週間情報通信ニュースインデックスno.1478 2025/5/31


1.NTTとドコモ、ミリ波を高速移動体で活用可能に 分散MIMOで一工夫(5.29 日経XTEC)
NTTとNTTドコモは共同で、ミリ波などの高周波数帯を高速の移動体で利用できる技術を開発した。この技術を「NTTつくばフォーラム2025」(2025年5月15〜16日、茨城県つくば市)で展示した。自動車や電車などの高速移動環境での無線通信において、高周波数帯を活用した大容量化につながる可能性がある。5G(第5世代移動通信システム)-Advancedや6G(第6世代移動通信システム)初期段階でのミリ波向けとして、2028年頃の実用化を目指す。

 一般にミリ波などの高周波帯域は、直進性が高く広いエリアをカバーできない。長距離を伝送するには、マルチアンテナ技術であるMIMO(Multi-Input Multi-Output)を使い、ビームを集中させて通信する必要がある。移動体に対しては、その移動方向に対してビームを追従させていく必要がある。

 こうした場合に問題となるのが、端末と基地局のアンテナの通信中に遮蔽物が挟まるケースだ。直進性が高いために、遮蔽物が間に入ると、伝送速度が大幅低下したり、途切れたりする可能性がある。

 この問題に対して、有望な技術の1つが分散MIMO(Distributed MIMO)である。このシステムでは、1つの基地局は複数の分散アンテナと中央局から成る。中央局が物理的に分散したアンテナを協調させ、端末に対して遮蔽物があっても途切れない方向からビームを送るようにする。

2.25年4月のランサム被害を分析、「多重ゆすり」戦略を取るPlayの攻撃が急増(5.30 日経XTEC)
世界中の企業がランサムウエアの脅威にさらされている。多くの攻撃を受けている国・地域はどこなのか、どのようなランサムウエアグループが活発な動きをしているのか。ダークウェブの分析に強い韓国S2Wが、最新動向をリポートする。

 S2Wによると、2025年4月のランサムウエア被害はグローバル全体で合計600件に上った。3月が合計748件だったのに比べると約2割減少しており、2025年に入って続いていた増加傾向は一段落した格好だ。

 国・地域別では、上位4つの順位は前月と変わらない。1位の米国は304件と、グローバル全体の約半数を占めた。2位は40件のカナダ、3位は30件のドイツ、4位は22件の英国だった。以下、イタリア、オーストラリア、ブラジルが続く。日本は7件で13位だった。

 産業別で見ると、1位になったのはビジネスサービス。前月の64件から96件に増加し、前月1位だった製造と順位が入れ替わった。3位は前月2位だった小売り、4位は前月と同様に建設だった。前月と比べて被害が減っている業種が多い中、7位に商業、8位にインフラがランクインした点が注目される。攻撃対象となる業種に変化が生じている可能性もある。

3.生成AIが人から知的労働を奪う、失業より深刻な日本企業の問題(5.29 日経XTEC)
システム開発やメディアの編集業務を含め様々な知的労働を、生成AI(人工知能)が担えるようになる。しかも、データサイエンスやコンサルティングといった付加価値の高い領域であっても、生成AIが人から仕事を奪っていく──。

 生成AIの猛威がすさまじい。以前なら「付加価値に乏しい知的作業は生成AIに任せて、人は人にしかできない付加価値の高い仕事を担えばよい」などと言われていた。ところが今や「人にしかできない知的労働なんてあるのか」といった議論もなされるようになった。

 もちろん、生成AIが全ての知的労働を担えるわけではない。コンサルティングならば、顧客から本音を引き出したり、提案に納得し実践してもらうように仕向けたりするのは、人にしかできないことだろう。しかし、知的労働の多くの部分を生成AIが担うようになれば、多くの専門家が不要になる事態は避けられない。

 欧米では既に生成AI、そしてAIエージェントの急速な普及が、知的労働を担う人々にとって大きな脅威になってきている。職務(ジョブ)を明確に規定したジョブ型雇用が雇用形態の主流で、特定の職務が不要になれば、担っていた従業員は基本的に解雇されてしまうからだ。各職務の全て、あるいは大部分を生成AIが代替できるようになれば、多くの人が職を失うことになる。

4.ホンダ流「ワイガヤ」をマルチAIエージェントで再現、自由な議論の有用性を確認(5.28 日経XTEC)
AI(人工知能)エージェント、それもマルチ構成による活用について早い段階から研究を進めてきたのがホンダだ。同社は2025年3月に「Dynamic Knowledge Integration in Multi-Agent Systems for Content Inference(訳:コンテンツ推論のためのマルチエージェントシステムにおける動的知識統合)」と題した論文を発表。この研究が高い評価を受け、同年4月にはAI分野における国際会議のワークショップ「ICLR 2025 Workshop Agentic AI」で採択された。

 ホンダにはAIを活用して社内の業務改革や新たな価値創造に取り組む専門部隊がある。三部敏宏社長の指示の下、2023年に発足した先進AIグループだ。その後、同グループは2024年9月に先進AI戦略企画課へと形を変更。同課では社内DX(デジタル変革)推進に関連する技術の情報収集や研究を進めており、この1年間で急激に注目度が上がった技術があった。それがAIエージェントだ。「AIエージェントはゲームや自動車、ITなど様々な分野に枝分かれしながら普及し、爆発的な研究トレンドになっていた」(ホンダの伊藤修デジタル統括部先進AI戦略企画課チーフエンジニア)。

5.AIチャットでビル設備を管理・操作、新システム「nexOS」が登場(5.28 日経XTEC)
 スタートアップのArchNex(東京・千代田)は2025年5月7日、生成AI(人工知能)の大規模言語モデル(LLM)を活用したビル設備管理の新システムを発表した。名称は「nexOS(ネックスオーエス)」。このシステムを使えば、チャット形式でビルの設備操作や一括管理がしやすくなる。

 nexOSはビルの空調や照明、自動ドアなど複数系統の設備を統合的に管理できるプラットフォームだ。一般的なビルシステムでも設備の管理は可能だが、nexOSはビルの設備をチャット形式で直接操作できる機能を搭載している点が特徴となる。UI(ユーザーインターフェース)や通信方式の異なる設備もまとめて簡単に管理できる。

 具体的には、nexOSに「設備の一覧を見せて」とパソコンで入力すると、システムが設備情報を取得してエアコンや照明などのIDと設置位置をまとめて表で出力してくれる。LLMを活用することで、施設の管理者は簡単に設備の操作や制御ができるようになる。

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