1.大阪大学が「純国産」量子計算機を開発、国内調達により持続的な開発体制を構築(7.30 日経XTEC)
大阪大学は2025年7月28日、主要な部品やソフトウエアをすべて国産品で構成した「純国産」の量子コンピューターを開発したと発表した。豊中キャンパス(大阪府豊中市)にある量子情報・量子生命研究センター(QIQB)で稼働させた。
144量子ビットの超電導量子チップを搭載しており、まず28量子ビットまでの正常動作を確認した。2025年8月14?20日は大阪・関西万博での体験イベントに使い、その後、研究者や共同研究先の企業などに開放していく。2026年中に全144量子ビットを演算に使えるようにする計画だ。
阪大が開発した「純国産」機は、超電導方式に不可欠な希釈冷凍機を日本企業が初めて供給するなど、ほぼ国内調達で開発した。開発を指揮したQIQB副センター長の根来誠教授は狙いの1つとして、緊密に連携できる日本企業を調達先や共同開発パートナーにすることが、量子ビットの継続的な高集積化に有利である点を挙げた。「日本企業と意見を交わしながら、今後も小型化や省電力化などを協力して進めていきたい」(根来教授)と意気込む。
量子ビット数を、実用的とされる数万?数十万ビットへと高集積化するには、配線や回路をより細密化したうえで冷凍機などの装置を大型化することも必要となる。開発期間は10?20年に及ぶとも見られている。持続的な開発体制とサプライチェーンの構築は、経済安全保障の観点からも重要な観点になりそうだ。
2.Ericsson、プライベート5Gと公共5Gの連携で大会を支援(7.15 日経XTEC)
スウェーデンEricsson(エリクソン)は、英国で開催されたヨットレースの世界大会SailGP(2025年7月20〜21日、英国・ポーツマス)に5G環境を提供した。Ericssonのプライベート5Gと英BTのパブリック5Gが専用のネットワークスライスを介してシームレスにつながる環境を構築し、大会運営をサポートした。
最高時速100kmで移動する12艇のヨットに、プライベート5Gに接続可能なEricsson Cradlepointエッジルーターを搭載することで、各ヨットの位置や重要連絡、映像データなどの情報などをリアルタイムに送受信できるようにした。プライベート5Gは、観客がレースの様子を見守るイベント会場や、そこから約30km離れた技術センターを含む複数箇所に設置された。
3.公務員がマイナンバー法違反で初摘発、行政システムが内部不正を想定せず(8.1 日経XTEC)
埼玉県所沢市の職員が2025年7月にマイナンバー法違反の容疑で逮捕された。容疑者は職権を乱用してマイナンバーや所得情報を照会できるシステムを悪用。多数の親族のマイナンバーを集め、虚偽の扶養控除手続きで税還付を受けた。個々のシステムや手続きが内部不正をほぼ想定しておらず、抜け穴を突かれた。内部不正をどう防いでいくかは他の市町村にも共通する課題となりそうだ。
埼玉県警は同日、上下水道局の職員を逮捕した。職権を使って親族のマイナンバーを不正に調べ、扶養の実態がないにもかかわらず、虚偽の扶養控除手続きで住民税(市・県民税)の控除を受けていた容疑である。住民税の還付に加え、住民税額から算出する保育料の減額も合わせて不正に得た利益は215万円という。容疑者は一連の不正のために複数のシステムを業務外で悪用していた。しかし職権を持つ職員が不正を働く想定がほぼなかったため、いずれの段階でも防いだり検知したりできなかった。
4.GIGAスクール端末の更新でWindowsがシェア大幅減、MM総研調べ(7.31 日経XTEC)
MM総研は2025年7月31日、政府のGIGAスクール構想において配布した児童・生徒用の「1人1台端末」に関する市区町村への調査結果を公表した。GIGAスクール構想は現在第2期が進んでおり、端末の更新が進行している。第1期から第2期の端末の切り替えにおけるOSのシェアを見ると、米Google(グーグル)の「ChromeOS」が18ポイント伸ばした。一方で、米Microsoft(マイクロソフト)の「Windows」は第1期の29%から19ポイントシェアを減らした。
MM総研が全国の1741市区町村に電話調査を実施し、うち1249の自治体から回答を得た。OSのシェアはChromeOS が60%で首位となった。続く2位が米Apple(アップル)の「iPadOS」で31%、3位がシェア10%のWindowsだった。第1期からシェアを大幅に減らしたWindowsについて、第1期で導入していた自治体からは「OSアップデートなどが運用しにくい」「動作が遅い」などの所感が寄せられたという。
5.セブンイレブンの新店舗システムはフルクラウド、マイクロサービスで変化に強く(7.29 日経XTEC)
セブン-イレブン・ジャパンが、全国のコンビニ約2万1000店で使う店舗システムを刷新している。展開中の次世代店舗システムではクラウドを全面採用しマイクロサービスアーキテクチャーとすることで、柔軟な機能追加を可能にした。
次世代店舗システムにおける、システム面での大きな変更は、(1)ストアコンピューター(ストコン)を廃止しクラウド化した(2)発注や検品用の専用端末を廃止しiPadやAndroid機など汎用端末に変えた――の2点だ。いずれも変化に強いシステムを実現するための変更だ。
セブンイレブンが店舗システムのフルクラウド化に向けて選んだ基盤は米Google(グーグル)のGoogle Cloudだ。採用の理由について、セブン-イレブン・ジャパンの西村出執行役員システム本部長は「膨大な量のトランザクションを一度に処理しなければならず、可用性や安全性を総合的に評価し最適と判断した」と話す。
セブン-イレブン・ジャパンでは次世代店舗システムに先行して、データ分析基盤「セブンセントラル」を2020年9月にGoogle Cloud上で稼働していた。セブンセントラルはBigQueryなどで構成し、全国の店舗データを最短1分で収集・処理する。ここで得た開発、運用経験も、次世代店舗システムへのGoogle Cloudの採用を後押しした。
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