1.大阪急性期・総合医療センターのランサム被害で和解、NECなど3社から解決金10億円(8.8 日経XTEC)
大阪府立病院機構は2025年8月8日、大阪急性期・総合医療センターで2022年に発生したサイバー攻撃によるシステム障害に関して、複数の民間事業者と和解が成立したと発表した。民間事業者が連帯して、大阪府立病院機構に対し計10億円の解決金を支払うことで合意した。
大阪急性期・総合医療センターの担当者によると、和解対象の民間事業者は3社だ。(1)電子カルテを含む同センターの総合情報システムの構築・保守を統括したNEC(2)同センターが入院患者の食事提供を委託していた生長会(3)総合情報システムにおける部門システムの1つで、生長会のシステムと連係する給食システムを構築した大阪のITベンダーである日本電通、だ。
2.AI普及で企業に思考停止の危機、家電や自動車の二の舞い避ける処方箋(8.7 日経XTEC)
昔話から始めてみたい。あれは今から30年ほど前の1990年代の半ば、ちょうどインターネットが爆発的に普及しつつあった頃の話だ。
テレビ受像機で大きなシェアを持っていた家電メーカーの放送系技術者に「ネットでもテレビ番組や映画などを配信できるようになりますね」と聞いてみたのだ。すると、それまで和やかに対応してくれていた技術者は「これだから素人は困る」とあきれ顔になり「非効率なIP網での高画質の動画伝送はあり得ない」と説教されることとなった。
似たような経験がもう1つある。確かEV(電気自動車)の本格的な普及が始まった2010年代初頭だったと思う。大手自動車メーカーの幹部にEVの可能性について聞く機会があった。そこで「EVの登場でIT業界からの新規参入も予想されるなど、競争が厳しくなりますね」と尋ねたら、即座に「自動車の開発・製造の難度を知らない人の質問ですね」と切り捨てられてしまった。
今から振り返れば、この2人の専門家の見立ては間違いだった。例えば、2007年にインターネットによる動画配信サービスを開始した米Netflix(ネットフリックス)は、今や世界中の家庭のテレビ受像機にドラマや映画を配信する。EVでは、中国スマートフォン大手の小米(シャオミ)が2024年3月に参入し「世界トップ5の自動車ブランドになる」との目標を掲げるに至った。
今、新たな破壊的イノベーションが世界を席巻している。言うまでもなくAI(人工知能)だ。はたして、こちらへの対応は大丈夫だろうか。
先に言ってしまえば、生成AIやAIエージェントについては過小評価を一切聞かない。むしろ、AIというイノベーションの破壊力への評価は日々高まっている。
では、AIの破壊力に対する既存の産業の対応準備ができているかというと全く心もとない。インターネットなどの破壊力を過小評価してしまったのとは違う意味で、思考停止に陥ってしまう恐れがある。
この手の思考停止の原因は、自らを「ユーザー」に位置付けているところにある。ならば、AIによる新たなビジネスを創る側に回ってはどうか。例えば生成AIを開発するITベンダーと事業提携してもよい。きっと新たな未来が見えてくるだろう。
3.ローカル5Gの飛躍には価格破壊しかない、NTTドコモビジネスの新サービスで痛感(8.7 日経XTEC)
その手があったか――。少し前の話になるが、ニュースリリースを見て筆者がうなったサービスがある。NTTコミュニケーションズ(現NTTドコモビジネス)が2025年3月25日に発表した「ローカル5Gサービス TypeD」だ。
筆者が驚いたのはローカル5Gのネットワークを構成する交換機をはじめ、CU(データ処理部)/DU(無線信号処理部)/UPF(ユーザーデータ処理機能)をドコモの網内に置き、活用できるようにした点である。「キャリアレベルの冗長性確保」や「ドコモの作業者による24時間365日体制の監視」を売りにする。
とはいえ、小中規模の企業や自治体にはやや厳しい料金水準と見られ、大規模向けだろうか。同社によると、2025年7月末時点で早くも約50件の引き合いがあり、滑り出しは順調という。
4.ガートナーが日本のクラウドとAIのハイプ・サイクルを発表、RAGは「幻滅期」に(8.5 日経XTEC)
ガートナージャパンは2025年8月5日、「日本におけるクラウドとAI(人工知能)のハイプ・サイクル:2025年」を発表した。このハイプ・サイクルにおいて、生成AI関連技術のうちRAG(検索拡張生成)が幻滅期に入り、AIエージェントは「過度な期待」のピーク期にあるとした。AIやクラウド、マイグレーションに関連する34の技術を取り上げた。
ガートナーのハイプ・サイクルは、技術を黎明(れいめい)期、「過度な期待」のピーク期、幻滅期、啓発期、生産性の安定期という5つのフェーズに分類する。イノベーションが過度にもてはやされる期間を経て幻滅期を迎え、最終的には市場で重要性や役割が理解されて進化するという共通のパターンを描いている。
ガートナージャパンによると、AI領域における多くの技術への期待は過熱しやすい傾向があり、中でも「エージェント型AI」はその典型であるという。同社は、2027年末までにエージェント型AI導入プロジェクトの40%以上が、コストの高騰やビジネス価値の不明確さ、不十分なリスクコントロールを理由に中止になるという見解を発表している。
5.電子書籍リーダー「Kindle」がカラー化、漫画以外にメリットを広げられるか(8.4 日経XTEC)
米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)は、カラーディスプレーを搭載した電子書籍リーダー「Kindle Colorsoft」を国内で発売した。カラー表示は日本で特に人気の高い漫画を読む際に役立つ。だが電子ペーパーの特性を考慮すると、普及に向けては課題が多い。
電子書籍の普及とともに、2010年前半ごろから電子書籍リーダーが注目されるようになった。低消費電力で目に優しい電子ペーパーを採用しているのが特徴だ。
その後、ディスプレーが大きいスマートフォンやタブレットが急速に普及したことでその存在感は薄れ、デバイスの淘汰が進んだ。だが現在もなお、一部のユーザーには根強いニーズがある。
その代表格がアマゾン・ドット・コムの「Kindle」シリーズである。Kindleシリーズはアマゾン・ドット・コムの電子書籍サービスから書籍を購入し、すぐに読むことができる。ノート機能を備えた「Kindle Scribe」など、複数のラインアップをそろえている。
読書主体のデバイスとしてディスプレーに電子ペーパーを使用していることもあり、これまではモノクロ表示のデバイスのみが提供されていた。だがKindleシリーズ初のカラーディスプレー搭載機種Kindle Colorsoftが2024年10月に米国で発売。そして2025年7月24日、日本でもようやく発売された。
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