1.ランサムウエア被害企業の7割が完全復旧できず、バックアップデータの保護が重要に(6.6 日経XTEC)
市場調査会社アイ・ティ・アール(ITR)は2025年6月4日、企業システムのランサムウエア感染事例をアンケートにより集計した「企業のサイバーリカバリ実態調査」の結果を発表した。2024年以降にランサムウエアの感染経験がある企業のうち70%がシステムを完全には復旧できなかったと回答した。バックアップデータを保護できなかったことや影響範囲の把握が難しいことがシステムの復旧を妨げていると見られる。
ITRの入谷光浩シニア・アナリストは、「サイバー攻撃を完全に防ぐことは難しい。攻撃(を受けること)を前提として、リカバリーの要であるバックアップデータを保護する仕組みが重要だ」とコメントしている。
2.パナソニックグループ、生成AI導入の2年間 「RAG」の精度を高めた工夫(6.6 日経XTEC)
パナソニックグループ内の生成AI(人工知能)活用を推進するパナソニックオペレーショナルエクセレンスの奥野竜介氏が、2025年6月6日にグランフロント大阪で日経BPが主催する「日経クロステックNEXT 関西 2025」の基調講演に登壇し、この約2年間の取り組みを総括した。工夫した点や今後の展望について語った。
23年4月に米オープンAIの大規模言語モデル(LLM)「GPT-3.5」をベースに、生成AIチャットツール「PX-AI」をグループで全社展開。セキュリティーを考慮し、入力データの取り扱いなどが明確な米マイクロソフトのクラウドサービス「Microsoft Azure(アジュール)」上で利用できる「Microsoft Azure OpenAI Service」を使って自社構築した。
ChatGPTなど商用のチャットツールに比べて機能面で劣るものの、導入コストを大幅に削減できる。商用ツールを全社員へ導入すると月数千万円かかるところが、自社構築だと月数百万円で利用できるという。
PX-AIと同時に生成AI活用のガイドラインをリリース。AI活用の倫理や技術をカバーする専門部隊がIT(情報通信)部門と連携し、迅速にルール整備した。文章作成や情報調査などを目的に、1人当たり月5.3時間の業務効率化を実現したという。
3.MediaTek、5GとAIを統合した新技術6点を披露(5.20 日経XTEC)
台湾MediaTek(メディアテック)は、アジア最大級のIT(情報技術)見本市「COMPUTEX TAIPEI(コンピューテックス台北)2025」(2025年5月20〜23日、台湾・台北)にて、同社の最新技術6点を披露した。「5G Generative AI Gateway」は、5G FWA(固定無線アクセス)と生成AI(人工知能)を統合してスマートホームの実現をサポートする。
「Dimensity Auto」は、次世代の自動車アプリケーションに向けて5GとAI機能を統合し、迅速な緊急支援要請などを支援する。「Genio IoT」は、最新の生成AIモデル、HMI(Human Machine Interfaces)機能などを搭載し、スマートホームから産業・商業用途まで、幅広いIoT(モノのインターネット)製品に対応する。このほか、ウエアラブル機器などの接続性が弱まった場合に、近くにある別のデバイスを介して5G/6G信号を受信する「デバイス協調マルチアンテナ技術」などを紹介した。
4.ChatGPTが間違う理由は「幻覚」だけではない、見落としがちな意外な原因(6.6 日経XTEC)
近ごろは何か思いつくとすぐに対話型AI(人工知能)サービス「ChatGPT」に聞いてみることが増えた。例えば先日、ふと思いついて「深層学習は非線形なのに、なぜ線形代数が重要なのですか」と打ち込んでみた。
個人的には、このように何かを説明する文章をきちんとした形に整えるためにChatGPTを使うことが多い。こうした用途では、かなり有用なツールだと感じている。
こうした「大規模言語モデル(LLM)が、知らないことを無理やり答えようとして誤った説明をしてしまう」という現象が「ハルシネーション(幻覚)」である。現在のLLMでは、原理的にハルシネーションをゼロにすることはできない。
5.日本最大のデータセンターは「印西のAWS」か、環境省のデータから分析(6.2 日経XTEC)
日本の「本当に大きい」データセンターはどこにあるのか。環境省が公表する日本の事業者・事業所の「エネルギー起源二酸化炭素排出量」に着目し、消費電力量からデータセンターの規模を比較。日本のデータセンターの現状を探った。
政府は「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」に基づき、温暖化ガスを大量に排出する事業者(特定排出者)に対して、事業者や事業所単位で温暖化ガスの排出量を算定し、国に報告するよう義務付けている。そして事業所ごとの排出量や所在地(市町村)といったデータは、環境省がWebサイトで公表している。最新の「2022年度」のデータは環境省が2025年4月1日に公表した。
データセンターにおける消費電力には、サーバーやネットワーク機器などIT機器による消費電力と、冷却設備などIT機器以外による消費電力がある。データセンターにおける総消費電力量をIT機器による消費電力量で割った値がPUE(Power Usage Effectiveness)だ。
政府は2022年に改正した「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(省エネ法)」で、データセンター事業者に対して2030年度までに「PUE=1.4以下」を目指すよう「ベンチマーク目標」を定めている。IT機器の消費電力が「1」だった場合、それ以外の消費電力を「0.4以下」に抑えると、1.4以下のPUEを達成できる。
それでもデータセンターの消費電力量が、そのデータセンターで運用されるワークロード(処理量)の規模に比例するのは間違いない。温暖化ガス排出量の多寡は、データセンターの規模を比較する一定の目安になるだろう。
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