆しを見せている。
AIに淘汰されないプログラマーになるにはどうすればいいのだろうか。 分かりやすいのは、AIを利用する側からつくる側に回ることだ。そして現在、AIの開発に最も使われているプログラミング言語はPythonである。これからプログラミングを学ぼうとする人は「なるほど、Pythonを習得すればAIの開発側に回れて将来も安泰なのか」と思うかもしれない。
しかし、事情はそこまで単純ではない。Pythonのコードを読み書きする能力は、AI開発に必要な能力の一部でしかないからだ。実際にAIを開発するには、まず現在のAIがどのような構造を持ち、どのように学習する必要があるかを知っておかなければならない。
では、AIに淘汰されないために本当に必要な知識は何だろうか。私は「流行に左右されない強固な基礎知識」だと考えている。 まず、アルゴリズムやデータ構造、計算量といったコンピューターサイエンスの知識は、ITに関わるなら必須だろう。ネットワークやセキュリティーの知識も重要だ。実際にシステムを開発するなら、システムのアーキテクチャーや設計、開発プロセスといった知識も必要になる。
生成AIに淘汰されるのは、目先の損得にばかりとらわれる人ではないかと考えている。この先、職業の形が変わったとしても、生き残るのは「基礎知識の重要性を理解し、学ぶことをやめない人」であることは間違いない。
2.通信障害起こしたNTT西の設定ミスは初心者レベル、業界を挙げた品質向上に期待(9.24 日経XTEC)
NTT西日本が2025年9月16日に起こした通信障害の原因が明らかになった。同日、セキュリティーサーバーと一緒につなぎ込んだレイヤー2スイッチに設定ミスがあり、ブロードキャストフレームがネットワーク内を回り続ける「ブロードキャストストーム」が発生。結果、呼制御サーバーがつながっているサーバー収容ルーターが高負荷となり、大阪府や京都府の全域、そして兵庫県の一部で、ひかり電話と固定電話の発着信ができない状態に陥ったというものだ。
NTT西日本による通信障害の原因が判明、VLAN IDの設定ミスでループ発生
同社が9月18日に開いた説明会で経緯を聞き、筆者はあぜんとしてしまった。レイヤー2スイッチの設定ミスがあまりにお粗末な内容だったからだ。本来は現用系と予備系で別々の通信グループ(VLAN)に分けるべきところ、同一の通信グループに設定してしまった。同社が説明していた図の通り、同じ通信グループでループ構成を作ればブロードキャストストームが発生するのは当然である。ネットワーク初心者ならともかく、まさか大手通信事業者で起こるとは思わなかった。
ブロードキャストストームにつながった設定ミス
(出所:NTT西日本)
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同社は設定ミスについて「設計段階で設定変更が発生し、コミュニケーションエラーによりチェックが働かなかった。工事段階で誤った設定のままレイヤー2スイッチのつなぎ込みを実施してしまった」などと説明している。同社は設計班と工事班に分かれており、ここでコミュニケーションエラーが生じやすかったのかもしれない。だが、NTTグループ関係者からも「作業に当たって厳格なチェック体制を敷いているので通常はあり得ない。理解に苦しむ」といった声が出ている。
一般論だが、通信事業者であればミスを確実に防ぐため、設計班と工事班のそれぞれで実務者とは別に、「管理者」や「承認者」を置いていたはずだ。今回、これらすべての関係者が見落としてしまったのだろうか。仮に設計班のミスで設定変更が漏れていたとしても、ブロードキャストストームにつながるループ構成であれば工事班のメンバーの誰かが気付いてよさそうである。ヒューマンエラーは付き物とはいえ、今回の設定ミスは確実に防いでほしかったところだ。
3.東京湾青海公共ターミナルのシステム障害で「データ紛失」、コンテナ作業に1週間影響(9.24 日経XTEC)
今回は、東京港埠頭とROBOT PAYMENTのそれぞれのシステム障害を取り上げる。
データ紛失でデータと現物コンテナの付け合わせが必要に
東京湾にある東京港の埠頭などを管理する東京港埠頭は2025年9月8日、システム障害の影響で青海公共ターミナルのゲート受付業務を停止したと発表した。
システム障害によるゲート受付の停止や遅延などの影響は9月8日以降も続き、同社のWebサイトではシステム障害関連の案内を複数回出している。約1週間後の9月16日にも、「システム障害により受付に時間がかかっている」と案内していた。9月17日には「順調に作業できている」と案内を出していることから、同日までにシステム障害の影響は解消したと見られる。
4.生成AIをいち早く事業に応用、CTOオブ・ザ・イヤー大賞のサイバーエージェント長瀬氏(9.22 日経XTEC)
サイバーエージェントは、生成AI(人工知能)の可能性に早い段階から注目して事業を成長させたほか、AI時代を見据えた人事改革を進めている。最近ではAIエージェントの開発で組織をリードしてきた。同社の技術トップとして、こうした活動を推進してきたことなどが、授賞理由である。
例えば、サイバーエージェントは2016年に専門の研究組織「AI Lab」を立ち上げて、主に広告やマーケティング分野での生成AI活用を進めてきた。マーケティングへの応用を見据えて、ロボットを活用したインタラクション(相互作用)関連の研究開発にも注力。「変化に強い会社になる」という方針を掲げて、技術戦略の見直しを迅速に行っている。
5.シニア世代のスマホ利用に変化、関心はアプリやAIへ ショップの講座から明らかに(9.22 日経XTEC)
ソフトバンクは2025年9月1日の「防災の日」に合わせ、一部のソフトバンクショップにおいて防災と医療に関する講座を開催した。その内容からは、シニア世代にスマートフォンが十分普及し、関心が変化していることが分かった。
その防災講座を実施しているソフトバンクショップの1つ、東京都杉並区にある「ソフトバンク荻窪」でスタッフに話を聞いた。すると、防災に関する講座は定期的に実施しており、常に高い人気を得ているという。特に災害が多い時期には、参加者が増える傾向にあると話す。
一連の取材で筆者が強く感じたのは、シニアのスマホ利用の変化である。電話やカメラ、LINEといった基本的な機能にとどまらず、より多くのアプリを扱うようになっている。
今回の講座では、Yahoo!防災速報などのダウンロードや設定、利用にまで踏み込んで説明していた。「スマホ決済」「マイナポータル」「ふるさと納税」といった特定のアプリやサービスを詳しく解説する講座も多く実施されている。昨今話題の生成AI(人工知能)の講座もあり、高い人気を博しているようだ。
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