週間情報通信ニュースインデックスno.1476 2025/5/10


1.JCBが基幹システムをAWSへ、狙いはメインフレームのコスト軽減(5.9 日経XTEC)
クレジットカード大手のジェーシービー(JCB)は、メインフレームで稼働する基幹システム「JENIUS」の一部をアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)上に構築した新基盤へ移行を始めた。2万MIPSを超える巨大システムの一部アプリケーションや処理をAWSへ移すことで、その分メインフレームの負荷を軽減。オフロードを通じてメインフレームのコスト削減を狙う。同時に、新基盤での開発生産性の向上にも取り組む。

 JENIUSは、イシュアー(カード会社と会員とのやり取り)、アクワイアラー(カード会社と加盟店とのやり取り)、加盟店管理など、クレジットカード取引に不可欠なアプリケーションをメインフレーム上に構築したJCBの基幹システムだ。予備の2台を含む、IBM製のメインフレーム「IBM Z」シリーズ5台で運用する。

 2008年に全面稼働して以降、システムの処理件数は右肩上がりで増えてきた。特に、2016年以降は会員専用のWebサービス「My JCB」のアプリケーション利用が急増。参照系の処理が、オーソリゼーションと呼ぶ決済に関する処理数を大きく上回り、CPUの負荷を上げる要因になっている。

2.「メリットしかない」、NTTがNTTデータGを完全子会社化 背景に複雑な資本関係(5.9 日経XTEC)
NTTは2025年5月8日、上場子会社のNTTデータグループを完全子会社化すると発表した。買い付け総額は2兆3712億円の見込みだ。TOB(株式公開買い付け)の期間は2025年5月9日〜6月19日。親子上場や複雑な意思決定プロセスを解消し、経営のスピード向上やグローバル事業の強化を目指す。

 統合の狙いは次の3点にまとめられる。(1)北米市場などの強化やAI(人工知能)を活用したサービス強化、AI需要に対応したデータセンターの拡大・高度化といったグローバル・ソリューション事業のポートフォリオ強化(2)法人営業や研究開発分野における両社グループのリソースやケイパビリティー(能力)の連携強化(3)ガバナンスの簡素化や重複機能の整理といった意思決定の迅速化、コスト競争力や顧客・従業員体験の向上――だ。

3.官民で進める「ワット・ビット連携」、通信一体でデータセンターの消費電力増に対応(5.9 日経XTEC)
ワット・ビット連携とは電力と情報通信のインフラ整備を一体的に進め、持続可能で効率的な社会基盤を築くことを狙った取り組みを指す。電力の単位「W(ワット)」と情報通信の単位「bit(ビット)」を組み合わせた造語である。2025年2月に閣議決定された「GX2040ビジョン」や、同月開催の「デジタル行財政改革会議」で国内のデータセンター整備を念頭に官民でワット・ビット連携を進める方針を示している。

 政府がワット・ビット連携を打ち出した背景には、近年の生成AI(人工知能)の爆発的な普及がある。米OpenAI(オープンAI)の「ChatGPT」などに代表される生成AIは膨大な計算資源を必要とし、これを支えるデータセンターの消費電力は年々増加している。全国の電力の需給状況を監視する電力広域的運営推進機関(OCCTO)の集計によると、国内のデータセンターの年間消費電力は2034年度までの10年間で15倍となる440億キロワット時(kWh)に増加する見込みという。

 特に日本のデータセンターにおける電力消費で現在課題となっているのが、データセンターの立地と再生可能エネルギーが生み出される場所が離れていることである。例えば太陽光や風力といった再生可能エネルギー資源は北海道や九州など自然条件に恵まれた地域に多い。

 データセンターを再生可能エネルギー電源の近くに立地することで電気を効率的に使えるようになり脱炭素にも貢献できるほか、データセンターを地方に分散することで広域災害などに対するレジリエンス(復旧力)が高まるというのがワット・ビット連携の考えである。地域にデジタル関連投資を呼び込むことで、地方創生や雇用の創出といった副次的な効果も期待されている。

4.ようやく登場したCopilot+ PCの新機能、AI駆使する「リコール」で変わる検索の常識(5.9 日経XTEC)
2025年4月25日(米国時間)、米Microsoft(マイクロソフト)が提唱するAI(人工知能)を活用するためのWindowsパソコン「Copilot+ PC(コパイロット・プラス・ピーシー)」向けに、Windows Updateによって「リコール(Recall)」アプリの提供が始まった(提供開始時点の日本語アプリ名は「リコール(プレビュー)」、以下リコールと表記)。2024年5月のCopilot+ PCの発表時に目玉機能として紹介されたものだ。

 リコールはパソコンの画面をキャプチャーし、画面データとして記録し続ける。それらをAIで処理してパソコンの画面に映っていた情報をすべて履歴として残す。記録した画面データをタイムラインで遡ったり、テキストで画面に映っていた情報を検索したりできる。

5.Edgeから使いやすくなったCopilot、有料版はOfficeアプリとの連携に強み(5.8 日経XTEC)
リリース直後は、Windows 11に標準搭載されていた「Copilot」だが、最新バージョンではWebブラウザー上での利用に加え、ストアアプリ版も新たに登場し、より手軽に利用できるようになった。

 特に、Webブラウザーの「Edge」ではCopilotが主要な機能の一つとして統合され、ツールバー上のアイコンをクリックするだけで、すぐに呼び出せる。また、Webサイト上のテキストを選択し、右クリックメニューから、直接、Copilotへ質問できるようになった点もうれしい進化だ。ネットを閲覧中に気になる事柄があったら、即座に情報を深掘りできる。生成AIをシームレスに利用できるのが魅力だ。

 しかし、無料版ではテキスト情報を中心としたやり取りに限定され、情報の検索、文章の要約、日本語への翻訳といった基本的な処理しかできない。Officeアプリとの連携機能や画像以外のファイル入力など、高度な機能は有料版のみで提供される。本格的に使いこなしたい場合は、有料版がお薦めだ。

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