週間情報通信ニュースインデックスno.1492 2025/9/6


1.ChatGPTとの「長すぎる対話」にご用心、OpenAIが欠陥を認めた経緯(9.5 日経XTEC)
生成AI(人工知能)チャットである「ChatGPT」は、不適切な出力を行わないようトレーニングされている。しかしユーザーとの対話セッションが非常に長い場合、安全機能が働かないことがあると、米OpenAI(オープンAI)が2025年8月26日(米国時間)に明らかにした。

 オープンAIは同日に発表した「Helping people when they need it most」という声明で、ChatGPTの安全機能に欠陥があることや、その改善策について明らかにした。

 大規模言語モデル(LLM)による不適切な出力を防ぐ機能は一般に「ガードレール」と呼ばれる。ユーザーがプロンプト(指示文)に入力した内容をチェックして問題のある指示には従わないようにしたり、LLMが生成した内容を表示する前にチェックして不適切な内容を修正したりする。ChatGPTには、ユーザーが自殺などをほのめかした場合に、専門家の助けを求めるよう誘導するといった仕組みもあるのだという。

 しかしオープンAIが今回発表した声明によれば、ユーザーとの対話セッションが短い場合はChatGPTの安全機能が確実に働く一方、対話セッションが非常に長くなると安全機能の信頼性が低下するケースがあることが「時間の経過とともに分かってきた」(同社の声明)のだという。

 実は今回の声明は、米カリフォルニア州に住む16歳の少年が自殺した原因がChatGPTにあるとして、両親がオープンAIを訴えたことを受けて公開されている。この訴訟の詳細は翌日の2025年8月27日(同)に、米紙New York Times(NYT)が詳しく報じた。同紙は訴状の内容に基づき、ChatGPTによる問題のあるやり取りの実例を伝えている。

 例えばChatGPTは、亡くなった少年が自殺の方法を質問した際、当初は回答を拒否していたが、少年が「自分が執筆中の物語に関する質問だ」とChatGPTに伝えると、安全機能が回避されたという。しかも「物語執筆のためならChatGPTは自殺に関する情報が提供できる」という「裏技」は、ChatGPTが少年に提案していたものだった。

2.「au Starlink Direct」が念願のデータ通信対応、使えるアプリや機種が限られる理由(9.5 日経XTEC)
米Space Exploration Technologies(スペースX)の通信衛星とスマートフォンが直接通信するサービス「au Starlink Direct」に力を入れているKDDI。2025年8月28日には、念願のデータ通信に対応した。だが全てのアプリが利用できるわけではなく、対応機種も少ない。一体、なぜだろうか。

 ただau Starlink Directの提供を開始した当初は、対応する衛星の数が少なかった。このため利用できるのは、テキストによるSMSと、SMS経由で米Google(グーグル)のAIアシスタント「Gemini」に質問する機能だけだった。

 だがその後、対応する衛星をスペースXがより多く打ち上げたことで、サービスの性能が向上。2025年7月17日までに、SMSの送受信にかかる時間が2分以内から30秒以内へと大幅に短縮された。

 また2025年8月1日には、一部機種を除いたAndroidスマホにおいて、写真や動画などのファイルを「Googleメッセージ」で送受信できるようになった。

 そして2025年8月28日、SMS以外のアプリでデータ通信が可能になったと発表した。KDDIはau Starlink Directのサービス開始当初から、データ通信を2025年夏ごろに提供するとしていた。8月末のタイミングで、ようやく実現したことになる。

 ただし、データ通信を利用できるアプリは限られている。当初は「圏外エリアで特に役立つ19アプリ」に限定されるという。具体的には、「Googleマップ」などの地図アプリ、「ウェザーニュース」などの天気アプリ、「YAMAP」などのアウトドア関連アプリ、SNSの「X」などである。

 インターネットサービスを利用するのに一般的なWebブラウザーは含まれていない。「LINE」など日常的に利用されるコミュニケーション系アプリの多くも対応していない。

 なぜ対応するアプリが限られているのか。KDDIによると、au Starlink Directのデータ通信に対応させるには、アプリを改修する必要があるためだという。このためサービス開始当初は、au Starlink Direct環境下でニーズが高いと見られるアプリの提供事業者にKDDIが改修を依頼。その結果、19のアプリに限定された。

 これらのアプリのいくつかは、au Starlink Directのデータ通信に対応するだけではなく、大容量通信が難しい衛星通信で利用しやすいようにつくり込まれている。例えばau Starlink Directで接続した際に「ユーザーインターフェースを変更する」「広告を非表示にする」「動画を静止画に置き換える」といった対応をして、通信量を減らしている。

 もっとも、全てのアプリがそこまでつくり込まれているわけではない。例えばXは、動画を静止画に置き換える機能を現時点では用意していない。そのため動画の再生自体は可能だが、現状のStalinkの性能でスムーズに再生するのは難しい。

 au Starlink Directのデータ通信サービスを利用するためには、アプリだけではなく対応機種に関しても課題がある。au Starlink Direct自体には、サービス開始時点でも50機種が対応している。

 だがデータ通信となると、対応する機種は限られている。現時点では、KDDIが発売あるいは発売予定のグーグル「Pixel 10」シリーズ4機種と、同じくKDDIが2025年8月1日に発売した韓国Samsung Electronics(サムスン電子)の折り畳みスマホ「Galaxy Z Fold7」と「Galaxy Z Flip7」の計6機種だけが対応している。

 KDDIによるとデータ通信に対応するには、衛星通信に対応できるようOSをアップデートする必要があるという。さらに端末によっては、内部のソフトウエアも改修しなければならない。このため対応できるのが最新の機種に限られている。旧機種への対応は、今後メーカーと協議を進めるとしている。

 またau以外のブランドに向けた「au Starlink Direct専用プラン」に関しても、新たな課題が生じている。「au」ブランド以外向けの「au Starlink Direct専用プラン」は、5G通信に対応した「au Starlink Direct専用プラン+」にアップデートされた。

3.クアルコムが示す6G開発指針 柔軟性を組み込みAIで多様な用途に対応(9.5 日経XTEC)
米Qualcomm(クアルコム)は、6G(第6世代移動通信システム)時代に向けて、AI(人工知能)とML(機械学習)を使って、複雑さを軽減しながら予測性や応答性を高め、多様なユースケースに向けたインターフェース設計を目指すとしている。同社ブログの連載記事「6G Foundry」の第8弾として、2025年8月26日(現地時間)に発表した。

 5G(第5世代移動通信システム)では、RedCap(Reduced Capability)を使用するIoT(モノのインターネット)やXR(クロスリアリティー)、産業オートメーションなど、様々なユースケースに向けた機能を後付けした結果、複雑さや実装上の課題が生じた。これを踏まえて、6Gの無線インターフェース設計では、合理化されたフレームワークを採用し、幅広いユースケースへの対応を目指す。

 6Gでは、周波数帯域を新たに追加しなくても5Gよりも高いパフォーマンスを狙う。より効率的なMIMO(Multi-Input Multi-Output)設計、高度なコード設計などにより、カバレッジと容量を大幅に改善する。Qualcommが行ったシミュレーションでは、周波数帯の効率化により、既存の帯域利用時にも最大50%の容量増加が可能となる。これに6〜8GHz帯のような新しい周波数帯を追加すれば、容量はさらに増加する。400MHz帯の新周波数帯域と高度なビームフォーミングを組み合わせれば、広域カバレッジを維持しながら、従来の5倍の通信負荷に対応できるようになる。

 6Gでは、AI/MLを無線インターフェースに組み込み、適応性や予測性、応答性を高めていく。これにより、全てのプロトコル層でAIが活用できるようになる。AIで端末の動きとビームの方向を予測し、より高速なハンドオーバー(接続する基地局を切り替える機能)によって低遅延な通信を実現する。送信と受信を組み合わせて最適化するニューラルトランシーバーやニューラルネットワークの機能も、すでに標準化団体の3GPP(The 3rd Generation Partnership Project)リリース19と20で標準化されており、6Gでの商用化が期待される。

4.AIと外部サービスをつなぐプロトコル「MCP」、個別のすり合わせが不要に(9.1 日経XTEC)
MCPは「Model Context Protocol」の略称で、LLMなどのAIと外部のサービスを連携させるためのプロトコル。AIを使ったチケット予約や家電の操作など、高度なサービスを実現できる。IT各社が対応を進めている。

 大量の文書ファイルの分析やチケット予約、家電製品の操作など、AIをエージェントのように活用できる場面が増えつつある。こうしたサービスを実現するにはAIと外部サービスとの連携が欠かせないが、従来はAI側と外部サービス側が個別にすり合わせる必要があり、高度なサービスを実現する際のハードルとなっていた。

 MCPはAIと外部サービスをスムーズに連携させるためのプロトコルだ。生成AIサービス「Claude」を提供する米Anthropicが2024年11月に発表した。クラウドストレージやチャットなどの既存のサービスがMCPに対応することで、生成AIと連携したさまざまな処理を実現できる。

 Anthropicの提案を受けて「ChatGPT」を運営する米OpenAIやクラウドプラットフォームの「Azure」を提供する米マイクロソフト、生成AIの「Gemini」を手掛ける英グーグル・ディープマインドなどがMCPのサポートを表明し、短期間で事実上の業界標準となった。

5.シャープが対話型AI「ポケとも」を発表、エモパーやロボホンの経験をどう生かしたか(9.1 日経XTEC)
シャープは対話型AI(人工知能)キャラクター「ポケとも」を発表した。キャラクターと対話できるスマートフォンアプリ及びコンパニオンロボットを2025年11月に発売する。同社は「エモパー」や「ロボホン」で長年にわたり対話型AIに取り組んできた。ポケともには、それらの経験がどのように生かされているのだろうか。

 このため最近では、AIとの対話にフォーカスしたサービスやデバイスが増えている。例えばシャープは2025年8月20日、対話型AIキャラクターのポケともを発表。その第1弾として、ミーアキャットをモチーフとしたキャラクターを2025年11月から提供する。

 ポケともは、会話の内容や場所などを覚えてユーザーを理解していくという。その結果、時間がたつほどユーザーに寄り添った対話をしてくれるようになり、パートナーと呼べるような存在になるとしている。

 これに、商品やサービスに応じたAIモデルを組み合わせているという。今回のポケともでは、米OpenAI(オープンAI)の「GPT-4o mini」を使用している。昨今の急成長した生成AIの技術に、シャープが培ってきた技術を組み合わせて実現した製品といえるだろう。

コンパニオンロボットの価格は、シャープ公式の「COCORO STORE」で3万9600円とされており、月額料金は495円である。一方、Romi(Lacatanモデル)は価格が9万8780円で、利用料は月額1958円または年額1万9580円だ。ポケともは、かなり安いことが分かる。

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