1.ワンタイムパスワードは原則禁止へ、日本証券業協会が証券口座乗っ取り対策の新指針(7.18 日経XTEC)
日本証券業協会(日証協)は2025年7月15日、「インターネット取引における不正アクセス等防止に向けたガイドライン」の改正案を公表した。相次ぐ証券口座乗っ取り被害を受け、「フィッシングに耐性のある多要素認証」を必須とする項目などを新たに盛り込んだ。
現状、多くの証券会社が採用する一般的なワンタイムパスワードを組み合わせる多要素認証は、攻撃者がID、パスワードと同時にワンタイムパスワードも窃取して認証を突破する「リアルタイムフィッシング」という手口で破られるリスクがある。そのため、今回の案がそのまま成立すれば原則的に対策として認められなくなり、より強固な仕組みの導入が求められる。
「改正の目玉の1つはフィッシングに耐性がある多要素認証を必須にしたことだ」――。改正案の策定に関わった日証協の担当者はこう話す。
現状の日証協のガイドラインは2021年に策定された。2020年にSBI証券の顧客口座から資産が流出した事案を受けて、口座開設から出金までの各段階における不正対策などの内容が中心となっている。
一般的なワンタイムパスワードを使う多要素認証ではこの項目を満たせない可能性が高い。リアルタイムフィッシングで破られる恐れがあるからだ。フィッシングに耐性のある多要素認証の例には、認証方式の国際標準化団体であるFIDO Allianceが推進する「パスキー」や、PKI(公開鍵基盤)をベースとした認証を挙げた。
2.みずほFGがソフトバンクと提携、AI活用で2030年度までに3000億円の効果目指す(7.18 日経XTEC)
みずほフィナンシャルグループ(FG)とソフトバンクは2025年7月18日、戦略的包括提携を締結したと発表した。みずほFGはこの提携の下、ソフトバンクと米OpenAI(オープンAI)が共同開発する企業向けのAI(人工知能)エージェント「クリスタル・インテリジェンス(Cristal intelligence)」を導入する。金融業界でクリスタル・インテリジェンスを導入するのは、みずほFGが初となる見通しだ。
提携締結は7月16日付。クリスタル・インテリジェンスは、個々の顧客企業内のシステムやデータを学習する「長期記憶」や複数のAIエージェントの連係といった技術を基に、経営を高度に最適化するとしている。
3.全社員にMicrosoft 365 Copilotを導入した住友商事、「チャンピオン」のAI活用術(7.14 日経XTEC)
筆者が所属する住友商事は2024年4月から、海外グループ会社含むグローバル約9000人の全社員が「Microsoft 365 Copilot」の一斉利用を始めた。生成AI(人工知能)を使いこなせていなかった人も含めて誰一人取り残さず、全社員が生産性と創造性を向上させて、ポテンシャルを解放することが狙いだ。
住友商事はMicrosoft 365 Copilotの社内展開に際して、Copilot推進担当者が社員を対象とした講座などを実施するだけでなく、「Copilot Champion(チャンピオン)」という「アンバサダープログラム」を展開した。
Copilot Championは、「Copilotが好き」「業務効率化を実現したい」「組織の変革を後押ししたい」などポジティブな思いを持った社員が、自発的に手を上げて就任する役割だ。各現場においてCopilotの認知拡大や機能に関する理解を促進する施策に協力してくれている。Copilot推進担当者と社員をつなぐ架け橋的存在だ。
不動産事業の若手社員は従来、担当する物件リストにおける表記揺れの問題(都道府県名や市区町村名が抜けていたり、物件名が古かったりする問題)を、1件ずつWebサイトを検索するなどして修正していた。
それを現在はCopilot Chat for Web(Web検索を利用するCopilot機能)を活用することで、(1)不足情報の補足(市区町村までしか情報がない等)、(2)数字表記の正規化、(3)住所と物件名を検索キーにした物件名の変更有無の確認、という3種類の作業を一度に実施し、それまで1時間以上かかっていた業務を5分程度にまで削減した。
4.日立が全セクターで生成AIフル活用、大みか事業所では作業時間8割減も(7.15 日経XTEC)
日立製作所は2025年4月に発表した新経営計画「Inspire 2027」で、主力のデジタル事業「Lumada(ルマーダ)」をAI(人工知能)によって進化させ、「Lumada 3.0」にする方針を打ち出した。
インストールベースとは、同社が顧客に提供しているエネルギー関連設備や鉄道、産業機器などを指す。そこから収集したデータとAIを組み合わせ、付加価値の高いデジタルサービスを生み出すというのが同社の戦略だ。
代表例が、2024年9月に本格展開を始めた鉄道の運用・保守向けのAIソリューション「HMAX(エイチマックス)」である。同ソリューションは米NVIDIA(エヌビディア)と協業して開発した。
HMAXは車両に積んだ各種センサーやカメラが集めた情報を車両内でリアルタイムに分析し、車両の異常を検知する。「車両にエヌビディア製GPU(画像処理半導体)サーバーを載せて車両内でデータを処理するエッジAIを実現している」(日立の吉田順AI CoE Generative AIセンター 本部長 兼 デジタルシステム&サービスセクターChief AI Transformation Officer)
5.AIで情報の価値は10倍に、米ボックスCEOにファイル共有サービスの進化を聞く(7.15 日経XTEC)
ファイル共有サービス大手の経営トップとしてAIエージェントの開発を急いでいる。2025年5月にはBoxのAI(人工知能)機能に組み込んだAIエージェントを発表した。AIを使ってこそ「Boxに蓄積したデータから価値が生まれる」とする。
AI(人工知能)エージェントに対するニーズの高まりを捉えて成長できたのが要因の1つです。特にエンタープライズ領域での適用が広がっている点が当社の成長につながっています。
社内には膨大な情報が蓄積されています。単純な連絡からマーケティングのキャンペーン情報、取引先の与信に関する情報など様々です。これまではこの大量の情報が使われていませんでした。それに気づき始めた企業が増えているのです。AIを使った成功事例をつくろうという機運が高まっています。
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